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井川蒸溜所・初シングルモルト「フローラ2024」ついにお披露目 南アルプスの豊かな自然を表現【葵区】

テレしずWasabee

テレしずWasabee わさびー

静岡市葵区で「井川蒸溜所」の新商品発表会がありました。井川蒸溜所は、南アルプスの標高1200mの地で2020年からウイスキーをつくっています。お披露目されたのは、初めてのシングルモルトウイスキーで、11月中旬に発売されます。

静岡駅から車で約4時間! 日本一標高の高い蒸溜所

いま、世界中でウイスキーブームが巻き起こっています。ウイスキーをつくる蒸溜所も国内外でどんどん増えていて、2024年10月時点での国内のウイスキー蒸留所数は110以上。 

井川蒸溜所 ウイスキー熟成庫

県内にはキリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所(御殿場市)、ガイアフロー静岡蒸溜所(静岡市葵区)、Distillery Water Dragon(三島市)、富士かぐや蒸留所(富士市)、そして井川蒸溜所の5つがあります。

井川蒸溜所は、特種東海製紙グループの「十山」が開所しました。十山は、南アルプスの大井川源流部に2万4430ヘクタールという広大な社有林を有しています。

井川蒸溜所(静岡市葵区田代)

どれくらいの広さなのか、想像もつきませんよね。JR山手線で囲まれる面積の約4倍に相当するそうです。この社有林には、赤石岳など3000mを超える山が10峰があり、これが社名「十山」の由来となっています。

井川蒸溜所も社有林の一画にあり、その標高は1200m。日本一標高の高い蒸留所となります。ちみなに、静岡駅からは車で約4時間! 途中からは一般車両の通行が規制された林道を通ります。

近くの湧水を使ってウイスキーを製造

残念ながら筆者は井川蒸溜所未訪問なのですが、実際に現地を訪れた知人によると、「途中は車がかなり揺れた。携帯電話が圏外になる箇所もあった」とのこと。まさに秘境です。

初シングルモルト「フローラ2024」

井川蒸溜所 新商品発表会

井川蒸溜所でウイスキーの製造がスタートしたのは2020年です。

開所から4年、10月15日に行われた新商品発表会では、初となるシングルモルトウイスキー「井川蒸溜所 シングルモルト デッサンシリーズ フローラ2024」(以下「フローラ2024」)がお披露目されました。

「ウイスキーをつくりはじめたのが2020年。それから4年後の2024年になぜ「初」となるウイスキーがリリースされるの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。

井川蒸溜所・瀬戸泰栄 所長

ウイスキーの本場スコットランドでは、オークのたるで3年以上熟成させないと「スコッチウイスキー」と名乗ることができません(ほかにもいろいろな決まりがありますが、ここでは割愛します)。

これにならい、日本洋酒酒造組合はジャパニーズウイスキーの要件の一つに、「木製たるに詰めて3年以上日本国内において貯蔵すること」を掲げています。井川蒸溜所をはじめとする国内の多くの蒸溜所がこの要件を守っており、「フローラ2024」は井川蒸溜所がウイスキーとして初めてリリースする商品となるわけです。

県内の酒業関係者など90人近くが参加

新商品発表では、井川蒸溜所の説明、主催者のあいさつのあと、新商品の紹介が行われました。

まず目を引いたのが、「フローラ2024」のラベルに繊細なタッチで描かれた植物です。

ラベルは静岡県在住のボタニカルアーティスト・藤森 有規子さん(画像提供:十山)

これは「タカネマンテマ」といい、南アルプスの限られたエリアにだけ生育する希少な高山植物です。

スイカのような袋状のガクが個性的な植物で、夏になると袋の先に小さな紫色の花をつけます。

タカネマンテマ

井川蒸溜所はこれを皮切りに、デッサンシリーズとして「フローラ(Flora)」と「ファウナ(Fauna)」2系統のシングルモルトをリリースする予定です。

フローラは英語で「植物相」、ファウナは「動物相」という意味です。

井川蒸溜所が位置する南アルプスの社有林には、さまざまな生物が生息しています。

希少な高山植物や動物。デッサンシリーズは、南アルプスのこの豊かな生態系をウイスキーで表現するシリーズというわけですね。

いざ「フローラ2024」をテイスティング!

新商品発表では、テイスティングタイムもありました。

「フローラ2024」はノンピートタイプのモルト(大麦麦芽)を使い、バーボンのたるで熟成した原酒のみをブレンドしています。

左からニューポット2本・ファウナ2025試作品・フローラ2024

さっそくテイスティングしてみます。グラスを傾けると、甘く華やかな香りが広がります。

飲むと真っ先に感じるのは甘みです。けれど、清涼感とかすかな苦味もあります。端的にいえば、「おいしい!」。このひと言につきます。

当日は、ニューポット2種類に「ファウナ2025」のプロトタイプのテイスティングもできました。ニューポットは、たるに詰めて熟成する前の透明なお酒のことです(この段階では「ウイスキー」とは呼べないのです)。

ウイスキーの香りや味はそのほとんどがたるで熟成する過程で獲得されるといわれます。ニューポットと「フローラ2024」を飲み比べると、たる熟成による風味の変化がわかり、とても面白かったです。

「ファウナ2025」と「フローラ2024」の大きな違いは、モルトのタイプにあります。

ピートとは植物が長い年月をかけて泥炭化したもので、スコットランドではモルトを乾燥させる際の燃料として使われます。ピートを使うと、モルトに独特のスモーキーな風味がつきます。

前述のとおり、「フローラ2024」のモルトはノンピートです。

一方の「ファウナ2025」のモルトはピートタイプ。そのため、香りも味も第一印象は「スモーキー」です。けれど、そのすぐあとを甘さが追いかけてきます。こちらもやはり、「おいしい!」のひと言につきます。

ちなみに、ファウナのラベルは南アルプスに生息する雷鳥です。

「フローラ2024」は11月中旬、「ファウナ2025」は2025年5月に発売される予定です。

価格はフローラ2024が1万6500円、ファウナが1万9800円。それぞれ約6000本の限定販売です。

酒販売店で販売されるほか、バーをはじめとする飲食店で扱われます。見かけたら、ぜひ一度、味わってみてはいかがでしょうか。

取材/小川結子

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