天ぷら?さつま揚げ?ご当地で呼び方が違う謎を解明!有名メーカーに聞いてみた
皆さんは、この食べ物を何と呼んでいますか?実は地域によって名前が違うんです。
皆さんが抱えている「なぜ?」「どうして?」を調査する、HBC「もんすけ調査隊」にこんな依頼が届きました。
東京在住のKiriさん(20代)からの依頼は、「魚のすり身を揚げた食べ物の名前が、北海道、関東、関西では異なります。何が違うのでしょうか?」というもの。
北海道民に聞いてみると…
「“かまぼこ”でしょ、これ。かまぼこだよ」
道民は、この食べ物を「かまぼこ」と呼んでいますが、ほかの地域の人がイメージする「かまぼこ」は…
東京都民
「かまぼこ?板に付いてる?」
福岡県民
「かまぼこは、板のものしか…」
道外で「かまぼこ」と言えば、この紅白の食べ物なのです。
では、道民が言う「かまぼこ」を、福岡県民は何と呼んでいるのでしょうか。
福岡県民
「“天ぷら”。天ぷらかな」
天ぷらはエビやイモを揚げたものではないのでしょうか?そう聞いてみると…
福岡県民
「アレも”天ぷら”だし、コレも”天ぷら”」
実は、福岡県民は、この2つの食べ物を天ぷらと呼んでいるというのです。
では大阪府民は…
大阪府民
「”はんぺん”ちゃう?はんぺんや」
確かに、場所によって、名前が異なるようです。
依頼者によると、北海道では「かまぼこ」、東京では「さつま揚げ」、大阪では「天ぷら」が一般的だということですが、いったい何が違うのでしょうか。
「かまぼこ」は4種類
謎を解明するため調査員は、北海道を代表するかまぼこメーカーの「かま栄」に取材に行きました。
かま栄の福田一也営業課長に聞いてみると…
「かま栄では”揚げかまぼこ”と呼んでいる。かまぼこには、揚げている、焼いている、蒸している、ゆでている、4種類のかまぼこがある」
実は「かまぼこ」には「蒸し」、「焼き」、「ゆで」、「揚げ」の4種類あり、これらの総称が「かまぼこ」だというのです。
つまり、「揚げかまぼこ」も「板かまぼこ」も、全て「かまぼこ」ということ。
では、「さつま揚げ」と「天ぷら」は、何が違うのでしょうか。
「地方や会社によって呼び名が変わってくる。”揚げ”と”天”という名前を使った商品がある。基本的には同じ」
実は、「さつま揚げ」も「天ぷら」も同じ「揚げかまぼこ」なのだそう。
かま栄では「揚げ」と「天」、で響きのよいものを採用しているということです。
47都道府県の調査では、西日本では「天ぷら」、東日本では「さつま揚げ」が一般的で、北海道は「天ぷら」となっています。
さらに鹿児島県では「つけ揚げ」、中部地方の一部では「はんぺん」と呼ばれているようです。
では、なぜ地域によって呼び名が違うのでしょうか。
平安時代にはもうあった!
実は、呼び名の違いは歴史と大きく関係していることが、かまぼこの製造と販売を手がける「紀文」への取材で明らかになりました。
紀文食品の広報担当、村田真由香さんによると…
「かまぼこが書物に出てくる一番古いものが平安時代の書物で、宴会料理の献立の記載の中に、“蒲鉾”という文字と、焼いた練り物の絵が描かれている」
その書物というのが『類聚雑要抄』です。
平安時代の祝賀料理が描かれているのですが、その挿絵には、確かに「蒲鉾(かまぼこ)」と書かれているのです。
さらに料理を再現してみると、まるで「ちくわ」の様な形状をしています。
形が、がまの穂に似ていることから「かまぼこ」と名づけられたということです。
その後、時代が流れていくにつれて、今のような板に乗せた”焼きかまぼこ”に発展し、江戸時代になると”蒸しかまぼこ”や、”揚げかまぼこ”に発展していったのだといいます。
では、その「揚げかまぼこ」が、なぜ「てんぷら」や「さつま揚げ」と呼ばれているのでしょうか。
ルーマニア国立交響楽団の常任指揮者で、日本料理の歴史や文化を研究している尾崎晋也さんに取材しました。
「昔、沖縄の漁師が、東南アジアで作られていた魚のミートボールを揚げたものを見て、それをまねて作ったものが“チキアギ”。『さつま揚げ』の原型と言われている」
東南アジアの料理をまねて作った沖縄料理「チキアギ」が、今の鹿児島・薩摩に伝わり「つけ揚げ」になったそう。
さらに、それが江戸に伝わり「薩摩のつけ揚げ」と呼ばれましたが、短く省略されて「さつま揚げ」になったと考えられています。
そして、ややこしいのが大阪で呼ばれている「天ぷら」という呼び方です。
さつま揚げが天ぷらで天ぷらはつけ揚げで…?
京都・大阪・江戸の違いについて書かれた書物『守貞漫稿』。
これによると、関西では“さつま揚げ”のことは“天ぷら”と呼び、“天ぷら”を“つけ揚げ”と呼ぶと書かれているのです。
「非常に混乱しますよね。つけて揚げるから“つけ揚げ”なんだと思います」と尾崎さんは話します。
実は、江戸で「さつま揚げ」と呼ばれていたものを、大阪では「天ぷら」と呼び、江戸で「天ぷら」と呼ばれていたものは、大阪で「つけ揚げ」と呼ばれていたのです。
というのも、大阪では油で揚げた料理全般を「天ぷら」と呼び、特に衣を付けて揚げる「天ぷら」を、「つけ揚げ」と呼んでいたようです。
「明石焼きを明石では“明石焼き”と言わない。“玉子焼き”という。そんな感じですね」
つまり、地域によって名前が違うのは、各地の歴史や文化が反映されているからなのです。
北海道の「かまぼこ」、東京の「さつま揚げ」、大阪の「天ぷら」は、基本的には同じ食べ物!という調査結果となりました。
「おやき」も全国それぞれの代表格
ちなみに他にも、同じものでも名前の違う食べ物の代表が…「おやき」!
北海道では「おやき」と呼ばれている食べ物ですが、東京では「今川焼き」、大阪では「回転焼き」と、地域によって呼び名が違う食べ物は、色々あるんです。
もんすけ調査隊では、視聴者の皆さんのギモンや地域の問題について調査していきますので、ぜひ、投稿をお寄せください。
文:HBC報道部もんすけ調査隊
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年1月10日)の情報に基づきます。