自閉症長男と発達グレー次男の「放デイ」活用術。通う日数も目的も違うのは理由があって
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
きょうだいで異なる発達支援施設の利用状況
私には2人の息子がいます。長男けんとは現在、小学3年生。特別支援学級の情緒クラスに在籍しています。3歳の時にASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けました。構音障害があり、集団行動が苦手で不注意。好きな数字や興味のあるものに一直線のマイワールド全開な男の子です。
発達障害グレーゾーンの次男ゆうきは小学1年生。通常学級に在籍しています。発語が遅く、3歳の誕生日頃に話したいスイッチがオン。言葉が出始めたら一気に出ました。小さい頃から不安が強く、極度の負けず嫌いで、心配性な男の子です。
2人とも幼少期からずっと発達支援施設を利用していますが、通っている日数は違います。
まず、就学前について。けんとは、こども園の放課後に児童発達支援事業所へ週4~5日(平日のみ)。ゆうきは、こども園の放課後に児童発達支援事業所へ週2日(平日のみ)通っていました(ゆうきは、残りの週3日はこども園の預かり保育を利用)。
小学生になった今は、2人とも放課後等デイサービスに通っています。けんとは学校からの送迎があるA事業所、隣の市町村にあり送迎は保護者が行うB事業所の2か所。ゆうきは学校からの送迎があるC事業所に通っています。2人とも通うペースは就学前と変わらず、利用する日は15時頃~18時頃まで過ごしています。
2人が一緒の事業所に通うと2人だけで遊んでしまう可能性が高かったので別の事業所にしました。そして、その子にとって、その時々で抱えている本人の困りごとや、身につけたいこと、日常生活を考えて、このペースになりました。
長男にとっての放課後等デイサービスの存在
長男けんとが、将来に向けて身につけたい課題は本当に山積みです。できるようになることが少しでも増えてほしい、どうすれば本人が安心して生活できるのか……など、私はけんとの将来について心配する日々です。
けんとにとっての発達支援施設は、「できるようになってほしいこと」を、それが「今」必要か、「もう少し成長してから」なのか、「どのようにすれば、いつかできるようになるのか」……などを施設の先生からのアドバイスをいただきながら、一緒に整理している場所でもある気がします。
手厚く、目の行き届いた放課後等デイサービス。先生と相談したりする中で親子で学んでいると思います。ちなみに今課題として掲げているのは、「人の物を勝手に触らない。触る前に許可を取る」です。けんとは、人の物を勝手に借りてしまったり、気になる物を見つけると、人の物でも触ってしまったりするのです。
マイワールドが強いけんとは、以前は1人での遊びを好んでいましたが、放課後等デイサービスを利用していく中で、人と関わる遊びにも少しずつ興味をもつようになりました。通っている施設には定番のアナログゲームや、手先を使うおもちゃ、ボードゲームなどがたくさんあり、休み時間に遊べます。けんとの場合は「特定のお友だちと遊びたい」というよりは、「やりたい遊び」があって、それを誰かと遊びたいようで、最近よくボードゲームをしているそうです。
同じ施設に何年も通い、安心できる先生、友だち、環境の中で過ごしながら、誰かと一緒に何かを楽しむという、家では体験できないことも、少しずつ楽しめるようになっている気がします。
集団下校や習い事もしたい、次男の場合は…
次男ゆうきにとっての放課後等デイサービスの役割は、少しけんととは違うところもあるように思います。
ゆうきは、昔から集団行動はできますが、年中までは1人遊びばかりでした。しかし、年長になりこども園でお友だちと楽しそうに遊ぶようになりました。その様子を見て、同級生の子たちと同じように小学校からの集団下校に参加するのも必要だと思いました。また、習い事や、お友だちと遊ぶ時間もつくろうかなと思い、放課後等デイサービス利用は週2日にしています。
通っている放課後等デイサービスでの休み時間、ゆうきは身体を動かして、よく遊んでいるそうです。ゆうきにとっての放課後等デイサービスは、本人の課題である気持ちのコントロールや社会性を学ぶだけでなく、ストレス発散の1つになっている気がします。ちなみに今課題として掲げているのは「負けても怒らない」と「自分の意見があっても、人の発表の番の時は聞いて待つ」です。
「毎日でも行きたい」と言っているので、今後通うペースはいろいろな方とも相談しながら考えていこうと思っています。
私にとっての放課後等デイサービスの存在
わが家の子どもたちだけでなく、私にとっても発達支援施設はなくてはならない存在です。抱えている日頃の子どもについての困りごと、どのように対応したらいいのか分からないことを相談し、アドバイスをこれまでたくさんいただいてきました。相談したい時にすぐそばにある、心の安心に繋がる場所なのです。
けんとの通っている放課後等デイサービスでは、保護者向けの勉強会や、ペアレントトレーニング、視覚支援グッズづくりをする会などが開催されています。先輩ママ・パパの体験談が聞ける会などもあるので、本当に勉強になります。
放課後等デイサービスに通っていると「今日、こういうことでお友だちとケンカしてしまいました」「この課題には参加できませんでしたが、次回はこうやってみようと思います」など、自分の子どもに関する「うちの子データ」が少しずつ蓄積されるので、子どもが抱えている目の前の課題も見えやすいです。これからも、きょうだいそれぞれのペースで、少しずつ人との関わり方や社会のルールを学んでいけたらと思っています。
執筆/ゆきみ
(監修:初川先生より)
長男けんとくん、次男ゆうきくん、それぞれの発達支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)を利用する実際やゆきみさん一家にとってのその意義についてシェアありがとうございます。お子さんそれぞれの課題や利用する意味合いにあった内容が提供されていること、スタッフの方とのやりとりで親子共々支えていただいている感じがすること。読んでいて、そのような事業者さんにお願いできているのがとてもよかったなぁと思います。地域によって事業所の数や、対象としているお子さんの層がさまざまである面もあるので、お住まいの自治体で情報収集をしていただければと思いますが、こちらのエピソードで紹介されたような利用の在り方はとても理想的だなと感じました。
お子さんが放課後等デイサービスや療育などで、「○○してしまいました」という話をスタッフの方から報告を受けると、保護者の方によっては、つらくなってしまう方もいらっしゃるかもしれません。もちろんトラブルや未達成の課題がないことが望ましいですが、ただ、そうした“うまくできないこと”に取り組むこと、そもそもそうした苦手な状況をあぶり出すこと自体もそうした場ではとても大切な介入です。スタッフの方々は保護者と共に、お子さんの育ちを支えてくださる方々です。うまくできない報告も耳が痛い思いをするかもしれませんが、一緒にやっていくための報告です。それを聞きながら一緒にどうするか、どんな風に支援できそうか考えていただければと思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。