森泉が「大ファン」公言、画家 石村嘉成が動物たちのいのち輝く瞬間を描いた作品に「動物と会話している感じがする」
12月8日(日)まで、兵庫・兵庫県立美術館 ギャラリー棟3階ギャラリーで『石村嘉成展 ~いのちの色たち~』が開催中だ。今回、公式スペシャルサポーターにモデルでタレントの森泉が就任。以前から「大ファン」と公言していた彼女。今回、SPICE編集部の独自取材として彼女の作品はもちろん、画家・石村嘉成の魅力や同展の楽しみ方を語ってもらった。
アクリル画を中心に動物や昆虫、花など「いのち」の輝きを描き続ける石村嘉成。愛媛県新居浜市在住で、2歳で自閉症と診断され、家族と周囲に支えられながら厳しい療育を受けていたが、小学校5年生の時に最愛の母が他界。以降、父と二人三脚で歩むなか、高校3年生の選択授業で版画に出会い、転機が訪れる。以降日々絵を描き続け、2013年に『第2回新エコールドパリ 浮世・絵展』で優秀賞を受賞したのを皮切りに、各賞を受賞。現在はアクリル画をメインに、独特の色彩とダイナミックな画風で多方面から注目を集めている。
現在開催中の同展は関西初上陸で、過去には地元愛媛や岡山で約8万人を動員。今回、全長26mもある圧巻の代表作「Animal History」をはじめ、200点を越える作品が展示されている。さらに、同展のために石村嘉成が新たなテーマに挑戦した異色の新作も展示されるなど、「いのちの色」の輝きを感じる展覧会となっている。
――本展の開催前から石村嘉成さんをご存じだったのですよね。
たまたまテレビのドキュメンタリーを観たんですよ。その時もやっぱり動物を描いていて、素敵だなと思って。生い立ちやお父さんとの療育、大変なこともあるけれど、やっぱり彼の絵の迫力、色にすごく癒されますね。そこからご縁があって、今回のスペシャルサポーターに就任したんです。今回、久しぶりに彼の絵を観たら、すっごく進化してたんですよ。当時描いたものと、最新作との違いも面白い。絵のタッチも変わっているし、新しいテクニックも加わっていたり、今回の展示もいちファンとして観ちゃいました。
――石村嘉成さんの絵は、キャンバスの縁までしっかりと色を乗せているのも印象的ですよね。
そう! セレモニーの前に話を聞いたら、彼は必ず絵に日付を入れるんだけど、その日付を入れるために縁まで色を入れているんだって。日付が入っていることで、「これはいつの作品なんだろう?」と、より彼の成長を見ることができますよね。
――彼の作品は動物を描いたものが多いですが、森さんは自宅でたくさんの動物を飼われていますよね。
ワンちゃんが一番多いんですけど、保護した犬を一時的に預かっているんです。新しいお家を探しているワンちゃんが必ず自宅にいますね。
――石村さんの作品には動物園で出会える動物から野生のもの、さらに絶滅した恐竜まで。たくさんの種類の動物が描かれていますが、森さんが飼われている動物も石村さんの作品に描かれているのではないでしょうか。
ほんとにたくさんの種類が描かれているから、全部いるかもしれない(笑)。どの動物も見ているだけでワクワクしますよね。でも、石村君の絵は基本的には野生動物が多いみたいなので、ワンちゃんの絵はないみたい。ほかにも絶滅危惧種の動物もたくさん描いているので、自然の大切さも訴えているのかなと感じますね。
――動物好きの森さんはどんなところに注目して観ていますか?
やっぱり目かな。家で動物をたくさん飼っているけど、動物の気持ちや表情を感じ取るためには目で会話するのがとっても大事。「預かりさん」で面倒をみていたワンちゃんが新しいお家にいったとき、最初は人間馴れしていなかったけど、しばらくするとすごく愛されているんだなって、目を見るだけでわかるようになるんです。石村君の絵も、動物と会話している感じがします。
――石村さんのお父さんに、あの臨場感ある動物の絵はどういうふうに描いているのかを尋ねると、「動物園や映像で観た動物が彼の頭の中にそのまま残っているんです。一度見ると忘れないみたい。頭のなかに資料として映像が残っていて、そこから描き出す。彼自身も動物になりきっている部分もあるようです」とお話されていました。
えー!! それはすごい!
――今回の展示は動物たちの喜怒哀楽、「感情」によって絵が展示されています。目だけで表情を感じ取れるほど、すごくリアルに描かれていますよね。
彼には動物がそう見えるんだと思います。彼が感じて、会話をして、その瞬間を描いたものを私たちも観ることができるんだなって。あと、入り口から入ってすぐの26mもある大きな作品「Animal History」は、動物たちのいろんな表情を一度に見られるのもすっごく楽しかったですね。大きな恐竜がいるなと思ったら、すっごく小さくてかわいい蝶々がいたり。子どもと一緒なら、動物探しをするのも楽しそうですよね。
――今日は森さんのお子さまも会場にいらっしゃいます。「Animal History」だけでなく、今回の展覧会は小さな子どもと一緒に楽しめる作品が多いですよね。
絵の点数も盛りだくさんで、どれも温かみがあるし、いろんな世代の人が楽しんでいただける内容になっていると思います。絵を観たあとも「あの絵はどうだった?」とか、会話が弾みそうな感じがして。小さなキャンバスがずらっと並んでいるコーナーもすごく印象的。絵のなかに同じ大きさの鏡が置いてあるんだけど、子どもと一緒に鏡を見て「あなたならどんな表情で描く?」と、娘と話をしたりしてて。
――その発想は子どもならでは、ですよね。
ね! 楽しさ満載で癒されるんだけど、大人にとっては色々と考えさせられるものもあるし。
――ほかのアート展にはない、気持ちがほっこりとする作品が多いように思います。
人って色を見るとハッピーになるんだって。自分の好きな色が入っていると、もっとハッピーな気持ちになるらしいの。
――今日の森さんの衣装もとてもカラフルですよね。
そう! 石村君の作品をイメージして!
――オープニングセレモニーでは、石村さんが大きな鳥の羽根があしらわれたブローチを着用されていました。森さんが飼われているインコの羽から作られたんですよね。
たまたまお会いする前に、自宅で飼っているインコの大きな羽根が抜けちゃって。インコの絵を描いているのを知っていたから、色もカラフルで楽しいし何かに使えるかな? と思ってプレゼントしたら、ブローチにしてくれて。小さい羽根とセットにしていたから、そっちかなと思ったら、まさかの大きな羽根のほうでびっくりしちゃった(笑)。
――お二人が並んでいる姿がとてもカラフルで印象的でした。今回の展示の最後には、そのカラフルさから一転。真っ白なキャンバスで最後を迎えます。
石村君にどの絵が一番好きなの? と聞いてみると「これから描く絵が好き」って言うんです。常に明日も描きたいんだって。だから、あの真っ白なキャンバスがどうなっていくのかもすごく楽しみ。
――今回は200点を超える作品が展示されていますが、またどこかで展覧会があればその数はもっともっと増えていそうですね。
そう! まだまだ増えていくし、絵のタッチも変わるだろうし。まだまだ才能が溢れ出てくる。楽しみでしょうがないですね。
――最後に、SPICE読者にメッセージをお願いします。
今回の展覧会は本当に、動物好きにはたまらないと思います。本当に素敵な絵がいっぱいあるし、動物たちの喜怒哀楽が好きな方はもちろん、親子でも、一人でも、いろんな人に楽しんでほしい。何回来ても楽しめる展覧会なんですよね。最初に来た時に感じたものとは、また違う感覚で観られる。本当にたくさんの人に石村君の作品を楽しんでほしいです。
取材・文=黒田奈保子 撮影=ハヤシマコ、SPICE編集部(セレモニーのみ)