最近よく聞く「フレイル」とは? 要介護にならない対策やチェック方法を日本予防理学療法学会理事長に聞きました。
「健康な状態」と「要介護状態」の間がフレイル
最近よく見聞きする「フレイル」。厚生労働省のホームページでは、「健康な状態と要介護の状態の中間の段階」と説明されています。今、国や自治体でその予防が重視されています。そこで今回は心身の機能が低下するフレイルについて、日本予防理学療法学会理事長で筑波大学人間系教授の山田実先生にSBSアナウンサー新城健太が話を聞きました。
フレイル(虚弱)の定義とリスク
新城:改めて、フレイルとはどのようなものか教えていただけますか?
山田:フレイルとは「虚弱」を意味する言葉で、「健康な状態と介護が必要な状態の中間」を指します。近い将来、介護が必要になる可能性が高い状態ですが一方で適切な対策を講じれば、再び健康な状態に戻ることも期待されています。
新城:高齢化社会が進む中で、フレイル状態の人をどうやって健康な状態に戻すかが重要ですね。フレイルになると具体的にはどのような問題が起こりますか?
山田:要介護状態になりやすいだけではなく、転倒や骨折、病気による入院のリスクが高まると言われています。
一般的に65歳以上がなりやすい
新城:フレイルになりやすい年齢層はありますか?
山田:特に75歳以上がフレイル状態になることが多いと言われています。
新城:リスナーから「フレイルは体だけでなく心にも関係があるのでしょうか?」と質問が来ています。気持ちも直結するものですか?
山田:はい、フレイルは筋力の問題だけでなく、心の健康や社会との関係にも関連しています。例えば、うつ症状や軽度の記憶機能低下、さらには閉じこもりや孤立、周囲との交流がすごく少ない状態も、フレイルの一部と考えられます。
フレイルチェック5つのポイント
新城:フレイルかどうかを確認する方法はありますか?
山田:はい、チェックリストがあります。以下の項目に当てはまるか確認してください。
1.体重減少:最近半年間に2〜3キロ以上体重が減った。
2. 活動量の減少:日常的な散歩や運動量が減ったなど。
3. 筋力の低下:瓶のふたが開けにくくなった。雑巾を強く絞れなくなったなど。
4. 歩行速度の低下:信号が青のうちに渡り切るのが難しくなったなど。
5. 活力の減少:力が入らない、けだるさを感じるなど。
このうち3つ以上当てはまる場合、フレイルの可能性があります。
予防対策は「運動」「食事」「社会参加」
新城:フレイルを自覚した場合、どのような対策を取ればよいのでしょうか?
山田:フレイル予防には「運動」「食事」「社会参加」の3つが重要です。いわゆる筋トレやウォーキングなどの運動、肉や魚、乳製品、大豆製品などタンパク質を多く含む食事、そして社会参加は近隣をはじめとした人との交流が推奨されます。ただし、糖尿病など基礎疾患がある場合は主治医に相談してください。
昼食の時間を決めると生活リズムが整う
新城:予防対応のポイントは何でしょうか?
山田:規則正しい生活を送り、メリハリのある日常を心がけることが重要です。特に、一日の中心にあるお昼ご飯の時間を一定にすることで、生活リズムが整いやすくなるので、おすすめしています。
新城:今年の夏は暑いので、活力が湧かないこともありますよね。
山田:暑い日は朝や夕方の涼しい時間に運動するか、エアコンの効いた屋内で体を動かしてみるのが安全です。
日々前向きに楽しむ!
新城:最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
山田:日々の生活をなるべく前向きに楽しむことが一番のフレイル対策につながります。今日はあれ、明日はこれしよう!と楽しみを見つけて、前向きな気持ちで過ごしてください。
新城:分かりました。山田先生、どうもありがとうございました。
※2024年8月19日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。
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免責事項今回お話をうかがったのは……山田実先生
筑波大学人間系の教授。介護予防やフレイル対策を中心に、健康寿命の延伸に向けた調査研究に取り組んでいる。日本予防理学療法学会理事長、日本老年療法学会副理事長、日本サルコペニア・フレイル学会理事、日本転倒予防学会理事など。