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抗がん剤治療で気づいた、小さな「おいしい」に涙した日【和歌山県和歌山市】

ローカリティ!

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2024年の秋、乳がんを告知され、それからの日々は揺れ動く気持ちとの向き合いの連続でした。

前回の記事では、乳がんの告知から手術にいたるまでの心の動き、そして「胸がなくても生きていける」という思いにたどり着いた瞬間をつづりました。

今回は、そのあとに始まった抗がん剤治療のこと。

「治療はつらい」——そう思っていた私が、たった一杯のコーヒーに涙した日のことを、お伝えしたいと思います。

「味がしない…」大好きなコーヒーの味がわからない

抗がん剤治療(ddAC療法)が始まった日。治療室の天井を見上げながら、点滴がゆっくりと体に入っていくのを感じていました。

この薬が、私の体の中の「がん細胞」と戦ってくれている。そう頭ではわかっていても不安と緊張で胸の奥がじんわりと冷たくなるような、そんな気持ちでした。

すぐに、味覚に異変が出始めました。

水がまずい。コーヒーも、なんだか薬のような味。
「うそでしょ…」
大好きなコーヒーの味がわからないというのは思っていた以上にこたえました。

コーヒーを「おいしい」と思えた朝

治療から1週間ほどたったある朝。いつものように、おそるおそるコーヒーを口にしました。

すると…

「あれ…おいしい…?」

ほんの一口だったのに、目が熱くなって、涙があふれました。

大げさかもしれないけれど、「味が戻った」というだけで、こんなにも幸せを感じた自分にびっくりしました。それまで当たり前だった「おいしい」という感覚が、奇跡みたいに感じた瞬間でした。

吐き気とだるさ。でも私はひとりじゃなかった

抗がん剤治療には、だるさや吐き気といった副作用もあります。治療のあとの数日間は、体が鉛のように重く、ちょっとした移動や家事でもぐったりしてしまう。

でも、通院のたびに病院のスタッフさんたちが、優しく「体調どう?」「ご飯食べれてる?」とこまめに声をかけてくれます。

そのひとつひとつの言葉や行動が、体だけじゃなく心にも効いていたんです。
「私、ひとりじゃないんだな」って、感じられました。

副作用が消えていく期間は、“生きてる”ことを実感する時間

だるさや吐き気は、1週間ほどたつと、すーっと抜けていきます。
体が軽くなると、心も晴れやかになっていく。

それだけで、「生きてる」って感じられました。

朝、日差しを感じて「気持ちいいな」と思える。白ごはんの匂いに「おなかすいたな」と思える。そのすべてが、もう一度取り戻した「日常」でした。

「健康」って、“できることがある”ということ

抗がん剤治療を受けて感じたのは、健康とは、何も起きていないことじゃない。「できることがある」ことがすでに尊いということでした。

味がする。
歩ける。
笑える。

そんな「小さなこと」が、どれだけ大きな喜びだったか、今ではわかります。

最後に:治療中のあなたへ、健康なあなたへ

もし今、同じように抗がん剤治療と向き合っている方がいたら——

きっと、今つらい時期かもしれません。でも、その先には、「おいしい」「気持ちいい」「ありがたい」と思える日々がちゃんとあります。

そして、今健康に過ごしているあなたへ。何気ない毎日のなかに、たくさんの「ありがたい」があることを、どうか忘れないでください。

私はこれからも、そんな小さな感動をひとつずつ大事にして、「生きている喜び」を味わっていこうと思います。

※画像は、執筆者のイメージをもとにAIで生成されたものです。

情報

前回の記事:「お母さん、胸がなくても生きられるんだね」手術を受けた私が母にかけた言葉。https://thelocality.net/wakayama-breastcancer-story/

久松公代

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