イートインも充実。地域に根差した住宅街のパティスリー【福岡市・鳥飼】
城南区役所から100メートルほど北に進んだ住宅街に、新しくオープンしたパティスリーを見つけました。もともと「パン・ナガタ 鳥飼店」があった場所にできた、白と青色の壁が目印のお店です。
右写真は店舗からの提供
店内のショーケースにはケーキをはじめシュークリームやプリンなどの生菓子、棚にはクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子が並びます。左サイドのイートインスペースは席がゆったり配置されていて、カフェのようにくつろいで過ごせます。この日も平日にもかかわらず、続々と女性グループやお一人様が入店し、11時過ぎにはほぼ満席になっていました。イートインスペースではコーヒー(440円)やカフェラテ(495円)、紅茶(440円)などのドリンクが注文できます。
オーナー・パティシエの行徳崇さんは福岡のご出身。横浜のパティスリーで修行し、福岡に戻ってからは「メゾン・ド・ヨシダ桜坂」で1年、同系列の結婚式場「フレアージュ桜坂」でウェディングケーキ、デザートの担当を10年務め、今回の独立となりました。「地域の人に喜んで食べてもらいたいのと同時に、ギフトとしてどんな場所にも持っていってもらえるような、そんな商品づくりを目指しています」と話します。
ショーケースの生菓子は10数種類ほど。ウェディングを長年やっていた腕を生かしたケーキはどれもエレガントで愛らしく、どれを選ぼうか迷いに迷います。自分で決めるのは諦め、シェフに3つ選んでもらいました。
まずは、スペシャリティの「真紅」(648円、イートインは660円)です。その真っ赤な装いにベリー系?と思いきや、なんと中はビスタチオのムース。その中にさらにグリヨットチェリーのムースが包み込まれていました。ピスタチオのコク豊かなナッティな風味とチェリーの甘酸っぱさが、互いを引き立て合います。
次にいただいた「フロマージュクリュ」(540円、イートインは550円)は、Kiriクリームチーズを使ったレアチーズケーキです。クリームチーズムースの中にフレッシュラズベリーが潜んでいて、ミルキィな甘み、チーズのコク、そしてラズベリーの酸味の三重奏が楽しめます。
最後は「鳥飼ティラミス」(518円、イートインは528円)です。一般的なティラミスをアレンジしたオリジナルで、スポンジではなくコーヒームースにマスカルポーネクリームを重ねています。ムースはコーヒーの苦味をしっかりと生かしていて、ふつうのティラミスよりもコーヒーの味がよく感じられました。
この日はイートインで終えるはずでしたが、「真紅」と並んで「ロールケーキ」(1728円)がシェフの二大おすすめと聞き、それはぜひとも食べたい!と買って帰りました。
行徳シェフは「メゾン・ド・ヨシダ」のムッシュ(吉田安政さん)からの教え「止まってはダメ」を理念にしているそうですが、中でもロールケーキにおいてはそれが顕著で、開店した今でも2週間に1度の頻度でブラッシュアップを続けています。「鳥飼の名物になるような究極の1本に辿り着くのが目標です。そのためにどう改良すればいいのか、常に考えています」と話してくれました。
卵の香り豊かなスポンジは、とてもキメが細かくて驚くほどふわっふわ。スポンジというよりもスフレのような舌触りと食感です。さらに生クリームも口に入れるとすぐに溶けていく口当たりの良さ。日々研鑽されるシェフの努力の結晶が見事に表れた1本ですが、これでもまだ完成型ではないのか……。いやはや、その職人魂に頭が下がります。
プリンやシュークリームも同様にブラッシュアップし続け、また独立を目標に10年かけて増やしてきたケーキのレパートリーも出していきたいとも話していた行徳シェフ。これからどう進化していくか、どんな新商品が生み出されていくか、定期的にチェックしに出向きたいところです。
Patisserie chez h(パティスリー・シェ・アッシュ)
福岡市城南区鳥飼5-18-6シモカワビルディング1F
092-600-0139