「深海の釣り名人?」光る疑似餌を使う『チョウチンアンコウ』の驚きの狩猟テクニック
真っ暗な海を巡回する提灯をぶら下げた魚たち、チョウチンアンコウ類。彼らは頭から擬似餌(エスカ)と呼ばれる発光する鰭の一部を巧みに使って餌を捕食します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
チョウチンアンコウ類は「釣り」をしている
チョウチンアンコウ類は背鰭の軟骨が竿のように変化したイリシウムという誘引突起を使い、その先にあるエスカと呼ばれるルアーのような擬似餌で魚を誘き寄せたり、強い光で発光し、驚かせて小魚を捕まえたりしています。
エスカからは発光物質を噴射することもでき、身を守るために使うこともあるそうです。万能な釣り竿を持っているのですね。
ルアーでバクテリアを飼育
エスカには発光器官があり、その中にはバクテリアの培養室があるのです。バクテリア培養室は球状で、球の先端には突起や糸状の器官があります。
バクテリアを取り入れ、培養室に送り、バクテリア培養のための酸素と栄養もそこから取り入れて培養室に送って培養します。
そして球の中には半透明の部屋があり、そこから発光が外にわかるようになっていて、発光物を噴射したりしています。半透明の部屋はレンズになっていて光を倍増させることができるのです。
素敵なチョウチンアンコウたちのルアー
チョウチンアンコウ類の“ルアー”や“竿”は多様性に富んでおり、魚の釣り方もそれぞれ違っています。
シダアンコウは体長より長い竿を使って釣りをするし、ビワアンコウは頭の上の竿を引き寄せるともう一方の後にある鰭が伸び、その後方の鰭が竿の鞘のような役割をしています。
ルアーの形もさまざまで、チョウチンアンコウはフサフサのイソギンチャクのような形、ペリカンアンコウはマッチ棒のような形をしています。
「驚異の魚」という属名を持つアンコウの仲間
海底に住む「驚異の魚」という属名を持つアンコウ類のサウマティクチスアクセリは前方に突き出した上顎の先端に発光するルアーをぶら下げています。餌となる生物が集まってくると、ルアーを口内に折り曲げて口の中へ誘い込みます。
口はトラバサミのようになっていて獲物が触れると閉まる仕組みです。見た目も迫力があります。
太平洋のサンディエゴ沖とコスタリカ沖で2個体しか見つかっていないという珍しい深海魚です。
マサモリさんが捕獲したマサモリチョウチンアンコウ
日本の漁師さんが底引網漁で捕獲したアンコウが「マサモリチョウチンアンコウ」です。
チョウチンアンコウ類は頭の疑似餌で種類を見分けることができるのですが、この種は先端が長く2つに枝分かれしているのが特徴です。
(日本初確認「マサモリチョウチンアンコウ」標本公開 名前由来の人物はダレ? 仙台-TBS NEWS DIG)
(【仙台うみの杜水族館】生物ライター 平坂氏によるトークショー開催!深海生物の激レア標本を特別公開!『深海ナイト水族館』-PR Times)
チョウチンアンコウの多様な「釣り」
この記事では、チョウチンアンコウの“釣り”について紹介しました。人間とチョウチンアンコウで同じような行動をとっているなんて、なんだか不思議ですよね。
また、チョウチンアンコウの“釣り”の中にも多様性があることも興味深いです。今後チョウチンアンコウに触れる機会があれば、釣りの多様性についても目を向けてみてはいかがでしょうか。
(サカナトライター:小園梓)