他人のカネと部署の積立金をシレッとネコババ…東京国税局30代職員への大甘処分と発覚のきっかけ
納税者からは厳しい取り立てをしながら、ネコババを繰り返していた身内の職員には「停職」の大甘処分だ。
東京国税局は23日、窃盗罪で有罪判決を受けた30代の男性国税調査官と、職場の積立金を無断で持ち出し、5年間、勤務時間中に馬券を購入していた神奈川県内の税務署に勤務する30代の男性国税徴収官を、それぞれ停職6カ月と停職3カ月の懲戒処分とした。
まず調査官は今年8月、帰宅途中のJR京浜東北線の電車内で、網棚に置いてあった現金4万円が入ったリュックサックを乗客が寝ている隙に盗んだ。さらに同月24日にも埼玉県の自宅最寄り駅のベンチで寝ていた他人のカバンを盗もうとして、警察に逮捕された。計3件の罪に問われた調査官は今月23日、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受け、同日、辞職した。
■「やらない方が損」
内部調査に対し、「金には困っていなかったが、自由に使える金を増やすことが目的だった。盗みを繰り返すうち、やらない方が損だと思うようになった」と話しているというから、オドロキだ。
調査官が逮捕された際、知人が代表を務める法人の申告書のコピーを所持していたことから、税務情報を無許可で持ち出していたことも発覚。納税者の情報を閲覧できるシステムを使い、申告情報を出力していた。
本人は「友人から『知人が代表を務める法人が税務調査を受けた場合のポイントを説明して欲しい』という依頼を受け、内容を確認するため、部内システムで法人の情報を検索した」と、持ち出しを認めている。調査官は法人税の調査を担当し、友人と知人からプロ野球観戦や飲食など、計約7万5000円分の接待を受けていた。
一方、神奈川県の徴収官は、所属部署の職員らの積立金から計約329万円を無断で持ち出し、その大半を馬券の購入に充てていた。発覚を免れるため、持ち出しと返金を繰り返していた。
税務署内で「徴収官が積立金を持ち出して自分の口座に入金していた」という噂が広まり、上司がヒアリングを行ったが、本人は認めなかった。そこで監察官が調査を実施。2019年1月から24年9月までスマホで計1673回、馬券を購入していたことが判明し、口座には計約3900万円の入金があった。
「原資は自身の給与と親族からの借り入れ、積立金の流用です。職員は19年以降、競馬の払戻金の確定申告5年分について、提出期限を超過させています。理由は『競馬取引はトータルで損失が生じていたので、申告が必要と思っていなかった。期限後に提出した』と話しています」(東京国税局広報広聴室)
徴収官は「バレないだろうと思った。競馬で負けて手持ちがなくなったが、購入したい気持ちを抑えられず、後で返せば問題ないと思った」と話し、現在は全額返金したという。
いずれも停職処分としたことについて、東京国税局は「人事院の懲戒処分の指針を踏まえ、総合勘案した上で、この処分としています」(広報広聴室)と説明。一般企業だったら一発でアウトだ。恐るべき国税局のモラル崩壊である。