【トイレ備蓄】食べることと同様に大切な排泄。水が出ない、その時どうする?!今すぐできる防災の工夫を紹介!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「トイレ備蓄」です。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年3月21日放送)
(山田)今回は防災のお話です。3月21日の静岡新聞朝刊で「32都道府県が防災強化」という見出しの記事が載っていました。
(山本)記事では、各都道府県が防災を気にかけた予算を編成していることを紹介しています。1月1日に発生した能登半島地震の衝撃はかなり大きかったと言えると思います。最大震度7ということで、本当に滅多にない強烈な揺れの地震でした。
3月19日現在で石川県内にはまだ避難所が182カ所あり、4500人以上の方が今も体育館などの1次避難所で生活しているということです。
(山田)改めて「防災力」ということですね。
(山本)備蓄の必要性がよく言われますが、今回の地震でもまだ断水している地域が多数あります。水道が使えないと、水洗トイレも使えなくなってしまいます。かなり日常と違った状況になってしまうということを想像しながら、事前に備える必要があると、改めて皆さん実感したんじゃないかなと思います。
(山田)井戸水を開放しているところに行列ができているニュースを、本当にたくさん目にしました。
(山本)避難所には行かず、自宅が壊れずに「在宅避難」をした場合も、水道が出ない状況なら、飲料水や生活用水をどうやって手に入れるのか考えなくてはいけない。それから、食べ物が売られていない状況になったら、備蓄した食料でしばらくしのがないといけない。
もう一つ大事なのが排泄ですね。トイレは使えないし、街場だと、その辺でちょっと済ませるということができません。「排泄が嫌だから水を飲むのを我慢する」ということをすると、健康状態の悪化にもつながってしまいます。
静岡県などの行政機関も「飲食と排泄はセットで考えて」ということを強く言っています。
(山田)なるほど。
(山本)「トイレ備蓄」という言葉もあります。発災直後は、家庭のトイレも使えないし、避難所のトイレも水が流れなくて使えない状況です。まだ仮設トイレなどの準備ができていない時でも、何か食べれば、必ず排泄したくなるんですね。人間誰もがそうなので、その時にどうするかを考えて、簡易トイレや携帯用トイレを備蓄しておくということです。
携帯用トイレはいろいろと市販されていて、山登りや長距離ドライブをする方などは常備していたりします。「飲料水や食料品と同じように、トイレも備蓄しましょう」という考え方が最近強まっていますね。
(山田)あれって、使い捨てなんですか?
(山本)さまざまなタイプがありますが、簡易トイレは中の袋を取り替える形式が一般的です。地域の自主防災組織単位でも、そういったものが常備されたりしますが、自宅で使うということを考えた時には、他にもいろんな方法があります。
その一つの例として、「段ボールトイレ」を同僚記者が取材しました。
段ボールを重ねて便器の代わりに
(山本)3月15日付の静岡新聞「NEXTラボ #防災力を高めよう」では、家庭にある段ボールを使ってトイレを作る、藤枝市の講座を取材して紹介しました。
(山田)もう、自分で作ろうということなんですね。
(山本)洋式便座のような形で腰掛けて用が足せるものを、段ボールで作れるということで、記者がこの作り方を体験してきました。私は同行できなかったので、後で実際にやってみました。
簡単に作り方を説明すると、同じぐらいの大きさの段ボール箱2箱を重ねて、箱型に組み立ててガムテープで固定します。1箱だとちょっと心もとないのですが、2箱にすると強度が高まります。さらに別の段ボールを丸めて作った支柱を四隅などに取り付けて強度を高め、座れるようにする。
上側に穴を開けて、内部にビニール袋を取り付ければ、その上から用を足せます。
(山田)どうでした?
(山本)私は大間違いをしまして…。段ボールの大きさって、意外に小さいんですよ。段ボールに実際腰かけることはあまりないかもしれませんが、普段使っている便器よりも小さいものができてしまいました。だから、大きめの段ボールで作らないとダメなんだなということがまず分かりました。
(山田)作ったからこそ分かったんですよね。
(山本)そうですね。座ってみても丈夫でしたね。ただ、さすがに1カ月も2カ月も使い続けることはちょっと無理かなと感じたので、何回か使ったら新しいものにしていかないと。
(山田)これ、1回作って、座ってみるべきですね。
(山本)意外に簡単で、記事では1時間ぐらいかかったと書いてありますが、工作に長けてる人はもっと早くできる。凝って、さらに丈夫にするなどの工夫もできるんじゃないかなと思いました。
(山田)これを作って備蓄しておけばいいですね。
(山本)元々、避難所に行ってからトイレが使えず「どうしよう」と困った時に、避難所にあるもので作ることを想定しています。
支援物資が送られてきたら、その段ボール箱を再利用して作るというようなことを考えているので、作ったものをいくつも備蓄しておくわけではなく、畳んだ状態の段ボールから作るということです。
(山田)なるほど。
(山本)他の用途もあるので、段ボールを畳んだ状態で備蓄しておくのも手かなと思いましたね。
(山田)慣れないと、これで用を足せない人もいるのでは。
(山本)そこまで今回はやりませんでしたが、もし時間があったら、これで一度、用を足しておくのもいいかもしれません。
これを作っても、人のいる前ではとても利用できないので、テントを張ったり、専用の個室に置いたりすることも必要です。私の自宅ではトイレに何とか収まるほどのスペースがあるので、そこで使えるということは確認できました。
(山田)でも意外と簡単に、しっかりした強度のものができるってことですね。
発災直後、トイレで困ったという声は多い
(山田)これまでは、あまり考えてなかったですね。災害用トイレ。
(山本)結構盲点ですよね。今回の能登地震でも発災直後は「トイレで非常に困った」ということが話題になりましたが、喉元過ぎると忘れてしまうこともあります。静岡県は防災力の高い県だと思っていますが、皆さんが想像できていない部分はまだあるのかなと思います。
トイレ備蓄については、南海トラフ地震に関する県民意識調査(23年11月〜24年1月)で、県民の約65%の方が「自宅でトイレ備蓄をしている」と答えています。ただ、県によると、家庭で携帯トイレなどを備える目安は「1日5回分を1週間、家族の人数分」。そこまでたくさん用意できていると答えた人は2割程度だそうです。いま一度、備えを見直してみてはどうかなと思いました。
(山田)子どもがいると、もしかしたら子ども用のトイレも必要なのかもしれませんね。今日の勉強はこれでおしまい!