勉強や食事を一緒に…子どもたちに“第3の居場所”「無料」の裏で運営の苦しさも
学校や自宅以外にも、子どもたちが安心して過ごすことの出来る「第3の居場所」を作る動きが、全国的に広がりつつあります。
いったいどんな場所で、どんな取り組みを通して、子どもと関わっているのか。
2023年に相次いで出来た、北海道内の現場を取材しました。
教育大学の学生が子どもたちと
旭川の北海道教育大学にやってきた親子が向かった先は、学生と子どもを結ぶ団体『えんぴつとはし』。
北海道教育大旭川校の教員や名誉教授など、9人が運営する団体です。
毎月第2、第4月曜日に、ボランティアの学生とともに、子どもたちを迎え入れ、勉強を教えたり、食事を共にとったりしています。
午後4時。
この日集まった78人の小中学生たちは、席に着くと早速自分たちが持ってきた宿題やテキストを広げます。
大学生のお兄さんお姉さんに、気兼ねなく分からないところを質問できる、貴重な時間です。
将来、教員を目指す学生側も、この時間を大切にしています。
さらにこの活動に意義を感じているのは、子どもや学生だけではありません。
保護者にとっても「ありがたい」
保護者にとっても「えんぴつとはし」は大きな存在です。
「親が教えると、どうしてもイライラしたり…」
「自分のころのやり方と今のやり方は違うので、将来、先生を目指されている人たちに教えてもらうのは、すごくありがたい」
午後5時すぎ。
1時間ほど勉強したあとは、夕食の時間です。
この日は、用意された4種類の弁当から好きなものを選びます。
一部は、地元の弁当店から無料で提供されたものです。
提供している宅配給食いちご配食センターの林健太郎さんは「制限なく子どもたちを受け入れるというのが、すごいなと思ったので、少しでも援助できれば」と話します。
『えんぴつとはし』は事前に申し込めば、小学生や中学生なら、人数の制限なく誰でも無料で利用できます。
北海道教育大学旭川校の高橋一将准教授は、「“鉛筆”と“箸”を子どもたちに提供することで、彼らの将来に“橋をかけたい”という気持ちもありますし、その子どもたちが場合によっては、社会の端にいる場合もある」と名づけた意味を話します。
「そういった子どもたちに対して“鉛筆”と“箸”で、将来に結び付けてあげたい」
行政だけでは手が届ききらない…
旭川市の調査によりますと、子どもが1人で夕食を食べる家庭は、両親がいる世帯で7.8%。
母子世帯は10.6%なのに対し、父子世帯では16.7%と、約2割にのぼりました。
旭川市子育て支援課の香川秀頼課長は
「さまざまな事情で、夕食を一人で食べなければならない子どもがいるのは十分承知しているが、私たちだけでは手の届かないところに手を差し伸べて頂いて非常にありがたい」と話します。
各地に広がる“居場所”
“子どもの孤立化を防ぎたい”という思いで、居場所を作る団体は、北海道内各地で増えつつあります。
札幌市中央区にある、障がい児向けの絵本も取り揃えている『ふきのとう文庫』です。
図書館に併設された多目的室で『ふきのとう・こどもクラブ』は、日曜日から水曜日に活動しています。
対象は幼稚園児から高校生までと幅広く、子どもたちは宿題をしたり、本を読んだりと、自由に思い思いの時間を過ごします。
小学3年生の女の子は、「宿題もちゃんと出来て、家でやらなくて済む。何より、ここで友だちがたくさんできたのがいいなって」と教えてくれました。
『ふきのとう・子どもクラブ』では、夕食ではなくおやつを食べるカフェタイムがあります。利用料はかかりません。
この場所の運営費は、日本財団からの寄付で賄われています。
しかし、いまの状況を維持していくには、不安が残るとクラブの星野康さんは話します。
悔しいけれどお金がないとできない
北海道旭川市で活動する団体『えんぴつとはし』も、企業や市民から寄付金や食料品の提供を受けながら、運営しています。無料で居場所と食事を提供している分、運営は厳しい状況です。
この状況を北海道教育大学旭川校の高橋一将准教授は「悔しい」と話します。
「悔しいが、お金がないと出来ないんですよ。お金だけがすごく難しい。一緒に未来を作っていける人が増えていったらいいなと思いながら、踏ん張っています」
それでも続けるのには、「えんぴつとはし」も「ふきのとう・子どもクラブ」も共通する思いがあります。
「地域の子どもたちに、新しい居場所ができることはすごくいい効果がある。いろんな方向から、素晴らしい教育に対して開かれた場所になればと思っています」
「居心地がよくて、安心できる場所にしていきたい」
運営者たちは、子どもの孤立化を防ぐため、これからも“第3の居場所”を作り、地域と子どもを結び続けます。
『ふきのとう・こどもクラブ』を支援している日本財団は、2016年から全国で“第3の居場所”の開設支援を始めました。
2020年は、コロナ禍の影響で開設数が少ないですが、ここ数年で開設数が増えているのがわかります。
一方、旭川で活動する『えんぴつとはし』のように、地元企業などの支援を受けながら運営している団体もあります。
“第3の居場所”を作った団体に運営をぜんぶ任せるだけでなく、私たちが地域とともに、子どもたちが安心して過ごせる場所を支えていく必要があります。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年10月17日)の情報に基づきます。