時給換算275円の現実…障害者の手作り商品を地域と“結び”たい女性社長の思い
障害者たちが心を込めて手作りした商品をインターネットで販売する会社が札幌市内に設立されました。
障害のある就労者が直面するある問題を解決するためです。
連載「じぶんごとニュース」
色染めから裁縫まで手作業で丁寧に作られた本革のコインケースから、道産小麦で作られたひとくちサイズのクッキー。
これらの商品は「B型事業所」の障害者就労支援施設で作られ、去年9月に開設されたインターネットショップ「Omusubi(おむすび)」に出品されているものです。
サイトを運営するのは、福祉関連事業のシステムを手がける会社「プロテック」(札幌市中央区)です。
「Omusubi」という名前には、地域と福祉を「結びたい」という思いが込められていて、障害者就労支援施設の「B型事業所」が抱えるある問題を解決するために立ち上げました。
プロテックの小松麻衣社長がまず教えてくれたのはこんな思い…。
「北海道で言うと、時給換算で275円っていう工賃しかやっぱ支払えてないという状況を、どうにかしたい」
柔軟に働ける代わりに…
障害者就労支援施設には「A型」と「B型」の2種類があります。
「A型」は雇用契約を結ぶため、受け取る「給料」に最低賃金の保証があります。
一方、「B型」は雇用契約を結ばないため、障害の程度や状況に応じて仕事内容や働く日数・時間などを柔軟に決められますが、受け取るのは「工賃」と呼ばれる報酬で、最低賃金の保証はありません。
道によりますと、2022年度の道内の「B型事業所」の平均工賃は、時給換算で275円だということです。
プロテックの小松社長は「福祉システムに特化してきたなかで会計支援をしていると、収入の少なさに対して、費用の支出の多さっていうのを見てしまう」と話します。
「Omusubi」に出品している「B型事業所」のひとつ、札幌市南区の「お菓子工房ノワ」。
利用者は、施設スタッフのサポートを受けながら生地を混ぜたり袋詰めをしたりして、店頭販売用のほかネットショップ用の焼き菓子を作っていきます。
店員の1人が「すごく楽しいです。お客さんに『素敵なお店ですね』とほめていただいたときはすごくやりがいを感じる」と笑顔で教えてくれました。
このお店を運営している社会福祉法人藻岩この実会の湯澤みよさんは「Omusubi」の存在について、「親身になって私たちの施設のことも考えてくれて、1番安心して一緒にやっていける」と信頼を寄せています。
「Omusubi」ではオープンしてから3月までの7か月の間に600個以上の商品が売れました。
障害者の低賃金問題解決へ。「Omusubi」の取り組みは続きます。
プロテックの小松社長は「Omusubiを通して、障害者就労支援施設の現状を知ってもらって、品物を買ってもらえる。で、工賃が上がるっていう良い循環になることが私たちの目標です」と未来をを見据えます。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月9日)の情報に基づきます。