【八王子市】 職員97人が通勤手当不正 市長が陳謝 月内処分へ
八王子市の職員97人が通勤手当を不正受給していた問題を巡り、初宿和夫市長は9月30日の記者会見で陳謝し、10月中をめどに不正受給額の確定と職員の懲戒処分を実施するとした。その後は弁護士など第三者による問題の検証を行って再発防止につなげる考えを示し、「不正の温床を根絶したい」と述べた。
5年以上の常習も
市職員による通勤手当の不正受給は、市役所までの通勤に電車やバスなどの公共交通機関を利用すると届け出て交通費を受け取っておきながら、実際には徒歩で通勤するなどの事例がある。
市の説明では、昨年9月に他自治体で発覚した通勤手当の不正受給問題を受けて、公共交通機関を利用している職員1111人を対象に同年10月から実態調査を実施。市に届け出た内容と通勤実態が異なっていた166人に聞き取りを行ったところ、届出通りに定期券を購入していなかったり、ICカードに正しい利用履歴が残っていなかったケースが97人から確認された。不正受給期間は個人により異なり、1カ月もいれば、5年半ほど前から行っていた職員もいたという。
このため市は昨年12月、97人に対し支給済みの通勤手当計1671万658円を一旦全額返納させた上で、12月から今年1月にかけて正しい届出に基づいた通勤手当をあらためて支給していた。
この件は今年9月の新聞報道で明るみに出たが、市は30日の記者会見で「隠ぺいなどの意図はなく、対象者の確定に向けた調査を継続し、不正受給額の精査や懲戒処分に向けた準備をしている段階だった」と公表が遅れた理由を弁明した。
再発防止に意識改革も
会見の冒頭で初宿市長は「市民の信頼を損なう事態となりましたことを、心よりおわび申し上げます」と頭を下げた。問題発覚から会見までの期間に市役所には延べ102件の苦情や問い合わせが寄せられたという。
今後の対応として、不正受給額の確定と不正を行った職員に対する厳正な処分を10月中をめどに実施する考えを表明。再発防止策として、年度初めに行う所属長と職員との面談時に定期券やICカードの履歴などの確認を義務付けることや、各手当や旅費などの支給に関するルールの厳格化、全職員を対象にした公務員倫理研修の継続的な実施による職員の意識改革などに取り組むことを掲げた。
またランダムに抽出した主査級(係長相当)の職員から今回の件に関して初宿市長が意見を求めた際、職員のモラルの低さや内部のチェック機能不全、出張時の復命書の形骸化などの問題点が指摘されたことから、「市役所の中だけで対策を講じるには限界があり、第三者による検証の必要性を感じた。市役所の伝統や慣行にはびこる不正の温床にメスを入れていただきたい」と語った。(10月1日起稿)