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花總まり・森公美子が初共演し、心を通わす ミュージカル『バグダッド・カフェ』囲み取材&ゲネプロレポート

SPICE

ミュージカル『バグダッド・カフェ』ゲネプロより(中央左から)森公美子、花總まり

アメリカ西部の砂漠にあるモーテルを舞台に友情を描くミュージカル『バグダッド・カフェ』が2025年11月2日(日)に、東京・シアタークリエで日本初演を迎えた。アカデミー賞歌曲賞にノミネートされたテーマ曲「コーリング・ユー」などの名曲が満載の同作。経験豊かな花總まりと森公美子が声を合わせる姿は圧巻だ。SPICEでは前日に同所で花總らが行った記者会見と、会見後に公開したゲネプロの様子を取材。11月23日(日)まで同所で開催されるミュージカルの魅力をレポートする。

同作品は日本では1989年に公開された映画『バグダッド・カフェ』(監督:パーシー・アドロン)を初めてミュージカル化したもの。脚本はアドロン監督が妻のエレオノーレ・アドロンと共に制作。映画と同じボブ・テルソンがオリジナル楽曲を書き下ろした。日本版は小山ゆうなが演出。「バグダッド・カフェ」の女主人ブレンダ(森)と、そこに現れたドイツ人の旅行者ジャスミン・ムンシュテットナー(花總)との間に芽生えた友情と、モーテルに集う人々の交流を描いている。

公開稽古前の会見で和やかな表情を見せた(左から)小山ゆうな、花總まり、森公美子

公開稽古の前に行われた記者会見には、腕を組んだ花總と森、演出家の小山が揃って出席。2人は初共演だが、森は花總が出演したミュージカル『エリザベート』を見て以来のファンだったそう。「本物のエリザベートがいる! と思いました」と明かすと、花總も「私も最初から大好きでした」とにっこり。稽古場では、一緒におにぎりを食べる“おにぎりタイム”で親交を深めたという。

作品の見どころについて花總が「マジックを何種類かやりますので、ぜひ注目してほしい!」とPRすると、森が「マジックは後半ですので 最後まで見ないと出てきません!」と合いの手を入れるなど、息がぴったりと合ったところを見せていた。

舞台ではお互いソロで歌を歌うほか、声を合わせる時間もある。森はロック、ソウル、レゲエにラップと幅広いジャンルについて「広い!!! R&Bとか多くてうなっております。そして名曲の『コーリング・ユー』は1番難しくて、稽古でもいつまでたってもどうしようと悩んでいます」と苦労しているよう。「66歳なのできついです。色々なサプリメントを飲み尽くしました。その結果が出ているかどうか分かんない」と苦笑いしたが、「2人でハモったりもしますので、ぜひみなさんに楽しんでいただきたい」と呼びかけていた。

演出家の小山は名曲「コーリング・ユー」について、「1、2幕で歌われますが、2人の関係が変化している。そこを見ていただきたい!」と熱弁。「どんどんチャレンジする2人の姿も見てほしい」と話していた。

花總は同作で初めてドイツ語に挑戦。「なまりがあるので、それを意識しているとお芝居が難しい。ドイツ語もあるし、手品もあるし。てんこ盛りです!」と笑顔。歌唱する曲については「『友だち』っていう曲があるんですけれど、友達って良いなと思っていただけると思います。心がハッピーになる作品だと思います!」と声を弾ませた。

和気あいあいとした会見が終わると、それぞれ稽古の準備へ。生演奏を務めるバンドのメンバーがステージに上がり、練習を始めると初日を前にした高揚が会場全体に広がった。

物語は、ドイツ人女性のジャスミン・ムンシュテットナー(花總)が夫(坂元健児)とアメリカを旅するところから始まる。美しい妻に対して、夫は常に横柄な態度。耳元でビールの缶を開けるなど嫌がらせをする姿に、見ているこちらも腹が立ってくる。夫を尊重し我慢をして生きていたジャスミンだったが、逃げることを決意。ジャスミンの思いを後押しするように、舞台には空を自由に行き交う鳥たちが羽ばたいていた。

ミュージカル『バグダッド・カフェ』ゲネプロより

同じ頃、砂漠の街にあるモーテル「バグダッド・カフェ」では、女店主・ブレンダ(森)が夫・サル(芋洗坂係長)を怒鳴り散らしていた。ものすごい剣幕で怒るブレンダだったが、言い分に耳を傾けていると夫は頼んだことをいつも忘れてしまううっかりした性格のよう。客席にいることを忘れ、「そういう人はいるいる」と頷きながら、舞台を見ていると堪忍袋の緒が切れたブレンダは夫を追い出してしまう。

序盤から波乱の展開。「どうなるのか!」とオロオロしていると、ブレンダは夫への思いを断ち切るように「♪あんたのために泣くもんか!」とソウルフルに歌い始めた。傾いたモーテルを立て直そうと鼓舞する姿に心を打たれた。決意の歌声が響いた舞台。そこにラスベガス行きを止めたジャスミンが、寂しそうにやってきた。とぼとぼと歩きながら口ずさんでいるのは名曲「コーリング・ユー」。この時点でジャスミンと、ブレンダはまだ出会っていないが、ジャスミンの声に反応するように歌うブレンダの姿は、ソウルメイトになる予感があった。

車もなくたった1人でモーテルにやってきたジャスミンを、ブレンダはいぶかしげに思うが、ミステリアスな魅力を放つジャスミンは出会う人を次々と魅了していく。トレーラーハウスで暮らしている画家のルディ・コックス(小西遼生)、街の秩序を守る保安官(岸祐二)。「自分を傷つける人間はここにはいない!」と前を向くジャスミンだったが、人々を虜にしていくジャスミンをブレンダは「悪魔なのではないか…」と警戒を強めるのだった。

どこにいても中心人物になってしまうジャスミン。心を寄せるルディが「君の絵を描かせてほしい!」と懇願するシーンはロマンチック。ルディがソロで歌う「俺の人生を描く」という楽曲の歌詞には、彼の心情が詰まっている。「♪2つの色を混ぜれば、過去も消せる」、「♪君の色で人生を描きたい」など、アーティストらしいロマンチックな言葉でジャスミンに呼びかける。夫と別れ傷ついたジャスミンは、ワイルドなルディの真っ直ぐな言葉に少しずつ心を開いていく。

存在を肯定してくれる人々の思いを力に変えて前進していくジャスミン。一方でブレンダと、行方知れずになった夫・サルとの関係はこじれたまま。サルが、遠く離れたブレンダを思い切ない表情で歌う姿に胸を打たれた。

電話で話す言葉がラップになる森、深い愛を歌い上げる小西、結びつきの深さを美しいハーモニーで表現した花總と清水(美依紗)…。舞台に登場する人物たちの、弾む気持ち、沈んだ感情、恋い焦がれる思いを幅広いジャンルの音楽で表現していく。思いを込めた1曲には、観客をその人物に引き込んでいくパワーを感じられた。

出会った瞬間に一目惚れ。尊敬や守りたいと思う気持ちなど、人同士が親しくなるきっかけはいくつかある。ジャスミンとブレンダを引き寄せたのは、抱えていた寂しさを吐露することができる存在だったから。急速に親しくなった2人は、記者会見で明かしていた通り、多種多様なマジックを披露する。

そろいのスカイブルーの衣装に身を包んだ花總と森は、空中に浮かぶスティックを自在に操って見せたほか、何もなかった空間に大輪の花を咲かせるなどして観客を魅了。手をつなぎ、頬を寄せて歌った「コーリング・ユー」には互いを思う深い愛がにじんでいた。別れを選んだ冒頭の寂しげな表情とは一転。2人の心からのはじけるような笑顔に、客席にも笑顔が広がっていた。

孤独を抱えた登場人物たちが、出会った仲間の心の中に自分の“居場所”を見つけ、自分を取り戻していく姿に励まされる。

舞台は東京・シアタークリエで11月23日(日)まで。愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホールで11月28日(金)~11月30日(日)。大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで12月4日(木)~12月7日(日)、富山・富山県民会館で12月13日(土)~12月14日(日)に上演される。

取材・文・撮影=翡翠

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