【八王子市】建築塗装工 阿川さん「現代の名工」に 伝統継承と後進育成に尽力
厚生労働大臣が極めて優れた技能を持つ人を称える「卓越した技能者(通称:現代の名工)」の2025年度受賞者に、犬目町で建築塗装業を営む(株)阿川美装店の阿川祐樹さん(44)が選ばれた。阿川さんは11月21日に市役所を訪問し、初宿和夫市長に受賞を報告した。
「現代の名工」は、優れた技能で労働者の福祉増進や産業の発展に寄与し、他の技能者の模範と認められる人に贈られる栄誉ある賞。阿川さんは、古くから培われてきた建築塗装の伝統的な仕上工法を継承しつつ、新しい工法についても探求心を絶やさない姿勢や技能が高く評価された。また次世代を担う後継技能者の育成にも力を注いでおり、東京都塗装工業協同組合が運営する東京都塗装高等技術専門校の塗装法講師として、学生たちに確かな技術と知識を伝え続けている。
今回の受賞について市長に報告した阿川さんは「周囲で支えてくださった皆様のおかげ。建築塗装は形に残りにくく評価されづらい分野なので、選ばれてうれしい」と話し、「今後も自身の腕を磨きながら、後進の育成指導に力を入れていきたい」と決意を語った。
業界の将来に危機感
塗装法講師として教鞭をとる阿川さんは専門校で基礎技術をしっかりと学ぶことの重要性を説き、「入社後に我流になりがちな塗装業において、基礎から学ぶ専門校の教育は後のステップアップの土台となる」と利点を強調する。
阿川さんも専門校で学んだ一人。小学3年生の時、父親が塗ったテーブルの美しさに感動したことが、同じ塗装工を目指すきっかけとなったという。「これまで父からほめられたことはなかったが、この賞をもらって初めて『おめでとう』と言われ、うれしかった」と表情をほころばせる。
近年の建築業界では改修工事が増える一方で、人手不足が深刻化している。阿川さんは「40〜50代の中間世代が少なく、若手を育成しないと建物のメンテナンスもできない時代になってしまう」と強い危機感を抱き、「後進に膨大な知識と確かな技術力をいかに伝えていくかを模索していきたい」と語った。
阿川さんは22年10月に優秀施工者国土交通大臣顕彰、24年10月に東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞、25年2月には八王子市ものづくり産業表彰を受賞している。