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プロ野球ドラフトで西武6位指名の龍山暖捕手…恩師が見る「強みと課題」 創部3年目の快挙、エナジック1期生15人の“功績”とは

OKITIVE

龍山と記念撮影をするチームメートや保護者ら
西武から6位指名を受け、笑顔でガッツポーズする龍山暖=10月24日、名護市瀬嵩のエナジックスポーツ(長嶺真輝撮影)

また一人、沖縄からプロ野球の世界へと羽ばたく選手が生まれた。 24日に東京都内で行われたプロ野球のドラフト会議。創部3年目ながら、ノーサイン野球を武器に今夏の高校野球沖縄大会で初の甲子園にあと一歩まで迫る準優勝を飾った新鋭校・エナジックスポーツ(以下、エナジック)の龍山暖捕手が、埼玉西武ライオンズから6位指名を受けた。ドラフト指名は、育成枠も含めて同校初。 エナジックは1年生のみ15人から歴史をスタートさせた。その1期生の一人が、極めて狭き門であるドラフトの支配下指名を受けたことは、まごうことなき快挙である。 名護市瀬嵩の校舎(旧名護市立久志小学校跡地)で野球部の仲間たちと指名を待った龍山も「1期生でプロ選手が誕生するというのは自分も聞いたことがない。僕が指名されたことでエナジックが有名になれば嬉しいです」と笑みを浮かべていた。 同校として、まだ甲子園の土を踏んだことはないが、今回の指名が全国にその名を轟かせたことは間違いない。中学世代の有力選手が進路の選択肢の一つに入れる効果も期待できるだろう。 歴史の浅い学校から、なぜドラフト指名選手を生み出すことができたのか。そして、龍山の強みや今後の課題は何なのか。 26日に大分県で開幕する秋季九州地区大会に出場するため、24日のドラフト会議を龍山と共に校舎で見守ることはできなかった恩師の神谷嘉宗監督が、歓喜の夜から一夜明けた25日午前、筆者の電話インタビューに応じた。

ノーサイン野球での気付き「絶対にプロで生きる」

エナジックでノーサイン野球を主導する神谷嘉宗監督

24日の指名後の記者会見で、龍山は神谷監督について、親しみを込めて「おじいちゃんみたいな感じ」と言い、詰め掛けたメディアから笑いを誘っていた。神谷監督への電話取材で、まず初めに指名の受け止めを聞くと、まさに「おじいちゃん」のような親心満載のコメントが返ってきた。 「非常に良かったなと思いますね。指名されることを期待して待ってはいましたが、少し心配もありました。本人もまわりも期待しているし、マスコミもいっぱい取材に来てる。それで指名にかからなかったら、かわいそうじゃないですか。それだけが一番の心配でしたね」 ただ神谷監督も、龍山が支配下指名を受けるだけの力は持っていると評価していたようだ。「身体能力が高いので、肩の強さと足の速さ、バットを振る力がある。特に肩と足の部分は教えてすぐにできるものでもないので、指名されるだけのポテンシャルはあると思っていました」と言う。 龍山の最大の強みである肩の強さは、2塁送球タイムが全国でも世代屈指の1.8秒。50m走も6.2秒と俊足だ。高校No.1捕手と称され、今夏のU18アジア選手権で日本代表のマスクを被った健大高崎(群馬県)の箱山遥人がまさかの指名漏れしたことからも、いかに龍山の評価が高いかが分かる。 そしてもう一つ、龍山が高校で磨いた武器がある。自ら考え、プレーを選択し続けることが求められるノーサイン野球で培った観察眼である。 龍山が「相手の隙を探し、それに気付くことができる習慣ができました。プロの試合を見てても帰塁の時に目を切ってるランナーもいて、『これ刺せるな』と思うこともあります。そこは自分の一番大きな武器だし、プロでも生かされると思います」と語れば、神谷監督も「それはあるよね」と言い、こう続けた。 「いつも練習でのバントゲームで、キャッチャーの送球とか視野を広げる訓練はしています。ノーサイン野球は攻撃で相手の隙を突くけど、守備でもその訓練をするから、両方が鍛えられる。選手たちが自分で考えることで、プレーの中でいろんな『気付き』があるから、瞬間的に体が反応する。これはプロでも絶対に生きてくると思いますね」  強肩、走力、打力に加え、「扇の要」と称されるキャッチャーに強く求められる観察眼を高校の3年間で養った龍山。一流選手がしのぎを削るプロの世界で、さらに武器を磨きたい。

優先事項は連戦に耐えられる「体づくり」

ドラフト指名を受け、チームメートから胴上げされる龍山

一方で、課題もある。神谷監督はその一つに「体力」を挙げる。プロはレギュラーシーズンだけで143試合を戦う。「プロは連戦、連戦だから、まずは体力をつけ、強い体をつくらないといけない」と指摘する。 龍山自身はミート力など打撃の部分を課題としていたが、神谷監督はそれも含め、体づくりを優先事項に挙げた。「打撃も一朝一夕で成長するものではありませんが、プロのコーチの指導の下で鍛えていけば伸びていくと思います。ただ、そのためにも、やっぱり基本は体を強くすることです。強い打撃に耐えられる体をつくらないといけない。怪我をしないためにも、それが大事ですね」と続ける。 身体能力が高いとはいえ、身長175cm、体重78kgとプロの世界では決して体が大きいとは言えない龍山。自身がよく動画を見るという170cmの甲斐拓也(福岡ソフトバンクホークス)のように、小柄でも一線で活躍するためには、恩師の言う「体づくり」は喫緊の課題だろう。

「野球と勉学」で道筋をつくった1期生たち

龍山と記念撮影をするチームメートや保護者ら

創部3年目にして突如頭角を表し、県大会で好成績を残す度に「どんな学校なの?」と全国の高校野球ファンから注目を集めたエナジック。ただ、校名に「スポーツ」と入っていることもあり、勉強をおろそかにしているというイメージを持たれることも多い。 しかし実際は、午前中に普通科目などの授業を行い、毎朝のホームルーム前には20分間の英語学習がある。資格取得にも力を入れており、1期生の3年生は情報処理やパワーポイントなどの検定で合格。簿記資格の取得にも取り組む。龍山もカリキュラムについて「商業系と体育科のミックスのような感じ。勉強面も問題ありません」と話していた。 公立高校の教員時代から資格取得などを推奨し、現在エナジックで副学院長を兼任する神谷監督は、野球と勉学の両面で成果を残した1期生全員の功績を讃える。 「この1年ぐらいで『エナジックって何?』といろんなところで注目され始め、『勉強もしないで』と勘違いされることもありましたが、それもまだまだ学校が認知されていないことの証明です。しかし、1期生の15人は一生懸命でチームワークも良く、みんな資格も取得してくれました。こういうことを積み重ねていけば、まわりも少しずつ分かってくれる。本当によく頑張ってくれました」 創部3年目にして、ドラフト指名選手の輩出という極めて高いハードルをクリアしたエナジック。これからプロの世界に挑む龍山が活躍すれば、より注目を集めることは間違いない。 取材の最後に龍山へのエールのコメントを求めると、神谷監督は「まずは怪我をしないように、地道にやっていけば道は開ける。頑張ってほしいなと思います」と熱い言葉を口にした。

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