昭和30年創業のレトロ市場が「みんなの面白い」を実現する舞台に!【金城市場 小田井孝夫さん・康子さん】
名古屋市北区の住宅街に位置する「金城市場」。創業は昭和30年。かつては多くの店が軒を連ね地域の生活を支えてきましたが、時代とともに需要が減少し入居店は1店舗のみに。そんな市場を様々なイベントを通して蘇らせたのが、祖父母から建物を受け継いだ小田井孝夫さん・康子さん夫婦です。朝市から古本市、ファッションショー、プロレス開催まで!奇想天外な発想をかたちにして、賑わいの場を作り出すおふたりに、市場再生の経緯をうかがいました。
小田井孝夫さん・康子さん
名古屋市北区の「金城市場」のオーナー。2020年、祖父母が所有する金城市場を含めた近隣の建物や土地の相続のため、妻・康子さんと名古屋に移住。金城市場でのイベント運営をはじめ、地域の空き家物件と入居希望者とをつなぐ活動をおこなっています。
おふたりは東京から移住されたんですよね
孝夫さん:祖父母がこの界隈(名古屋市北区)で所有していた土地や建物を、引き継ぐことになったのがきっかけです。ただ、現状だと放置されているだけなので、固定資産税がかかるばかり。いろいろ考えて、「入居者に空き家をうまく活用してもらうことで、地域が賑やかになったらいいな」というのが金城市場再生の始まりです。
受け継いだ当時、金城市場はどのような状態だったのですか?
孝夫さん:87歳のご主人が営業している「平野精肉店」以外、真っ暗だったんです。スマホの電気をつけてみると、市場で使われていた当時の陳列棚がそのまま残っているのが見えて、怖かった…。
康子さん:途方にくれましたよ。
トタンのサビが創業から70年の時を感じさせます。
最後の1店舗として営業を続けていた「平野精肉店」は2025年5月に閉店。
ガラスケースはそのまま残され、中にはレコードがディスプレイ。
片付けはおふたりで?
孝夫:最初は2人だけで少しずつ片付けを始めました。片付けと並行して着手したのが、地域の空き家物件MAP「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」(以下 LOOK BOOK)の制作です。
康子さん:我々が所有する空き家を知ってもらうため、空き家を手書きMAPに落とし込み、コンビニのコピー機で印刷して冊子にしたんです。
孝夫さん:金城市場のことも「今すぐキレイにすれば使えますよ」と書いて、マルシェやイベントに持っていきました。そうしたら、興味を持ってくれる人が何人かいて「市場の中を見てみたい」という声があがったんです。
空き家物件MAP「NAGOYA AKIYA LOOK BOOK」。
康子さん:その中の1人が、金城市場と同じ通りにある『コーヒームテ』のオーナー。彼が金城市場を見学に来てくれたときに、「ここでライブを開催したい」と言ってくれました。5~6人お友達を連れてきてくれて、何日かかけて片付けをしました。
孝夫さん:ようやくイベントできそうなスペースが確保できて、「試しにやってみるか」と2~3店舗飲食店を入れて音楽ライブを開催したのが2022年の秋。来てくれた人たちは、「こういう場所がどこにもないから面白いね」と言ってくれました。
むき出しになった天井がオシャレ!
金城市場には個性豊かな出店者が集まっていますね
康子さん:ご近所のお店にも「引っ越してきました」とLOOK BOOKを配っていたら、鷲尾友公さんというアーティストと出会ったんです。
孝夫さん:鷲尾さんは、名古屋ストリートカルチャーの重要人物のひとりで、街をキャンバスに壁画を描き、街を活性化するという活動もおこなっていて、使われていない場所が大好きなんですよ。鷲尾さんと同時期に近くに拠点を持ち、活動を始めたことは本当に偶然なんですけど、その縁でこれまでネットワークがなかった我々にたくさんの人を紹介してくれました。金城夜市のフライヤーも手がけてくれています。
鷲尾友公さんが手がけた金城夜市のフライヤー。
何か知名度をあげるきっかけはありましたか?
孝夫さん:2023年秋に開催したライブです。突然SNSでイギリスのアーティストから「日本でツアーをするための場所を探している。ぜひ金城市場でやらせてほしい」とDMがありました。音源を聴いてみたら「なかなかいいかも」となって…。
康子さん:「やっちゃうか!」そんなノリでした。日にちが平日の木曜日と指定されていたので、人を呼ぶために飲食店を呼んで半分マルシェ、半分ライブみたいな形で開催したんです。
孝夫さん:ライブハウス運営者に相談すると、「場所も知られていないし、100人集まればいいんじゃない?」と言われたのですが、蓋を開けたら当日は大盛況!「こんな場所がほしかった」「またやってほしい」と来てくれた方々は喜んでくれました。
康子さん:このライブをきっかけにお客さんが増え出したので、2024年から毎月第4木曜日に夜市を開催することになったんです。
それで夜市は木曜開催なんですね
康子さん:2024年は夜市を毎月開催したんですけど、毎回テーマを決めて出店者さんに声をかけたり飾り付けを変えたり、いろいろ考えることもたくさんあって…
孝夫さん:企画運営で忙殺されてしまったので、2025年は金城夜市に関しては不定期で開催することにしたんです。
康子さん:のんびりムードの朝市は、引き続き毎月第1・3水曜の10:00~14:00まで開催をしていますよ(8月は夏期休業)。
第1・3水曜に開催されている金城朝市。
野菜や植物、グルメ、ファッションまで様々なお店が並びます。
ファッションショーやプロレス、世界のご飯と雑貨など興味深いイベントばかり。内容はどうやって決めるんですか?
康子さん:私たちがやりたいことプラス、仲間たちの意見から面白いものを集約するという感じです。
孝夫さん:例えばファッションショーを開催したときは、「商店街の人たちにモデルになってもらい、レッドカーペットを歩いてもらったら面白いんじゃないか」というアイディアを取り入れました。周りの人たちもどんどん巻き込んでいます。
今後、金城市場でやりたいことはありますか?
孝夫さん:お酒と美味しい食べ物以外の、様々なジャンルのイベントを開催したいと思っています。2025年5月5日に本と街歩きのイベント「BOOK BOOK」を開催したのですが、これは本当に大成功でした!本屋がどんどん閉店していて、本と接する機会が減っていることが切ないなと思っていたので、またこういったイベントを開催したいですね。
これまで開催されたフライヤーや看板。
康子さん:金城市場近隣の空き家を探し出して大家さんに声をかけ、入居希望者とつなぐ活動もしています。このエリアは空き家が多いので、新しい個性的なお店が増えて、金城市場周りが活気づくと良いなと思っています。
孝夫さんと康子さんが足で稼いだ空き家情報を記したマップ。
空き家を通して街づくりをしたいという思いもありますか?
孝夫さん:そういった目標はないのですが、柔軟な発想で自分たちが好きなモノやコトを、空き家のポテンシャルを活かして伝えていけたらと思っています。
康子さん:その時に「絶対楽しそう!」と思ったことを全力でやる、それだけです。「こうなりたい」がないからこそ、周りの人たちも思いついたことをどんどん言って、乗ってきてくれるのかもしれないですね。
周りも巻き込んで、一緒に楽しいことがやれる場所なんですね!
康子さん:私たちがやっていることを見て、「自分もここでこんなことがやりたい!」とおっしゃる方もいます。2回開催したプロレスもそうでした。レスラーが天井にぶつかるんじゃないかとハラハラしましたが、面白かったです(笑)。
孝夫さん:ここで何かをやりたい人がもっと増えて、金城市場をみんなで作っていけたら良いですね。色々なアイディアも大募集しています!
金城市場住所愛知県名古屋市北区清水5-32-22営業時間朝市は毎月第1・第3水曜の10:00〜14:00開催
それ以外のイベントは不定期開催。詳細は金城市場Instagramにて駐車場なしアクセス地下鉄「志賀本通」駅より徒歩約7分問い合わせ金城市場InstagramのDMより
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