4つの視点で見る気候変動と防災 〜ジェンダーの目線を忘れずに〜
視点①アナウンサーの立場から~以前はなかった「命を守るための行動を」という呼びかけ
2013年に気象庁が特別警報の運用を開始しました。特別警報は、大雨や大雪、暴風、暴風雪などによる重大な災害が起こる恐れがある時に発表されますが、テレビでは「数十年に1度しかないような非常に危険な状況です。命を守るための行動をしてください」と呼びかけるようになりました。この呼びかけは、20年前にはなかったものです。
ANN系列(テレビ朝日系列)のアナウンサーで勉強会を開き、より良い伝え方について議論し学んでいます。どんな言葉を使って、どのような声のトーンで伝えたら、「行動に移そう、避難しよう」と思ってもらえるのか。過去の災害からの教訓をいかして伝え方も日々研究しています。
視点②防災士の立場から いざという時に機能する防災備蓄の考え方
携帯トイレ、いくつ用意したらいいの・・・?
防災士の知識を活用して、地域の皆さんに防災に役立つ情報を伝える「防災おはなし隊」という活動をしています。子どもにも分かりやすいようにオリジナルの紙芝居を作って、イベントなどで自然災害への注意喚起や備えの大切さを伝えています。
例えば携帯トイレはいくつ用意したらいいのかご存知ですか?
1日の排泄回数は個人差もありますが5回ほどと言われ、NPO法人日本防災士会では防災備蓄は「7日分」を推奨しています。
単純計算すると1週間で1人35回分、2人家族だと70回分、4人家族だと140回分・・・!140個用意するのは、なかなか大変と思う方もいるかもしれません。実は、代用できるいいモノがあるんです。
私は「ペット用のトイレシート」を紹介しています。ペットシートをポリ袋に入れ、その上に新聞紙などをちぎって入れると汚物も目立ちません。バケツやトイレにセットして使うことができます。ペットシートは吸水性・防臭性が非常に高いという特徴もあります。ホームセンターやドラッグストアで100枚入りなどで売られていて、1枚あたり3~7円とコスパもいいんです。ペットを飼っていない方も、いざという時のために用意されてみてはいかがでしょう。
毎日使っているものを災害時に活用する「フェイズフリー」
フェイズフリーという考え方も、皆さんに伝えています。
災害時と日常時の境目(フェイズ)を無くす(フリー)という意味で、普段使えるものを、いざという時に使えるように準備しておくということです。
例えば普段からよく利用する缶詰やカップ麺、レトルト食品などをストックしておき、使ったら買い足す。これなら無理なく継続できると思います。
災害時用に準備したものは、しまい込みがちになり、いざという時に「使えない」「使い方がわからない」ということも起こります。食べ物も、いざ食べてみたら「口に合わなかった」ということも・・・。日頃食べているものなら安心ですよね。
また、出かける時にはカバンの中に飴やチョコレートなど、お腹を軽く満たせるものを入れておくといいでしょう。ウェットティッシュや冬場ならカイロ、赤ちゃんがいる場合はオムツを余分に持ち、お子さんが好きな小さなおもちゃなどをカバンに入れておくと、災害や突然の出来事の時にも使うことができますよ。大雨や雪、地震などで交通に影響が出るなど、バスや電車の中で長時間過ごさなければいけない時に役立ちます。
視点③親の立場から 通学路、一時避難できる場所を親子で確認
大雪や雨による交通障害などの時にどう行動するか?
特に子どもが一人でいる時や通学時が心配ですね。そこで進級したタイミングなどに通学路上で一時避難できる場所はどこか?一緒に通学路を歩き、確認しています。例えば「ここにお店があるから、いざという時は助けを求めよう」というように子どもと実際に中に入って見せながら伝えています。また地下鉄に乗っていた場合は周りの大人に助けを求めながら行動できるように、ということも日頃から会話にするようにしています。
周囲の人と助け合うという点では、町内会はとても大切だと感じています。地域のお祭りや行事などには積極的に参加すると、地域の顔見知りが増えていきますよね。ここにお年寄りの方が住んでるなとか、いざという時にお互いに声かけができるように、小さな単位で助け合える体制をつくっておくことも大切だと思います。
視点④ジェンダーギャップに取り組む立場から 気候変動とジェンダー課題、実は関係あるんです
気候変動とジェンダー平等課題って関係あるの?と思われるかもしれませんが、社会構造の中に根深くあるジェンダー課題は、気候変動とも密接な関係があるんです。
子どもたちと同様に、女性が自然災害などで被害を受けやすいことは世界各地の事例や研究でも明らかです。そしてその原因として指摘されるのが「女性という性別による結果」ではなく「社会や経済、政治的に形成されたジェンダーの構造や格差」だと言われています。
例えば、災害時に女性は子どもや高齢者をケアする立場にいるため避難が遅れる。また、食料や水の不足など不便を強いられるストレスのはけ口が、DVなど女性に向かうケースが増える、といったことも指摘されています。
防災や避難所運営に、もっと女性の声を
避難生活では男女共にトイレの問題が出てきますが、特に女性は衛生面を気にしてトイレに行く回数を減らす傾向にあります。そのため水を飲む回数が減って体調を崩す、あるいはエコノミークラス症候群になりやすいといった事例が多くあります。
こうしたことも理解した上での避難所運営が求められますが、防災担当に女性が参画している例が少ないというのが全国的な現状です。一方で札幌市など、女性の参画を推進する自治体もあり、その動きが進んで女性がもっと防災や避難所運営に関われる環境が整うといいなと思っています。
社会のしくみを変えるのは個人レベルのアクションからだと思います。
その中で忘れていただきたくないのがジェンダーの視点です。
ジェンダー課題のことも頭の隅に置きながら、環境やまちづくりに対して自分ができることを一つひとつ積み重ねていけたらいいなと感じます。
【森さやかアナウンサー・インタビュー動画公開中】
https://youtu.be/JLHa-SA1FSY
『ゼロカーボン都市さっぽろ情報発信WEB』
原田雅彦さん、高梨沙羅さんをはじめとしたトップアスリートや、各分野の専門家や有識者、そしてHTBの森さやかアナなどが、それぞれの視点で「ゼロカーボンシティ」の実現に向けて、私たちが実践できる地球に優しいライフスタイルを提案しています!
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