「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 その後の企業の採用活動に影響はあったのか?
東京商工リサーチ(東京都千代田区)は6月19日、企業における「退職代行」の利用実態に関する調査結果を発表した。調査の結果、退職代行業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%で、大企業は15.7%に上ることがわかった。
大企業の15.7%が退職代行による従業員の退職を経験した背景
調査によると、2024年1月以降に退職代行業者を利用した従業員がいた企業は、全体で7.2%だった。内訳は「正社員・非正規社員であった」(1.0%)、「正社員のみであった」(5.3%)、「非正規社員のみであった」(0.8%)となっている。
規模別では大企業と中小企業で大きな差が生じており、大企業15.7%(489社中、77社)に対し、中小企業6.5%(6164社中、404社)で、2倍以上の開きがあった。
同調査では、大企業の方が退職代行の利用が多い結果について、以下のように分析している。
・母数が多い
・退職手続きが整備されている
・退職による会社への影響が小さい
・退職代行を利用してもしがらみなく退職できる
退職代行を利用する心理的ハードルは低下している 20歳代が60.8%で最多
退職代行を利用した従業員の年代は、20歳代が60.8%で最多だった。次いで30歳代が26.9%、40歳代が11.0%、50歳代が6.4%、10歳代が5.0%、60歳代以上が2.8%と続いた。
20歳代と30歳代の利用が全体の87.7%を占める一方で、50歳代以上でも約1割の企業で利用が確認されており、幅広い年代に退職代行の利用が広がっている。調査では、ネットやSNSが身近なZ世代やミレニアル世代が中心となっているものの、退職代行を利用した退職の心理的ハードルは低下していると同社は指摘する。
中小企業大企業全企業10代16社 4.23%7社 9.45%23社 5.08%20代217社 57.40%58社 78.37%275社 60.84%30代109社 28.83%13社 17.56%122社 26.99%40代48社 12.69%2社 2.70%50社 11.06%50代25社 6.61%4社 5.04%29社 6.41%60代以上11社 2.91%2社 2.70%13社 2.87%回答社数378社74社452社
企業が退職代行を経験したあと、採用活動に影響はあったか?
退職代行による退職を経験した企業の多くは、その後の採用活動への影響はないと答えた(431社中、319社)。しかし、退職代行による退職を単なる個人の問題として捉えるのではなく、組織運営や人材マネジメントの見直しのきっかけとして活用する動きも見られると同社は分析している。
上司と部下の面談機会の増加、退職希望者への相談窓口の設置、労働環境の改善などの取り組みによって、入社後のミスマッチを防ぐ取り組みを導入する企業が増加しているとみられる。
この調査は、東京商工リサーチが2025年6月2日から9日にかけて、全国6653社を対象にインターネット調査で実施。資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義している。退職代行に関するアンケートは2回目。
調査結果の詳細は、同社公式ウェブサイトで公開されている。