「大人のためのPianoLesson-émune-」でつながる、人と音楽の輪。
新潟市中央区にある「大人のためのPianoLesson-émune-(エミュネ)」。ピアノを楽しむ大人たちが、連日、ここに通ってレッスンを受けています。講師を務める梨本さんは、あることがきっかけでピアノを教える先生になったんだとか。今回は梨本さんにピアノを教えはじめたきっかけや、教室で大切にしていること、今後の展望など、いろいろ聞いてきました。
大人のためのPianoLesson-émune-
梨本 千穂 Chiho Nashimoto
1984年新潟市出身。7歳からピアノをはじめ、新潟大学教育学部で音楽を学ぶ。卒業後は市内の雑貨店に勤務。その後、楽器店のピアノ教室の講師を勤めたことをきっかけに、2008年から大人を対象にピアノを教えはじめ、2011年に「大人のためのPiano Lesson-émune-」を立ち上げ、今年で15年目を迎える。
ピアノと関わり続けたくてはじめた、ピアノの先生。
――今日はよろしくお願いします。シンプルだけどおしゃれで、なんだか雑貨屋さんにいるみたいな教室ですね。
梨本さん:ありがとうございます。いろんな生徒さんに通ってもらっているので、どの方の雰囲気にも合うようにしています。でもシンプルになりすぎないように、自分の好きな雑貨やインテリアも置いています。もしかしたら、雑貨屋で働いていた経験が活かされているかもしれません。
――雑貨屋さんで働いていたことがあるんですね、てっきりずっと、ピアノの先生をされているのかと⋯⋯。
梨本さん:実は大学を卒業してからは、雑貨屋さんに勤めていたんです。同級生は学校で音楽を教えたり、ピアノ教室を開く子もいましたが、私はピアノからは一旦離れて仕事をしてみたいという思いがありました。
――そうだったんですね。どのような経緯で、ピアノを教えはじめたのでしょうか。
梨本さん:大学を卒業してから、ピアノとの関わりが薄くなって物足りなさを感じていました。そんなときに、楽器店が運営する大人だけのピアノレッスンコースの講師を募集しているのを知ったんです。ピアノに携われるだけではなく、人とも関わることができると思ってすぐに応募しました。そこでは3年ほど講師として活動していましたね。
――人との関わりが、講師をやりたいきっかけになったんですね。
梨本さん:これには大学時代の経験が影響しています。ひとりで演奏をするだけじゃなく、管楽器や弦楽器、特に合唱の伴奏をよくしていたんです。他の人と一緒に演奏をすると、人柄やその人の人生観にも触れられている感覚があって、とても感動したのを覚えています。それがピアノを続ける心のエネルギーになっていたんです。それもあって、大人の方に教えるピアノ教室ならやってみたい、と思ったんです。
――そこから独立されて、教室を開かれたんですね。
梨本さん:そこでのピアノ教室の講師をやめた後、もう人に教えるのはいいかなって思っていたんです。でも私のレッスンを受けてくれた人から、まだ教えてほしいって言ってもらえて。ピアノともつながれると思ったので、またレッスンを続けることにしたんです。
ピアノを通して、感動とつながりを。
──教室の名前である「émune」って、なんだか可愛らしい響きですね。
梨本さん:これは完全に私の造語なんです。「感動」や「感激」という意味を持つイタリア語「emozione(エモツィオーネ)」と、同じ意味を表すフランス語「émeu(エミュ)」をかけ合わせました。日々の多くの感動をピアノから感じてほしいという意味を込めています。
――教室のロゴも、黄色の線が特徴的ですね。
梨本さん:この黄色の線は「つながる」ことを意味しています。ピアノを通して、心がつながったり、ここに通う生徒さん同士がつながったり、様々なつながりの場になってほしいという思いを込めてこのロゴをつくりました。
――この教室にはどんな人が通っているのでしょうか。
梨本さん:仕事や子育てがひと段落して自分の好きなことをはじめたいという方や、家と仕事の往復に何か変化をつけたいという方、そして、昔から憧れだったピアノを人生のひとつの目標や夢の実現に、とはじめられる方など……様々な理由で通っていただいています。半数の方はピアノを経験されたことのある方ですが、経験のない方も少なくはないですよ。
――この教室は、レッスンの日時を選んで予約するシステムなんですね。
梨本さん:大人を対象にしたピアノ教室なので、お仕事や子育て、趣味の時間とのバランスが取りやすいように、予約制にしています。生徒さんには好きな曲を選んでもらって、それに合わせて練習曲を使いつつ、レッスンをしています。
――レッスンの中でどんなことを大切にしているのでしょうか。
梨本さん:生徒さんとの距離感は大切にしています。ひとりひとりの生徒さんのことを知りたいと思っても、距離を詰めすぎず、ちょうどいいコミュニケーションをとることを心がけています。生徒さんに教えていく中で、私自身にもいいことがあったんです。
――どんなことなのか、ぜひ教えてください。
梨本さん:生徒さんへの教え方の引き出しを増やしていったことで、自分自身のピアノも上達したんです。教えはじめた当初、生徒さんの気持ちを理解しきれないことがあったんです。私の中では、ピアノが弾けるってことが当たり前になっていて、生徒さんのできない部分にモヤモヤしてしまって。
――自分だったら、こうできるのに、と思ってしまうことがあったんですね。
梨本さん:そのとき音やリズムのような感覚的なものを、言葉にして伝えはじめたら、生徒さんと同じ目線に立つことができたんです。そこから自分自身の演奏も変化しました。ピアノ漬けだった大学時代よりもうまく弾けている気がしていて。何歳になっても、うまくなれるんだなと実感しましたね。
これからも、ピアノとともに。
――「大人のためのPianoLesson-émune-」は今年で15年目になりますね。
梨本さん:生徒さんから感動を毎日もらっていて、感謝の気持ちでいっぱいですね。そんな日々の感じたことをブログに書き留めているんです。周知したくてはじめたんですけど、今では生徒さん同士をつなぐお便りのような存在にもなっています。
――梨本さんのこれからの目標を教えてください。
梨本さん:今日まで、たくさんの生徒の皆さんと出会わせていただいています。みなさんの人生のひとコマにあるピアノライフをご一緒できていることに、これからも感動し続けて、感謝と喜びを忘れないことですかね。これからも生徒さんや私にとって人のつながりが広がるような活動ができたらいいなと思います。
──「大人のためのPianoLesson-émune-」のこれからは、どうなるのでしょうか。
梨本さん:私が60歳になったとき、この教室を畳むつもりなんです。ピアノ人生のひとつの章に、この教室があるような感じで、次の章では私の実家を改装して、ピアノが弾けるサロンを開こうかなと思っています。昔、私の実家はなにかあれば人が集まる、大きなお家だったんです。そこをまた、人が集まる場所にしたくて。ピアノが好きな人が自由に演奏できたり、みんなで集まってお茶会をしたり……。みんながつながる憩いの場にできたらいいなって思っています。
大人のためのPianoLesson-émune-
新潟市中央区信濃町21-3 信濃町日鉄マンション1-A