【専門医が解説】“精子の質”を高める生活って?注意すべきこと5選
「男性不妊」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?実は、不妊の原因のおよそ半分は男性側にあるといわれています。男性不妊の場合、精子の質を高めることが妊活のポイントの1つです。では、精子の質を高めるためには何に気を付けて生活すれば良いのでしょうか。不妊治療クリニック「オーク会」の男性不妊専門医が解説します。
精子の質を高めるために注意すべきこと①「喫煙」
男性不妊と診断された場合、精索静脈瘤のような手術を伴う治療だけでなく、日々の生活でも精子の質を高めるための行動を心がけると良いでしょう。
生活のなかで注意すべきことの1つめは、喫煙です。
タバコを吸うと、血管が収縮して血流が悪くなります。
男性の性器は血管の塊のようなものですので、血液が流れにくくなるとED(勃起不全)を招きやすくなるのです。
また、喫煙によって精子の数や運動性のいい精子が減り、さらに酸化ストレスで精子のDNAが損傷するおそれもあります。
妊活や不妊治療を行うなら、なるべく禁煙を心がけましょう。
精子の質を高めるために注意すべきこと②「下着」
普段身に着ける下着についても工夫するとよいでしょう。
若い方ならトランクスタイプを愛用されている方も多いと思いますが、実際、不妊治療においては締め付けのあるものよりもゆとりのあるトランクスタイプをおすすめしています。
精巣は熱に弱く、温度が上昇すると精子をつくる造精機能が低下しますが、トランクスタイプであれば風通しよいため熱がこもりません。
妊活や不妊治療を行う際は、なるべくトランクスタイプの下着を選んでみてください。
精子の質を高めるために注意すべきこと③「サウナや長風呂」
ここ数年話題になっているサウナや、長風呂についても注意が必要です。
お伝えしているとおり、精子をつくる精巣は熱に弱い臓器。
股間を高熱にさらすと精子をつくる造精機能に悪影響を及ぼすため、高温のサウナを避け、長風呂もほどほどにしましょう。
また、膝上でのパソコン使用にも注意が必要です。
パソコンは、使用すると次第に熱を発します。
膝の上に置いて使用すると、その熱が股間へ伝わり、熱に弱い精子が打撃を受けることに。
ノートパソコン利用が陰嚢の温度上昇につながるという研究データもあります。
移動時にパソコンを使用する際は気を付けてみてくださいね。
精子の質を高めるために注意すべきこと④「長時間のサイクリング」
日ごろ自転車を交通手段として使用している方も注意が必要です。
長時間の前傾姿勢のライディングを頻繁にすると、サドルがあたって男性器付近の血流が悪くなり、ED(勃起不全)や精子の減少、運動率の低下を招くおそれがあります。
とはいえ、自転車をまったく使用しない生活が難しい方もいるでしょう。
その場合、サドルやズボンを工夫して、男性器付近を圧迫しないように気を付けてみてください。
精子の質を高めるために注意すべきこと⑤「育毛剤」
驚かれる方が多いのですが、AGA(男性脱毛症)の治療薬も精子の質を下げることがあります。
AGAの治療薬のうち、フィナステリドを主成分とする治療薬には男性ホルモン作用の強いジヒドロテストステロンを抑える働きがあるのです。
つまり、抜け毛だけでなく男性ホルモン作用もブロックされてしまうということ。
また副作用として、性欲減退や精子数の減少・ED(勃起不全)などが起こることがあります。
妊活中は、このタイプの育毛剤は避けた方が無難です。
もしAGAの治療薬を使っているのであれば、主成分などを確認したり、医師に相談をしたりしてみてください。
最後に……
ここまで「精子の質を高めるために注意すべきこと」を5つお伝えしましたが、紹介した項目を守っていれば必ず質の高い精子ができるということではありません。
人によって体質はさまざまではありますが、生活の中で少しずつ意識を高めることで体の健康につながり、それが精子の質を高めることにもなります。
治療中の方はもちろん、これから妊活を考えている方も、小さなことから意識して生活してみてはいかがでしょうか?
監修者
◆山﨑一恭(やまざきかずみつ)
日本泌尿器科学会認定泌尿器科指導医・専門医、日本生殖医療学会生殖医療指導医・専門医
筑波大学医学専門学群卒業後、筑波大学附属病院、国際医療福祉大学病院、茨城西南医療センターなどを経て筑波学園病院泌尿器科にて泌尿器・男性不妊の専門医として勤務。2015年、同院にて一般泌尿器科外来とは別に男性不妊専門外来の設置に寄与。2022年よりオーク会にて男性不妊外来・手術の非常勤医師として勤務。