【佐内正史さんの写真展「展対照 第二部」】 個展で佐内さんに出会う。「自分の撮る写真は『出会い』」
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は東京都渋谷区のギャラリー「Vacant/Centre」で開かれている写真家佐内正史さん(静岡市出身)の個展「展対照 第二部」を題材に。
2024年10月発刊(奥付表記)の最新写真集「写真がいってかえってきた」を中心に、「ARCA」(2008年)「パイロン」(2011年)からセレクトされた約30点が並ぶ。
2023年夏に静岡市美術館で開かれた「静岡詩」は、県内の風物を撮影した約40点にある種の「記名性」が生じていた。「故郷を撮る」というコンセプトのプロジェクトだったし、見に来る側も静岡県民が多く「ああ、あの場所」と特定できる作品が多かった。
しかし、今回展の作品は、どこのどんな街のどんな風景なのか、まるで判別が付かない。考えてみれば、こちらの方が佐内さんの本質なのだ。作品を見ていたら、何と本人が会場を訪れた。
被写体の話を振ったら「場所を撮っているんじゃない。写真を撮っているんです」。さっそく鋭い言葉。そのままいくつか問いをぶつけた。取材は1年半ぶりだ。
-今回の出品作はどうやって選んだんですか。
佐内:ここ3年ぐらいにプリントしたものです。プリントした順番に並んでいる。1996年、2001年に撮影したものも入っています。(写真のセレクトは)場所(Vacant/Centre)ありきなんですよね。この場所の展示でもあるから。
-何か意識したことはありますか。
佐内:楽しい感じにしたかったんですよ。来年再来年は楽しくなるって、ラジオでそう言っていたから。見たり聞いたり、目に入ったり友達と話したりしたことに影響を受けやすいんですよね。
-撮影時もそうしたことはあるんですか。
佐内:自分の撮る写真は「出会い」だと思っています。友達との会話の中で風景が寄ってくることもある。でも、撮っているときに撮りたくなった理由は考えない。あとで「ああそうかな」と思ったりはするけれど。
-写真は「考えて撮るものじゃない」と以前もおっしゃっていました。
佐内:油絵を描くなら何日でもそこにいる必要があるかもしれないけれど、写真ですからね。シャッターをバチッと押す時間は考えてなんかいられないですよ。「出会う」ことの方が大事ですから。
2023年夏のインタビューで、自らの写真について「あれこれ考えずにただ単純にシャッターを押すものであってほしい」と話していた。今回の対話でも、写真に対する哲学に変わりはなかった。佐内さんは「見たままを切り取る」という誰もができそうでできないことをずっと続けている。
(は)
<DATA>
■Vacant/Centre「佐内正史個展『展対照 第二部』」
住所:東京都渋谷区元代々木町27-6
開廊:午後1時~午後6時(火、水、木曜休館)※観覧無料
会期:3月10日(月)まで