Yahoo! JAPAN

ダンボールの背負子を作って会いに来てくれた…山のお菓子売りてくてくさんの心を満たす行商【山々インタビュー#2】

Sitakke

Sitakke

北海道生まれ北海道育ち。生粋の道産子であるHBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)が、趣味である「登山」と「山ごはん」を紹介する連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」。

自分の足で歩いた先にある絶景と、おいしいごはんは、もう最高!
文化部出身・運動神経ゼロの私でも楽しめる「コスパはなまる山」が盛りだくさんです!

前回に続き、お話を聞いた「てくてくさん」。

北海道のどこかの山で背負子を背負って焼き菓子を販売しています。
「なんか楽しそう!」「私のやりたいことはこれだ!」と突き進んだ彼女には、山での数々の出会いがありました。

【連載】こう生きたっていい

いろいろな生き方・働き方をしている北海道の女性へのインタビューを通して、自分らしく生きるヒントを見つけるための連載。
今回は「山々」とのダブル連載です。

背負子は手作り!

コロナ禍に行商をはじめて、徐々にファンが拡大していったてくてくさん。
今では1日に100袋を超える売り上げがでることもあるほど人気です。

特徴的なのは、何といってもシンボルにもなっている「背負子」。

Nobuhiko Tanabe 背負子だけで5キロあるそう!

ちなみに、この背負子はイチからてくてくさんが手作りしたものなんですって!
インターネットやホームセンターで材料をそろえて家で組み立てて、色を塗って…。

愛着もたっぷりのこの背負子に80袋ほどの焼き菓子を詰め込んで、木箱に入らない分はカラビナに括り付けたり別の場所に吊り下げたりして持ち運びます。
さらに飲み水や自分の行動食など、登山に必要な道具も持つと、背中の荷物は10キロをゆうに超えるそうです。

それでも「楽しすぎて背負子を背負っていることを忘れることがあります」と笑顔。

「全部売れたら、帰るときにはかなり軽くなってうれしいですけどね。荷物の軽さよりも、その日出会った人や話したことなどの思い出を振り返って、あたたかい気持ちで下山しています」

Nobuhiko Tanabe

自分が食べるために重い荷物を担いで、それすらブーブー文句を言っている私とは大違い…恥ずかしい…(笑)

忘れられない出会いも

てくてくさんのファンは老若男女さまざま!
「100人ほどだった」と話すSNSのフォロワーも今や1万7000人を超えています。

「山の中にお菓子売りがいるっていうのを楽しんでもらいたいです。実際、出会うみなさんも『お菓子が必要で待っていた』というよりも、自分に会えたことに喜んでくれる人がほとんど…。私も自分の好きな山の中で、いろんな人とお話できて、温かい気持ちになります」

そんな中で、特にてくてくさんにとって大切な出会いがありました。

「たびたび山に会いに来てくれる、小学生の女の子がいるんです。その子が去年、私の真似をして夏休みの自由研究にダンボールで背負子を作ってくれたんです」

Nobuhiko Tanabe 2025年9月にもてくてくさんに会いに来た女の子。一緒に十勝の白雲山を登ったそうです!

女の子が作った背負子は確かに、てくてくさんのものにそっくり!
しっかり背負うこともできて、中にはどんぐりなどを詰めたんですって!
なんてステキ…。

「その子のお母さんがインスタグラムに投稿してくれて知ったのですが、それがすごくうれしくて。『いつか山で一緒に背負おうね』って話していたのが、今年実現したんです」

てくてくさんが旭岳で行商をする告知に合わせて、会いに来てくれたそう!

Nobuhiko Tanabe てくてくさんのあとを追いかける姿がとってもかわいい!

「もうなんか泣きそうでした。どんな風に思ってくれているかわからないけど、小学生の彼女になんらかの影響を与えられているのかなと思うとうれしいですし、将来どうなるかも楽しみですね」


行商は一日仕事…「行きたくないな」と思う日は?

Nobuhiko Tanabe

山では当然、雨が降ったり風が吹いたり。
移動して行商して…体力も使いますし、時間もたくさんかかります。
早起きだって必要です。

どんなに好きな登山で、自分で計画を立てていたとしても、ときには「あぁ、やっぱりきょうは行きたくないな…ゆっくり休んでいたいな…」なんて思う日もある私。
前向きなてくてくさんには、そんなことないのでしょうか?

素朴な疑問をぶつけてみると「ありますよ!あります!」と笑って答えてくれました。

「やっぱり朝は眠いじゃないですか。二度寝したいなーとかね(笑)。天気もそうだし、きょうは本当に待っていてくれる人いるかな…って不安になったりもあります」

それでもやっぱり山に登るのは、そこでの出会いのかけがえのなさを知っているから。

Nobuhiko Tanabe

「山の中って、普段しゃべれない人とも話が弾みますよね、共通の趣味というか接点を持っているってすごくやっぱりいいなって思います」

大好きな山に行って、色んな人に会って話したら、下山のときには「フル充電」。

「ものすごく満たされていて…。きょう出会った人を思い返しながら『本当に楽しませてもらいました、感謝感謝!』って」

てくてくさんに会いに来て元気をもらった人が、てくてくさんにも元気を渡して笑いあう。

たった一人で始まった「てくてくさん」の活動は、今やどんどん拡大しています。
そこにもまた、大切な「出会い」が。
バイタリティあふれるてくてくさんの「生き方」も教えてもらいました。
次回、お伝えします!

■記事内写真提供協力:田辺 信彦さん
東京都出身。2024年から北海道道北中川町を拠点とするフォトグラファー/ビデオグラファーそしてDJ。
写真というアートフォーマットに魅せられ自転車を中心としたあらゆるスポーツ、音楽などの中心に宿るカルチャーを美しく切り取る。
ヨーロッパの自転車競技「シクロクロス」に魅せられ、それを切り取った写真集プロジェクト「CROSS IS HERE」を進行中。
また現在は北海道内の山々でお菓子を売る、山でしか買えないお菓子屋さん「お菓子売りのてくてく」の活動を追いかけるドキュメンタリー作品の製作も行っている。
Instagram : @nobuhikotanabe

連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」

※北海道の山に登るときは、クマについても知っておきましょう。「クマに出会ったら」「出会わないためには」の基本の知恵は、HBCのサイト「クマここ」で、専門家監修のもとまとめています。

文:HBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)
北海道生まれ・北海道育ち。2021年入社。HBCテレビでは「グッチーな!」「ジンギス談」「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」「大江裕の北海道湯るり旅」などを担当。登山歴4年。おいしくごはんを食べるために山に登っています。登山の魅力はインスタグラムでも発信中

編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は取材時(2025年8月)の情報に基づきます。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【駅徒歩1分】24時間大浴場利用可能「クレスト松戸」の個室カプセルに泊まってみた / 楽天トラベルで星4.53の泊まれるサウナ

    ロケットニュース24
  2. 【伊予市・しおさい公園】遊びも散歩もスポーツも、過ごし方満載!

    愛媛こまち
  3. 【松山市・ウェスタン】本場の味と、伝統を紡ぐ。二代目店主の新たな挑戦

    愛媛こまち
  4. 宇多田ヒカル、「Mine or Yours(Yaeji Remix)」のオフィシャルビジュアライザーをYouTubeで公開

    SPICE
  5. 講演会「『忠臣蔵』の黄表紙ー蔦屋重三郎も手がけた江戸文芸」

    赤穂民報
  6. らぶペット 警察犬の「メイ」 毎朝6時から浅利さんが訓練

    伊賀タウン情報YOU
  7. 見事な完成度に唸った【家そば放浪記】第284束:いわきの台所「鮮場やっちゃば」内『食品サトー商会』で買った、松田製粉『ひっぱりそば』193円(1人前64円)

    ロケットニュース24
  8. 【2025年10月】手元にスッと馴染むよ。今っぽいミルキーピンクネイル

    4MEEE
  9. 一気に今っぽさが増す。不器用さん向け「グレージュネイル」のやり方

    4MEEE
  10. 『らんま1/2』公式サイトに隠された仕掛けがすごすぎる!作品ならではのこだわりに「こういうのいいよね」

    にじめん