【福山市】Herbal Style(ハーバルスタイル)〜 植物の力で地域を活性化!ハーブを取り入れた心地良い生きかた
医学の父と呼ばれる古代ギリシャの医師、ヒポクラテスは「人は自然から遠ざかると病に近づく」との言葉を残しています。
豊かな生活を手に入れるとともに、自然から遠ざかってしまった現代。
広島県福山市の企業であるHerbal Style(ハーバルスタイル)は、ストレスを抱えがちな現代人が心地良く過ごせるような商品を提供しています。
地域の人とのつながりを大切に、地球から生かしてもらっていることを常に意識しているという代表の宮澤知子(みやざわ ともこ)さん。宮澤さんにHerbal Styleの取り組みについて、話を聞きました。
Herbal Styleとは
Herbal Styleは、広島県福山市で耕作放棄地を活用した6次産業を営んでいます。
6次産業とは1次産業(製造)と2次産業(加工)、3次産業(販売)を掛け合わせた事業のことです。
Herbal Styleは、そのなかでも自然農法(農薬や肥料を使わない環境で植物の持つ力を生かした栽培方法)を中心とした循環型農業に取り組んでいます。
Herbal Styleは荒れた土地を開墾し、ハーブを栽培。虫や雑草も命をつなぐ役割を持つものとして大切にしています。
自社農園で栽培したハーブは、アロマや食用として活用しています。「毎日が慌ただしいなかで、笑顔になる商品を」を合言葉に、ハーブの知識を持ったスタッフが日々商品を開発中です。
Herbal Styleの取り組み
Herbal Styleは、自社農園で栽培したハーブを活用し、生活に自然を取り入れたライフスタイルを提案しています。
製品は数多く作れば作るほど売れるわけではありません。せっかく作っても売れなければ廃棄ですし、廃棄の量が多くなれば事業として成り立ちません。
Herbal Styleでは、60種類以上栽培しているうち使用するハーブを10種類に限定しています。製造するアイテムの種類も厳選し、ハーブを最大限に生かせる製品作りを心がけています。
国産無農薬のコーディアル
美しい紫色が印象的なドリンクは、ハイビスカスローゼルのコーディアル(ハーブとスパイスをシロップに漬け込んだ濃縮飲料)を炭酸水で割ったものです。
ハイビスカスローゼルとは、食用品種のハイビスカスのこと。Herbal Styleのハービスカスローゼルは品種改良がなされていない原生種を使用しています。
豊富に含まれているビタミンCには、風邪の予防や酸化ストレスの軽減効果があるとされています。
そのままでは酸っぱいハイビスカスローゼルをコーディアルにすることで、子どもからお年寄りまで飲みやすいドリンクに仕上げました。
夏はアイスで、冬はホットで。水や炭酸水で10倍に希釈して楽しみます。
コーディアルの製造には、福山市内で生姜シロップを販売しているジンジャーダイヤモンドが協力しています。納得できるレシピができるまで試作を重ねてできた自慢の一品です。
パウダリーアロマ Fuku香
福山市に来た人に懐かしさと親しみを感じてもらえるよう、BEAMS創造研究所監修のもと、パウダー状の精油であるFuku香(ふくか)も開発しました。
粉末にすることで香りの持続性が高まるうえ、携帯性も向上。どこでも手軽に香りを楽しめます。
香りは以下の3種類です。
・Tomonoura(鞆の浦に吹き抜ける潮風をイメージしたどこか懐かしい香り)
・Rose(福山市の市花であるバラをイメージした華やかな香り)
・Setouchi(波おだやかな瀬戸内の柑橘をイメージさせるすっきりとした香り)
人の記憶は、香りによって思い起こされることが多いもの。
どの香りも、懐かしさとともに福山市を思い出させてくれるでしょう。
とくに、Tomonouraは福山市最大の祭りである「ばら祭り」で、来場客からの投票によって選ばれた香りです。
どこか懐かしく、福山に親しみを感じてもらえるよう意識して作られました。
月の満ち欠けにあわせて開かれるカフェ
月の満ち欠けが潮の満ち引きを引き起こすように、月の動向は人の体にも影響を与えていると考えられています。そこでHerbal Styleでは、満月や新月など、月の影響がとくに大きくなる日にカフェを営業しています。
カフェで提供されるのは畑のハーブを使ったハーブティーやお菓子たち。コーディアルドリンクやアフタヌーンティーが楽しめます。
お菓子を製造しているのは、地元の女性たちや製菓店です。
ほかにも、収穫したハーブやドリンクを飲食店に提供したり、商品開発の力を借りたりしています。
Herbal Styleは、地元住民や企業とのつながりで成長してきました。
ハーブ畑で雇用創生
Herbal Styleの畑は、店舗中心に複数点在しています。野生に近い環境で育ったハーブは力強く、収穫するのにもひと苦労です。人手が足りない部分は、ハーブ畑近隣の女性たちから力を借りています。
はじめはハーブと雑草の見分けがつかなかった人も、香りをかぎながら素早くハーブを収穫できるようになるといいます。
多様性のある働きかたを尊重しているため、女性たちの年齢もさまざま。おもに10代〜80代の女性たちがハーブの収穫に協力してくれています。
「年齢を重ねてきたからこそ、伝えられることがあるはず」。
どのような環境でも力強く生きるハーブのように、関わる人たちがしなやかに生きていけることを、Herbal Styleは目指しています。
Herbal Styleの取り組みについて、Herbal Style代表の宮澤知子(みやざわ ともこ)さんに話を聞きました。
代表 宮澤知子さんにインタビュー
「会社が大きくなるよりも、それぞれの地域で6次産業が増えてほしい」と語ってくれたのは、Herbal Style代表の宮澤知子(みやざわ ともこ)さんです。
ハーブへの想いや地域活性化への取り組みについて、お話を聞きました。
ハーブとの出会い
──何がきっかけでハーブ事業を始めたのですか?
宮澤(敬称略)──
きっかけは子どもの病気です。まだ子どもが幼かったころ、チアノーゼが出るくらいアレルギーや喘息がひどかったんです。
投薬などの対症療法で症状を抑えるなか、慢性的な疾患は完治が難しいことを知りました。
そこで、もしかしたら毎日の生活習慣が病気を生むんじゃないかと考えたんです。とくに食事やストレスの影響は大きいと思って。
食事や生活環境について勉強していくなかで、ストレスを癒すにはアロマやハーブが良いと知りました。
「アロマやハーブなんて気取っている」と思う人もいるかもしれません。ただ、ヨーロッパなどではハーブが薬として人々の心と体を癒してきた歴史があります。
じつは日本でも、ハーブは昔から身近にあるものなんですよ。ヨモギやドクダミ、ショウガなどもハーブの一種です。
昔からの自然の力を借りれば、子どもの体調も良くなるんじゃないかと考えたんです。
我が家の場合、重症だったアトピーは半年で収まり、病院も薬も手放せました。
もちろん、生活を180度変えたので、アロマやハーブだけの力ではないのかもしれません。ただ、このときに学んだ知識がこの仕事を始めるきっかけになりました。
それから20年以上、ハーブとともに働いています。
つながりに支えられながら成長していく
──なぜ6次産業を始めたのですか?
宮澤──
6次産業は、もともと1次生産者を支えるために始めたことなんです。
福山市の市花であるバラは現在、農家の数が少なくなってきているんです。そのうえ、どこも販路に困っていて。
私たちにも何かできることがないかと考えていました。
私たちには幸い、アロマやハーブの知識があります。
スタッフ全員がハーバリストやセラピストの資格を持っているので、その知識を使って商品開発や販路開拓をすれば必要な人に届けられると思ったんです。
現在は、自社農園で育てたハーブに農家さんが育ててくれたバラや柑橘類をくみあわせて、商品を開発しています。
──全国に取引先があると聞きました。販路はどうやって開拓したのですか?
宮澤──
経済産業局のビジネスコンテストでの受賞が、知名度と信頼のアップにつながったのだと思います。
コロナ禍で運営しているサロンが休業し、使い切れないハーブがたくさん出てしまっていたんです。廃棄するのももったいないのでみんなでジャムを作ったり、ホウキを作ったりといった体験会をするようになりました。
知人からの助言で、畑のハーブで製品を作るこの取り組みをコンテストに提出したんです。
その結果、全国からコーディアルやFuku香のお問い合わせをいただけるまでになりました。
──ビジネスコンテストに採用されることで、ほかに変化はありましたか?
宮澤──
プロフェッショナルからのサポートとして、福山大学のスマートシステム学科を紹介いただきました。
現在は、温度や湿度の管理や水の自動散布を、IoT(あらゆるものをインターネットに接続する技術)で検証しています。
次はビニールハウスを作って温度や湿度を管理できるようにしたいとか、井戸水を引き上げて使いたいとか。いろいろなところで協力いただいていますね。
本当に、人とのつながりに助けてもらっています。
ハーブで地域活性化
──近隣の人に畑を手伝ってもらっていると聞きました。評判はどうですか?
宮澤──
ありがたいことに、多くの人に受け入れてもらっています。
「うちの土地も余っているから使っていいよ」と声をかけてくれたり、「うちの畑でもハーブを育ててみたい!」と育てかたを聞きに来てくれたりなどですね。
やりかたなら私たちで教えられるので、それぞれに新しく畑を立ち上げてもらうこともあります。
利益にならない量しか収穫できなかったら、Herbal Styleで買い取りますし、量ができたならキッチンカーでのドリンク販売などを提案します。知識をすべて渡す感じですね。
──地域でハーブ作りをしているんですね。
宮澤──
カフェは地域交流の場にもなっているんですよ。畑を手伝ってくれている人も、そうでない人も月一回、誘いあわせてお茶を飲みに来てくれています。
現在、店舗周辺には20世帯くらいしか住んでいないので、密度の濃いつきあいをさせてもらっています。
私が大変だといったら、「じゃあグループを作って手伝うよ」という感じで助けてもらうことも多いんです。
本当にいつも支えてもらっています。
──畑の野生動物対策にもハーブが役立っていると聞きました。
宮澤──
お店のある場所周辺は、イノシシなどの野生動物による農作物の被害が非常に多かったんです。動物避けにはハーブが良いと聞いて植えてみたところ、まったく現れなくなりました。
垣根にペパーミントとローズマリーを植えると、畑まで来なくなったんです。香りが苦手なのかもしれませんね。
農作物の被害が多いというご近所さんにもミントやローズマリーをおすそ分けしたところ、このあたりではイノシシを見かけなくなりました。これも、ハーブの力だと思っています。
目標はモデルケースになること
──Herbal Styleを運営するうえで気をつけていることを教えてください。
宮澤──
誰かひとりだけが得をする体制を作らないことです。困ったときはみんなで協力しあうようにしています。
人と人との間でもそうですが、人と自然の間でも同じです。地球に生かしてもらっているという意識で働いています。
正直にいえば、農業はお金になりにくいものです。
ただ、お金のために働くのか、自分の人生のために働くのかという部分は大切にしています。
人とのつながりを大事にしながら、意見を柔軟に聞き入れることで、これからも少しずつ仲間が増えていけばいいなと思います。
みんながそれぞれの生きかたに不安を覚えず、自分なりの人生を鮮やかにデザインできる環境を整えていきたいですね。
──Herbal Styleが目指す姿を教えてください。
宮澤──
Herbal Styleが6次産業をするうえでのモデルケースになればいいと思っています。
商品を手に取るだけでなく、「こういった事業があるんだ。こういう方法があるんだ」ということを6次産業をしている人たちに知ってほしいです。
私が事業を始めたばかりのころはアロマの知名度は低く、よく「アロマなんて仕事になるの?」といわれました。
それでも20年、何とか形になっているので、6次産業を続けていくことも不可能ではないと考えています。
全国規模ではなくても、それぞれの地域でその地域にあったモデルケースが増えていけばうれしいですね。
そのなかで、私たちの活動が励みになればいいな、と思っています。
ハーブを使って生活を鮮やかに
Herbal Styleは、生活のなかに香りや自然を取り入れたライフスタイルを提案しています。
地球から恩恵を受けていることを忘れず、自然に寄り添った生活をしていると意識の内側からポジティブに変わっていくそうです。
何かとストレスを抱えがちな人の多い現代。たまにはやさしいハーブの香りに身をゆだねてみてはいかがでしょうか。
慌ただしい日々を忘れ、爽やかな香りにリラックスできることでしょう。