【静岡の高校サッカー戦後史Vol.70】1994年度の清水商業(現清水桜が丘)佐藤由紀彦や安永聡太郎を擁して“全国2冠”
【清水商⑮】全国5連続優勝ならず
※2011年3月〜11月に「静岡の高校サッカー 戦後の球跡」のタイトルで静岡新聞に掲載した連載を再掲しています。年齢等も掲載当時のままです。静岡サッカー応援アプリ「シズサカ」でまとめてご覧いただけます。
「前チームが選手権で優勝し、プレッシャーとともに受け継ぎ、不安だらけのスタートでした」。1994年(平成6年)度の主将、佐藤由紀彦(JFL長崎)は清水商サッカー部記念誌「蹴闘(シュート)」で、新チーム発足当時の心境をこう記した。
佐藤とともに2年生で前年度の選手権Vメンバーに名を連ねた安永聡太郎(サッカー解説者)も「優勝しても喜びの涙を流すことはできなかった」という。「次は自分たちの番だ」との思いが、脳裏に浮かんだからだった。
不安を覚えながらのスタートだったが、新人大会で優勝し、総体県予選も制して、富山県開催の全国総体に名乗りを上げた。
帝京との総体決勝、藤元が決勝点
初戦(2回戦)は前橋商(群馬)に苦戦し、3−2の辛勝だった。しかし、3回戦は市船橋(千葉)に4−1、準々決勝は室蘭大谷(北海道)に5−0と圧勝、準決勝も広島皆実(広島)を4−0と寄せ付けなかった。
決勝は帝京(東京)と対戦。互角の展開で進んだが、0−0の後半5分、安永が競ったボールを藤元大輔(佐川急便)が頭でとらえて、ゴールを奪った。「大舞台に強い」といわれた藤元の面目躍如のプレーで、4年ぶり3度目の総体王座に就いた。
全日本ユース(U-18)も快進撃をみせた。まず鹿児島実(鹿児島)との攻め合いを5−3でものにし、G大阪ユース(大阪)を4−0、習志野(千葉)を6−3で破って決勝に進出した。
読売ユース(神奈川)を相手にした決勝は、先手を許した。だが、焦ることなく盛り返して、3−1で逆転勝ち。前年度の全日本ユース、選手権、94年度の総体、全日本ユース、と4大会連続優勝を飾り、「清水商強し」を印象づけた。
GK楢崎正剛率いる奈良育英に…
次の戦いの場は選手権。静岡学園との県予選決勝は延長にもつれ込む接戦となったが、2−1で競り勝って9度目の全国行きを決めた。
5大会連続優勝が懸かった全国選手権は、2回戦から登場し、奈良育英(奈良)とぶつかった。後半、ペースをつかみ、盛んに仕掛けた。だが、奈良育英のGK、楢崎正剛(J名古屋)の好守にゴールを割れず、逆に終盤、決勝点をもぎ取られて0−1で屈し、偉業達成はならなかった。
「清商戦だけに絞ってきた」という奈良育英の捨て身の戦法に屈した一戦。同時に、本命として臨む難しさを実感させられた敗戦でもあった。(敬称略)
1994年度全国総体決勝先発メンバー
GK
石野智顕
DF
加藤泰明
朝比奈伸
松原忠明
新村真一
MF
幸島宏次
岩崎克彦
佐藤由紀彦
FW
藤元大輔
安永聡太郎
岡田一隆