16歳から89歳まで!湯の山で映画づくり没頭の3日間 第9回菰野ふるさと映画塾
映画やドラマの撮影地として映像制作者の誘致や支援を行うフィルムコミッション「ロケーション応援団菰野」(LOOK)は、6月13日から15日にかけて、三重県菰野町の湯の山温泉で第9回「菰野ふるさと映画塾」(森豊塾長)を開催した。今回は16歳から過去最高齢の89歳まで14人の参加者が集い、映画制作の喜びと難しさを体験した。
地元の魅力に気づくきっかけになればと2013年に始まった同映画塾。四日市市出身の映画監督・瀬木直貴さんの指導のもと、企画立案から脚本作り、出演・撮影・編集・上映までを3日間で体験できる、実践的なプログラムが組まれている。
テーマは「壁」悩みや葛藤を物語に
今年のテーマは「壁」。全員で意見を出し合い、作品の軸となる物語を練り上げた。世間に認められず苦悩するクリエイターや、ジェンダーの壁に悩む若者の姿を描いたストーリーが、白熱した脚本会議を経て完成した。
撮影2日目は豪雨に見舞われたが、ロケは予定通り決行。服や靴がずぶ濡れになる中、塾生たちは「監督」「俳優」「撮影」「音声」といった役割を真剣にこなし、現場は終始、活気と熱気にあふれていた。
【シーンごとに交代で「監督」を体験】
初挑戦の若者から、映像に夢を託す89歳まで
桑名市から参加した中井彩乃さん(24)は、「カメラが回るまでは実感が湧かなかったけど、始まったらあっという間でした」と3日間の奮闘を振り返り、大阪から家族旅行で湯の山温泉を訪れた際、塾生募集を知って申し込んだ田中結麻さん(24)は、「皆が活発に議論するのを見て、自分もこんなふうに意見を言っていいんだと感じた。人として成長できた実感があります」と語った。
【感無量のクランプアップの瞬間=ロケ協力のCafe Suimei(菰野町菰野)で】
最年長の参加者は、志摩市在住の油彩画家・神尾親義さん(89)。伊勢志摩の偉人たちの功績を映像で伝える術を学びたいという思いから参加を決めた。「誰もが何かの役割をするということで、人生で初の『監督』を経験した。全体を通して映画制作の大変さがわかった。これから映画の見方が変わると思う」と話し、今後の動画制作活動へも意欲を見せた。指導した瀬木監督「人間味ある作品に」
約10分の短編映画のタイトルは、「曖昧な存在としての自分」と、作中に登場するカタツムリ(マイマイ)を重ねた『アイ[マイ]マイ』に決定。ロゴデザインも皆で手掛けるなど、最後までこだわり抜いた。最終日には音楽も加えられ、上映会と閉講式が行われた。
【上映会でタイトルが映し出された瞬間=湯の山温泉ホテル湯の本(菰野町菰野)で】
映画の内容については参加者の自主性に委ねて見守り、制作の段取りや手順、機材の扱いの指導を重点的に行った瀬木監督は、「過去一番、苦労した回だったかもしれないが、努力の甲斐あってヒューマンな映画に仕上がった」と塾生の健闘を称えた。
広がる映画塾の輪、今後の展開も
同映画塾開始から足掛け12年、9回の開講を経て、参加者同士のつながりも広がっている。昨年も参加した四日市市の市川未来さん(52)は、自主映画の制作に携わる夫と8月10日に三浜文化会館(四日市市海山道町)で、自主映画のイベントを開く予定で、同映画塾の歴代作品の上映も企画しているという。
また、今回制作した「アイ[マイ]マイ」は、今後各地の短編映画祭への出品を視野に入れている。