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日経平均株価 史上最高値を連続更新 実体経済と株価のズレ

文化放送

8月19日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、日経平均株価の史上最高値更新について意見を交わした。 

実体経済とは乖離しているから本当はみんな不安なんですよ

8月18日の東京株式市場、日経平均株価は前週末に比べて336円高い4万3714円31銭となり、8月15日に続いて2営業日連続で史上最高値を更新した。前の週に日経平均は相次いで最高値を更新していたため、週明けは上値が重くなるという見方が多くあった。相場の意外な強さに市場関係者からは驚きの声が上がったという。 

(寺島アナ)「またも日経平均が最高値を更新したということですが、田中さん、これはどうご覧になりますか?」 

(田中氏)「これは日本だけではなくて世界全体のお金の流れを見ないといけないです。すでに日本の株式市場に先行してアメリカやヨーロッパの株式市場がかなり高騰していて、そして日本、最近は中国も追随してきました。どの国にも共通して言えるのは、政策に対しての不透明感が高止まりしていることです」 

田中氏は、実体経済と投資家の感覚が乖離している、と指摘。 

(田中氏)「典型的にはトランプ関税の行方やトランプさんの政策の行方について、まだまだ世界各国の当事者の不安はぬぐえないわけです。それにも関わらず各国の株価が上がっていって、投資家たちのマインドを見ても“リスクを取ろう”という気持ちが高まっている。簡単に言うと実体経済と投資のマインドがかなり乖離している。実体経済でいうと、政策の不透明感がぬぐえないままで、日本でいえば設備投資も先行きの不透明感が増している状態にも関わらず株価だけは上がって行く、という状況ですよね」 

田中氏は、先行き不透明ななか株価が上がる背景には、二つの原因があると指摘。 

(田中氏)「一つは各国がコロナ禍やウクライナ戦争への対応で金融緩和を進めたので、いわゆる過剰流動性というのですが、世界中でマネーが溢れているイメージです。今はAIや半導体メーカーに投資家が多くのお金を注ぎ込んでいて、ヨーロッパもアメリカも日本も中国でさえも、そうした企業が株式市場を牽引しているわけです。経済全体の投資や政策は不透明なのに、AIや半導体に資金が流れ込んでいる。実態と名目がズレている状況です」 

二つめは、トランプ氏が影響しているという。 

(田中氏)「実体経済とマネーの動きを見ると、非合理的な投資環境ではないか? その背景にトランプさんの判断が影響していると思われます。トランプ氏はSNSや記者会見で非常に強い発言をするじゃないですか? 以前はトランプ関税に不安になっちゃって世界中の株価が暴落しましたが、その後はけっこう修正していきますよね? 『TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもビビってやめる)』という言葉に象徴されるように、最初に強気で言ったことをすぐ修正するから、トランプさんの言っていることに過剰に反応しなくなっている。つまり市場がアメリカの政策について合理的に判断できなくなっているんです」 

(寺島アナ)「合理的に判断できなくなっているんですか?」 

(田中氏)「“TACOだな”と思っているんですが、具体的にどうなのか誰も確信を持っていない。だから政策の不確実性は高止まりするんですよ。そういう環境では少しでも良いニュースがあると、みんなそれを好感して投資が増える現象があるんです。これは損失回避バイアスといいます。少しでも損失を回避する現象になると非合理的なほど楽観的になっちゃって、投資が盛り上がる。という状況が世界各国で見られるのでは?」 

(寺島アナ)「バイアスがかかっているんだ」 

(田中氏)「その投資の先が比較的先行きが明るいAI関係やテック関係に集中して、特定の産業にマネーが集まっていますし、実体経済とは乖離しているから本当はみんな不安なんですよ。だから専門家のなかではかなり慎重で、植田日銀も最近の物価レポートで特別コーナーを設けてにおわせていますよ。だから経済評論家や経済専門家はこの状況がいつまで続くのか心配ですよね。ちなみにシラー係数という歴史的に用いられている株価水準よりも今はだいぶ高くなっていて、世界恐慌やリーマンショックが起こる前くらいの株価水準とあまり変わらない水準まで来ちゃっているということです」 

 

〈出典〉 

日経平均株価が連日最高値更新 米欧株を猛追、24年末比の差埋める | 日本経済新聞

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