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「大学生の発達障害」研究者・精神科医山科満先生が厳選!発達障害の理解を多角的に深める3冊【発達ナビ・あの人の本棚から】

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「大学生の発達障害」研究者・精神科医山科満先生が厳選!発達障害の理解を多角的に深める3冊【発達ナビ・あの人の本棚から】

山科 満先生が選ぶ3冊は?

精神医学・精神分析的精神療法がご専門の山科 満先生。そんな山科先生から、「保護者の方へ」「支援に携わる方へ」「著者ご自身の作品」という3つの観点から厳選した書籍をご推薦いただきました。
精神科医・大学教授という多彩な視点から厳選した三冊は、お子さんの発達に悩むたくさんの保護者の方の参考になるはずです。

山科 満先生が選ぶ!保護者の方におすすめの1冊:『発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ』(山口真美 著)

「うちの子ってコミュニケーションが苦手なのかな?」
「なんで人の顔を見て話せないのかな?」
「とても臆病なのはなぜ?」
お子さんの発達特性が気になる保護者の方も多いと思いますが、これらはだれにだってある、ちょっとした性格のひとつなのかもしれません。

ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)などを「知覚の特性」としてとらえることで新しい理解と対応の可能性を分かりやすく解説しています。少しの間、彼らの世界に寄り添ってみませんか?

赤ちゃんの視覚研究における世界的権威が、「個性とは何なのか」を視覚発達心理学の立場から優しく解説した本です。発達に偏りのある赤ちゃんには世界がどのように見え、それゆえどんな不安に直面しているのかを、想像できるようになります。専門家にも強く勧めたい1冊です。

支援者の方におすすめの1冊:『発達障害の精神病理』(内海健、他編著)

この本は、日本の第一線で活躍する精神科医や心理学者たちが集い、相互討論ワークショップを行い、徹底した議論を通じて書き下ろした論考が収められています。単なる支援のハウツーではなく、発達障害の「精神世界」を根本から探求することで、日々向き合っているお子さんやご家族の理解を深めることができます。
1~4巻まで発刊しており、さまざまなテーマで綴られる専門家たちの議論に触れることは、支援の質を高めるためのヒントになるはずです。

全4冊に散らばる、発達障害や思春期青年期を専門としている臨床家による何本かの論考(例として本田秀夫、杉山登志郎、青木省三、黒木俊秀)が、圧倒的に読み応えがあり、臨床実践上も「頭の片隅に常に置いておきたい」内容となっています。臨床の技を教わるためには、そのベースにある考え方を学ぶ必要があるのです。

発達ナビユーザーへおすすめの自著1冊:『キャンパスにおける発達障害学生支援の新たな展開』(山科満 編著)

わが子は、大学生活をうまくやっていけるだろうか?困ったときに、誰に相談すればいいの?お子さんの大学生活に不安を感じる保護者の方も多いと思います。発達障害のある大学生が困りごとを抱えても相談機関にたどり着けない、相談機関でも進級・卒業の力にはなってもらえない、という課題を解決するために、各学部事務室に心理支援の専門職をキャンパスソーシャルワーカーとして配置し、1人ひとりの学生に寄り添いながら実効性のある支援に繋げている中央大学の革新的な取り組みを紹介しています。お子さんの将来の選択肢を考える上で、参考になる一冊です。

私の担当は20ページほどですが、大学生の発達障害を研究テーマとしてきた私が、大学生の自己理解を促進するための支援と環境調整的な支援をどう両立させていくか、という問いに直面し、答えに辿り着く過程を書かせていただきました。発達障害のある大学生に対する実効性のある支援とはどのようなものか、ご理解いただけるのではないかと思います。他の著者による論考や臨床経験もそれぞれ読み甲斐があります。

まとめ

精神科医・大学教授という専門的な視点から山科満先生が選んだ3冊は、発達障害への理解を多角的に深めるための道しるべです。当事者の世界の捉え方を想像し、支援の根幹にある考え方を学び、そして大学進学後の具体的な支援を知る。これらの本は、お子さんへの理解を一層深め、将来への具体的な希望を見出すための、心強いヒントを与えてくれるのではないでしょうか。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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