100年の伝説とロレックス
モータースポーツ界で最も過酷な挑戦のひとつである、ル・マン24時間レース。その100周年を記念し、ロレックスが誇る傑作「コスモグラフ デイトナ」の特別モデルが発表された。
textcharlie thomas
過酷な耐久レースが終わりを告げ、フェラーリAFコルセの51号車フェラーリ499Pのチーム3名（アレッサンドロ・ピエール・グイディ／ジェームス・カラド／アントニオ・ジョヴィナッツィ）が、総合優勝を果たそうとしていた。最後の瞬間が刻一刻と迫るにつれ、私は興奮が高まっていくのを感じた。この伝説的なレースで勝利すると、大観衆の前でトロフィーを掲げられるだけでなく、特別なタイムピースが贈られるのだ。
ロレックスがオフィシャルタイムピースを務め、毎年勝者にモータースポーツ界最高の賞品といえるコスモグラフ デイトナを贈っているのが、ル・マン24時間レースだ。レースが初めて開催されたのは1923年のこと。かつて、ウルフ・“ベイブ”・バルナートやサー・ヘンリー・“ティム”・バーキンが巨大なブロワーを操り、昼夜を問わず何千キロメートルも走り続けた勇姿を想像するのは難しい。1950年にはエディ・ホールというドライバーがたったひとりでレースを完走するという偉業を成し遂げており、この記録は今もなお破られていない。そんな歴史のある伝説的な耐久レースである。
ロレックスとこのレースとの関わりは、1963年に始まる（正式にオフィシャルタイムピースを務めるようになるのは2001年である）。ロレックスは、デイトナ以前の初期のクロノグラフとして、ラップタイムや、タキメーターでスピードを計測できるレーシングウォッチを製造していた。当時の広告によると、このクロノグラフは非公式にフランスのレースと結びついていた。「これが“ル・マン”と呼ばれるロレックスの新しいクロノグラフ。ベゼルにタキメーターが刻まれており、時速を簡単に読み取ることができる」。しかし、この名は定着しなかった。ロレックスはフロリダのデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催された24時間レースのスポンサーとなり、このクロノグラフに“デイトナ”の名が冠されたのだ。
デイトナはその後、幾度もモデルチェンジを繰り返すことになる。ムーブメントは初期モデルのバルジュー72とゼニスのエル・プリメロを行き来し、そして現代の自社製ムーブメントとなった。文字盤は若干異なるレタリングが施され、ベゼルはアクリル製からスティール製、そして現在はセラミック製またはゴールド製となっている。リュウズを守るクラウンガードが追加され、プッシャーはねじ込み式になった。しかし、基本的なデザインコードはほとんど変わっていない。視認性の高いこのクロノグラフは、機能性が追求された完璧なレーシングウォッチなのだ。
デイトナは俳優ポール・ニューマンにも愛され（彼は1979年のル・マン24時間レースにポルシェ935で参戦し、クラス1位、総合2位という好成績を収めている）、“エキゾチック”と呼ばれるダイヤルの、彼の名で呼ばれるモデルも存在する。また、デイトナはF1チャンピオンにとっても名誉の証である。ジェンソン・バトンはF1デビューシーズンにデイトナを購入し、モータースポーツの頂点に立つ証とした。サー・ジャッキー・スチュワートは、1971年のモナコGPで優勝したときにデイトナを贈られている。
ル・マン24時間レースで史上最多の9勝をあげ、ロレックス テスティモニーでもあるトム・クリステンセンの時計コレクションは、トロフィーキャビネットと同じくらい素晴らしい。彼はこう語った。「ル・マンでの勝利を一生誇りに思うよ。100周年の年にロレックスのデイトナを獲得することは最高に誇らしい瞬間となるだろうね」。そう、2023年の勝者はル・マン24時間レース100周年という記念すべき大会の勝者となるのだ。
実際、2023年の勝者に贈られたデイトナのケースバックには、100周年を祝して月桂冠とル・マンのロゴのエングレービングが施されている。もちろん、この時計は購入することができないが、幸運な人たちのために、ル・マン24時間レースの100周年を記念する特別なデイトナが2023年、発表された（下写真）。このモデルは18Kホワイトゴールド製で、赤く色づけされたタキメーターの「100」、クラシックなポール・ニューマンダイヤルのデイトナにインスパイアされたホワイトのインダイヤル、そして通常の12時間ではなく24時間まで計時可能な新型の「Cal.4132」を搭載している。デイトナ60周年という節目にもふさわしいタイムピースである。クリステンセンは続けてこう語る。
「このユニークなデイトナを見ると、伝説の100年をひとつのクロノグラフで見ることができる。献身とチームワークを象徴するもので、何か大きなものの一部であると感じさせてくれる。情熱、粘り強さ、パフォーマンス、完璧なラップタイム、完璧なタイミング。ル・マンは永遠に生き続けるものなんだ」
