TOCから五反田JPビルに移転して引き継がれる「食事処志野」のニクシチ / 昭和の味は令和のフードホールへ

10/13(日) 17:55配信

コロナ禍を境にして、老舗と言われるお店が相次いで閉店した。私（佐藤）の生活圏である東京・中野でも古くから営業を続けていたお店が、シャッターを閉める様子を頻繁に目にした。業種を問わず、時代に合わせて事業を続けることは難しい。飲食業ならなおさらだ。

最近五反田を訪ねたところ、とても良い形で古くから営むお店を進化させている食堂を目にした。そのお店「食事処志野」は長年TOCビルで営業を続けていた。この4月末に開業した五反田JPビルに移転し、これまで守り続けている味を真新しいフードホールで提供しているのである。

・昭和から令和へ引き継がれる味

TOCビルは2024年3月に一旦閉館している。2021年に発表されたビルの建て替え計画によると、当初は2023年春に建て替えの着工を予定していたのだが、それが1年延期。さらに建築費の高騰で着工はさらに見直され、この9月より営業を再開している。

食事処志野は、1970年のTOC開業当初から地下に入居（創業は1960年）していたのだが、3月の閉館に伴いTOCでの営業を終え、4月からJPビル1階の「五反田食堂」での営業を開始したのだった。

移転した先のJPビルは1階にフードホールの五反田食堂、2階にシェアオフィス、3階にはホールとエントランス。そして14～20階には星野リゾートのホテル「OMO5 東京五反田」が入っている。

4月に開業したばかりなので施設はとてもきれいだ。開業半世紀を超えるTOCからも近いので、志野の移転は比較的スムーズに行ったのではないだろうか。何より、遠からぬ距離への移転なので常連さんは安心したはず。

フードホールでは現在10店舗が営業しており、その中には名店も名を連ねている。たとえば、予約は2年待ちといわれる「食堂とだか」の居酒屋業態「ここにもとだか」や、新宿の洋食の老舗「アカシア」など。

施設の歴史は浅いけど老舗が何軒も入っており、「令和」の器に「昭和」の味が入っているといって良いだろう。

志野もそんな昭和の味を今に伝えるお店である。

そういう私は、TOCで志野の味を口にしたことがなかった。訪ねた時はいつも混雑していた覚えがある。あの時、ちゃんと食っておけばよかったな～。過去は取り返せないので、今から志野の味を知ろう。

メニューを見ると、まずは支那そばが目に入った。今日は肌寒いから、こういうのもいいですね。あったまりそう～。

お食事メニューは種類が多い、とくに豚肉メニューが多いな！　そして全部美味そう。老舗食堂のハムエッグやベーコンエッグも間違いないんだよなあ～。厨師シェフのオススメ定食ってのも気になる。

メニューは定食だけではない。ラーメン・焼きそば・チャーハン・カレーライス・オムライス、どれ食ってもハズレがなさそうだ。悩む～……、いっそ単品おかずとライスもアリよなあ。

メニューを凝視して5分考えた結果、ここの名物に挑むことにした。それは「ニクシチ」の略称で知られる「豚肉七味炒め定食」（税込1300円）である。

注文すると、驚くべき早さで出てきた。さすが名物、そしてさすが働く人の強い味方、スピード命！

ライス・味噌汁・お新香、そしてニクシチというシンプルな内容。いわば定食における、黄金の方程式だ。それが導き出す答えはいつも決まっている。「美味い！」だ。

ニクシチはその名前の通りに豚肉を七味で炒めたもの。本来、私は辛いモノが苦手であるがゆえに、七味は敬遠したいところ。辛味はニオイだけでも抵抗を感じるのに、これのニオイはやたらと食欲をそそる。

肉をひと切れ食べてみると、辛味はあるけど辛いだけではない。しっかりとした肉の旨味がある。もしかして、コレが「旨辛い」というヤツなのか？　個人的には辛味は旨味を損なう気がするので「旨辛い」は成立しないと思っていた。でも、これはちゃんと旨くて辛い。ひと口食べると、さらにひと口を欲するおいしさだ。