「大きいけれど臭い」と思われがちな【ウマヅラハギの美味しい食べ方】
近年高級化が進む「カワハギ」の影に隠れ、下に見られることも多いウマヅラハギ。一工夫することで本家と同じように楽しむことが可能です。
ウマヅラハギ
ぬぼーっとした顔つきにおちょぼ口が可愛らしく、一目見ると忘れがたいシルエットをしているカワハギ。フグに近い仲間の魚ですが毒を持たず、食べて美味しいことから近年は高級魚の仲間入りを果たしています。
そんなカワハギにはかなり多くの仲間がいますが、本州においては「ウマヅラハギ」以外はほとんど知られていません。本家カワハギと比べると細長いシルエットをしており、特に頭部が長いことから馬面ハギ、と呼ばれます。
カワハギと比べると低水温に強いようで、日本海側や瀬戸内地方ではウマヅラハギのほうがポピュラーな存在です。そのような地域では本家カワハギのことを丸ハギ(丸ハゲ)と呼び、ウマヅラハギの方を長ハギ、あるいはただカワハギと呼ぶようなこともあるようです。
大きいけれどヘンに臭い?
このウマヅラハギ、基本的には美味しい魚として知られ、鮮度が良ければそれなりの値段になります。しかし主に釣り人の間では、本家カワハギと比べると一段下に見られてしまう場合が多いです。
その理由として「臭いものがある」というのが一番に挙げられます。ウマヅラハギにはしばしば、釣り上げるとアンモニア臭を伴った生臭さを放つものがおり、クーラーボックスの中で他の魚に移ってしまうこともあります。
この臭さは筋肉、特に血合いの部分からも感じられることがあり、一度臭いものに当たると「もうウマヅラはいらん」となってしまう人も少なくないようです。またカワハギの命とも言える「肝」もしばしば磯臭さ、生臭さを持つものがおり、なまじサイズが大きいだけにがっかりさせられます。
一手間で美味しい肝和えが大量に
しかし、そんな「ハズレウマヅラハギ」も、ちょっとの工夫で美味しく食べる事ができます。使うのは「酒」と「塩」です。
ウマヅラハギはできれば生きているうちにエラを切り、血抜きを済ませておきます(これができないと肝の生食は難しい)。三枚におろし、身の両面に多めに塩振って、キッチンペーパーにくるんでおきます。肝のほうもたっぷりの塩をふりかけ、小さな容器に入れて日本酒をひたひたになるまで注ぎます。
10分ほどおいたらキッチンペーパーを取り、流水でさっと洗い流します。このとき3秒以上洗うと水っぽくなってしまうので注意が必要です。肝臓も洗い、同時に残った血などをしっかりと落とします。
この状態で肝あえにすると、臭みが抜けるだけでなく身が僅かに締まり、ウマヅラハギの欠点とも言える「水分の多さ」も気にならなくなります。塩気が少し入っているので、醤油をかけるときは控えめにするのがコツです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>