Yahoo! JAPAN

もう少し早く税理士に相談していれば防げたかもしれない税金の悲劇

mymo

【画像出典元】「stock.adobe.com/taa22」

税務相談に来られる方の半数以上は「もう少し早く相談しておけばよかった」という方々です。今回はアクションを起こしてしまってからでは後戻りが出来ない税金にまつわるお話をいくつかご紹介します。

[ケース1]離婚して売却したマンションの譲渡所得、非課税になりますか?

【画像出典元】「stock.adobe.com/vgstudio」

[相談内容]

先日妻との離婚が成立しました。15年前に結婚した際、100%私の名義でマンションを購入しましたが、妻とは5年半前から別居しており、私は賃貸マンションで生活しています。離婚協議がようやく解決し、妻も退去したので購入したマンションを売却することにしました。高値で売却できたので譲渡所得が3000万円ほど出そうです。居住していたマンションを売却した時は、譲渡所得3000万円まで税金がかからないという話を聞いたことがありますが、私にもその特例は使えますか。

[税理士の回答]

今回の譲渡で特例は使えません。特例を使えるのは、売却直前まで居住している場合、又は居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の12月末までに売却し、一定の要件を満たした場合のみです。したがって今回のケースの場合、特例を使わずに計算した所得税及び住民税の納税額が約610万円となります。

「居住用財産の特例」を使うためには要件がある 

【画像出典元】「stock.adobe.com/JD8」

居住していた不動産を売却して、譲渡所得が発生した時に、一定の要件を満たせば、その譲渡所得から最大3000万円控除できる(税金がかからない)特例があります。その特例を「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」と言います。

今回のケースではなぜ適用できなかったのか

要件のひとつに、「その家屋に住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限る」というものがあります。今回のケースでは、別居して5年半が経過しており、ご主人が購入したマンションに住まなくなって3年以上が経過しているため、この特例は適用できませんでした。仮に住民票を移動させずに、元々住んでいたマンションに置いていたとしても、実体としてその所有するマンションに居住(寝食をしている)していなければ、特例の適用はできません。

 (参考HP 国税庁 マイホームを売ったとき)
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

特例の適用を受けるためには

5年半経過してしまった今回のケースでは特例は使えませんが、別居して将来不動産を売却するようなケースの場合、3年ルールがあることを覚えておくと良いでしょう。離婚協議の場合、なるべく早く解決することが税金の面でも望ましいと言えます。今回のケースの場合、もし特例が適用出来たとしたら納税額は0円でした。

[ケース2]マイホームを共有名義で購入したら税務署から問い合わせが…

【画像出典元】「voronaman/Shutterstock.com」

[相談内容]

5000万円のマンションを全額ローンで購入しました。夫婦共働きであることや、住宅取得控除を夫婦で適用できるように、自宅の持分割合を、妻と私で50%ずつとし、妻を連帯債務者として融資を受けました。私の年間給与は800万円、妻の給与は年間200万円です。

ところが先日、税務署より「お買いになった資産の購入価額などのお尋ね」が届きました。何か問題があったのでしょうか。

[税理士の回答]

住宅を取得した時にランダムに「お買いになった資産の購入価額などのお尋ね」という文書が届くことがありますが、何か問題があるから届くというわけではありません。回答された内容を税務署が精査して問題があれば、お尋ねや調査が行われるものと考えられています。一般的には、住宅取得資金の贈与がなかったかの調査に用いる場合が多いと言われています。(贈与を受けたことをきちんと申告しているかの確認)

今回のご相談者のケースの場合、自宅の持分割合と夫婦の収入割合からすると、「ご主人から奥様への贈与」と指摘を受ける可能性があります。

共稼ぎの場合の住宅持分割合の考え方 

【画像出典元】「Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com」

共有名義で住宅を登記する時の持分割合は、ご夫婦の年収の割合によって登記する必要があります。今回のケースの場合、正しい住宅の持分割合は次のようになります。

  1. 現在の状態
 ・ 住宅の購入価額  5000万円
 ・ 資金の負担
   (夫)5000万円(銀行融資)×50%(持分割合)=2500万円
   (妻)5000万円(銀行融資)×50%(持分割合)=2500万円
 ・ 給与年収の割合
   (夫)800万円÷(800万円+200万円)=80% 
   (妻)200万円÷(800万円+200万円)=20%

 2. 正しい住宅の持分割合
   給与年収の割合をもって住宅の持分割合とします。
   ・ご主人の住宅の持分割合 80%
   ・奥様の住宅の持分割合  20%

 3. 税務署から指摘を受けた場合の贈与税の納税額
   ①正しい持分割合による住宅の持分価額(妻)
    5000万円×20%=1000万円
   ②登記している持分割合による住宅の持分価額(妻)
    5000万円×50%=2500万円
   ③ ①と②の差額 1500万円 → この金額が夫から妻への贈与とされます

   したがって、妻が納付する贈与税の額は下記の計算により、450万5000円となります。 
   (1500万円-110万円)×45%-175万円=450.5万円 

ご両親等からの住宅取得資金贈与があった場合の持分計算は、少々複雑になりますので、税務署又は専門家にご相談ください。

  (参考HP 国税庁)
  https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4411.htm

[ケース3]息子と同居するために家を増改築したら税金がかかる?

【画像出典元】「stock.adobe.com/ELUTAS」

[相談内容]

息子が東京から家族3人で私の家に同居するためUターンしてくることとなりました。私の家は築年数も相当経過し、部屋数も少なかったため1500万円をかけて増改築をしました。費用は息子が自己資金で全額支払ってくれました。ちなみにこの家の名義はすべて私の名義です。特に税金は発生しないと思っていますが大丈夫でしょうか。

[税理士の回答]

お父様の名義の建物に息子さんが増改築をした場合、お父様は息子さんから増改築部分の贈与を受けたこととなり、増改築があった翌年の3月15日までに、贈与税の申告・納付を行う必要があります。ちなみに納税額は約450万円となります。

お父様の建物に息子さんが増改築を行った場合、その増改築部分の名義は息子さんが支払って増改築をしたとしても、お父様の名義となります。これを民法242条の建物の附合と言います。したがって、お父様は、金銭の負担をすることなく増改築部分の家屋を手に入れたため、息子さんより増改築部分の贈与を受けたことになります。

(参考)民法242条 建物の附合
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権限によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
(参照/国税庁:親名義の建物に子供が増築したとき)

増改築で贈与とならないためには…

このケースで贈与とならないための方法はいくつかありますが、そのうちのひとつと手順をご紹介します。 

解決策:親名義の建物の名義を子供に贈与する

①住宅の増改築をする前に親名義の建物の名義を、増改築する子供へ贈与します。贈与ではなく譲渡(売買)することも可能ですが、その場合、親が子に不動産を譲渡したこととなるため譲渡所得が発生しますのでご注意ください。また、親から子供へ移転する不動産は建物だけでも大丈夫です。土地は必ずしも移転する必要はありません。

②贈与をすると、その建物の評価額が110万円超の場合、贈与税が発生します。暦年課税で贈与税を納めるのか、又は相続時精算課税を適用するのかは親の財産状況によって変わります。その親の相続があった時に、相続税がかからないような財産のボリュームであれば、相続時精算課税制度を選択して贈与すれば、建物の評価額が2500万円までは贈与税が無税で贈与が可能となります。親名義の建物の築年数が相当期間経過している場合は、建物の評価額も低いと思われますので、暦年課税であっても、多額の贈与税の納付になるケースは少ないかと思われます。

③建物の名義を子供に移転後、子供が増改築を行います。そうすることで、子供は、子供名義の建物に子供が自ら増改築をしたこととなるため贈与の問題は発生しません。

国税庁のホームページは次のような方法もアップされています。この方法は親名義の家屋の半分を子供に譲渡する方法です。ご参考ください。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/14/04.htm

まとめ

1年間、税金をテーマに様々な切り口からなるべく堅くならないテーマをと思いながら原稿を書かせていただきました。読んでいただきありがとうございました。税金の仕組みは単純なようで、要件や計算、思考過程が難易なものが多いので、困った時は複数の情報を収集したり、税務署、税理士にご相談ください。

【関連記事】

おすすめの記事