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昭和歌謡リバイバルの先駆け【小島麻由美 インタビュー】① 今こそ聴くべき30周年ベスト!

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2025年10月15日 小島麻由美のベストアルバム「小島麻由美グラフィティ〜30th Anniversary Best〜」発売日

高校時代にふと耳にしたローズマリー・クルーニーの音楽でアメリカン50'sの虜になった小島麻由美。処女作「真夏の海」のデモテープがレコード会社に認められ、1995年7月21日にシングル「結婚相談所」でメジャーデビュー。2025年7月に30周年を迎え、10月15日にはポニーキャニオン時代に発表した楽曲を収録したベストアルバム『小島麻由美グラフィティ〜30th Anniversary Best〜』がリリースされた。

今回、ベストアルバムの発売を記念して取材を申し込んだのだが、音楽的なインタビューというより、美味しいコーヒーを飲みながら世間話をしているような、そんなゆったりとした時間になった。前篇ではメジャーデビュー前のエピソードや、デビュー直後のエピソードを中心に伺った。

「真夏の海」のデモテープが認められてデビュー


―― 小島さんがプロのアーティストになろうと決意したのはいつ頃だったんですか。

小島麻由美(以下:小島):17歳の時です。高校の進路相談の時に “シンガーソングライターになる” って言ったんです(笑)。家族みんなに頭がおかしくなったんじゃないかって心配されましたが、先生からは特に反応がなくて、“ああ、はい” みたいな感じで真剣にとり合ってくれなかったかな。

―― 中野の丸井の楽器店に行って、いきなり機材を買ってデモテープを作ったんですよね。

小島:シンガーソングライターになりたいと言っても、デモテープがなきゃ何も始まらないと思って、YAMAHAのコーナーに行って結構高い機材一式揃えたんです。でも接続方法がよくわからなくて、楽器屋の人が家に来てくれて全部接続してもらいました。おばあちゃんが楽器屋の人に “お世話になりました” ってチップ渡してました(笑)。

―― 小島さんのプロフィールには、「真夏の海」のデモテープが認められてデビューをしたと書いてあるじゃないですか。ポニーキャニオン以外にもテープを送っていたんですか。

小島:そうです、10社くらいに送りました。「真夏の海」は最初に出来た曲だったので嬉しくて、デモをカセットテープにダビングして、雑誌に載っていたレコード会社一覧表みたいのを見て片っ端から送りました。

―― ポニーキャニオン以外からも声がかかったんですか。

小島:何社からか連絡が来ました。ソニーとかワーナーの新人開発からも声がかかりました。

―― やはりレコード会社というのは、天才を放っておかないんですね。

小島:ソニーの新人開発で知り合った人と交流があったんですけど、そういう人たちは先にどんどんデビューが決まっていくので、その中でも私はデビューが遅い方だったと思います。

―― ポニーキャニオンに決めたのは何か決め手のようなものがあったんですか。

小島:直感で、ポニーキャニオンにしようと思った。♪カンカンカンカンと鐘が鳴ったような感じで(笑)

――(笑)そういう直感ってたいてい正しかったりしますよね。

小島:他社からもデビューの話が決まりかけていたんですけど、ポニーキャニオンから、デビューに向けてデモテープを作るので、もう他の会社とは付き合わないでと言われて契約をすることになったんです。そこからデビューするまで1年半くらいかかったんですけどね。

キャンペーンは苦手でした


―― デビュー当時のことは今でも覚えていますか。

小島:最近のことより、デビュー当時のことの方がよく覚えているかもしれません。

―― デビューの頃はやはりキャンペーンが多かったですか。

小島:発売の1か月前から全国を回るんです。ポニーキャニオンの営業所が全国にあって、行くと接待してくれるの、美味しいものをご馳走してくれたり。

―― じゃ、キャンペーンはあまり嫌じゃなかった?

小島:苦手でした(笑)。美味しいものを食べさせてもらって、楽しいことは楽しいですけど。人に会って自分の作品を説明しなきゃいけないじゃないですか、聴きどころとか。そこまで気の利いたことを話せないんですよね。

―― 小島さんは自分の音楽についてそんな語るタイプじゃないですもんね。

小島:そうなんですよ、音楽を聴きこんで知識があるわけじゃないから、辛くなっちゃうんです。

―― それは、小島さんが天才だからだと思いますよ。天才に理屈は必要ないというか。でもキャンペーンは回らなきゃいけないですもんね。

小島:そうなの、宣伝だもんね(笑)。広めようとしてくれているわけだから。

―― 当時は今よりも雑誌やラジオ局のプロモーションが多かったでしょうから大変だったと思います。

小島:上手く説明して表現できる人は楽しいかもしれないけど、私は全然ダメでした。まだ若いしね。向こう側が100%受け入れてくれるわけじゃないでしょ。そういうのはすぐわかるの。それがわかると自分から心を閉ざしちゃう(笑)。デビューした頃は22歳だし、相手の方は30代とか40代なので、上から “これはどうなの?” とか訊かれちゃうと委縮しちゃうんです。

やりたいことが表現できた「セシルのブルース」


―― 小島さんがデビューした1995年は、CDバブルの真っ最中で音楽業界がすごく潤っていた時代でした。

小島:レコーディング中に “これが売れたらビルが建っちゃうかな” と、いつも冗談言いながらみんなで盛り上がっていましたからね(笑)

―― 小島さんは他のどのアーティストとも比較できないくらい、個性あふれた印象がありました。

小島:改めて振り返ってみると、多分、私の中で変えられないものが残って、それが個性になっていったんだろうなということを感じます。例えば、英語が苦手だとか、どうしてもオシャレな雰囲気にならないとかね(笑)

―― 英語が面倒くさくて日本語で詞を書くようになったというのは有名なエピソードですけど。

小島:パッと聞いてわかる日本語が好きなんですよね。

―― メロディーに日本語を乗せる作業は、アーティストのみなさんが苦労していると思いますが、小島さんの作詞もやはり響き優先ですか。

小島:響き優先ですね。響きばっかり優先にして、つじつまの合わない歌詞だとそれは困っちゃいますけどね(笑)

―― デビューアルバムの『セシルのブルース』は、小島さん自身がそれまで頭の中で思い描いていた世界が、きちんと形になったという実感はあったんですか。

小島:ありました。ビッグバンド・ジャズみたいなことがやりたいなとか、映画音楽みたいなことがやりたいなというのがずっとあったので、それは全部表現できましたね。

―― 小島さんの音楽は、今考えてみるととても贅沢な構成だったと思います。

小島:すごくお金をかけてもらいましたよ。今だったら考えられない(笑)。1990年代の音楽ってすごく贅沢ですよね。

―― 小島さんといえば、ジャケットの女の子のイラストも有名ですけど、絵を描くことは昔から好きだったんですか。

小島:絵を描くのは好きでしたね。

―― そちら方面に行きたいという願望はなかったんですか。イラストレーターとか漫画家とか。

小島:…ないですね。そこまで上手くないでしょ(笑)。やっぱり歌を歌う方が好きだったのかな。

ASA-CHANGは私にとってかけがえのないメンバー


―― 小島さんのデビューのきっかけは「真夏の海」でしたが、デビュー曲にならなかったのには何か理由があったんですか。

小島:その後に、「結婚相談所」とか「セシルのブルース」とかを作ることになるんですけど、そういう曲と並べると「真夏の海」だけなんか浮いて聴こえてきちゃって。レコーディングしても昭和歌謡寄りというか、ジャジーな感じにならないわけですよ。それでファーストアルバムには入れませんでした。

―― 小島さんはデビュー当時から作詞、作曲だけでなく編曲も手がけていますが、小島さんのアレンジはどんな感じで行われているんでしょうか。

小島:一番強い形でアレンジをしたのはファーストアルバムで、そのあとはミュージシャンとセッションしながら形にしていくことが多かったですね。ギターの塚本功さんに、アドバイスをもらいながら作り上げていくことも多いです。私がわりと漠然とした言葉で説明しても、きちんとわかってくれるので。

―― もうこのチームでしか成立しないアレンジ方法ですよね。

小島:適当ですね。緩い感じだけどわかってくれている感じがめちゃくちゃやりやすいというか。 “コードがないと嫌なんだよね” というようなことをいう人は誰もいないし(笑)。セカンドアルバムの『二十歳の恋』からはASA-CHANGも入って、ミュージシャンも固定になってきて、すごくやりやすくなりました。特に塚本さんと、ASA-CHANGは私にとってかけがえのないメンバーです。

―ー 明日掲載予定のインタビュー後編では、今年の7月に行われたワンマンライブのことや、発売されたベストアルバムについて語っていただきました。

Information
小島麻由美グラフィティ〜30th Anniversary Best〜

▶ 発売日:2025年10月15日
▶ CD:UHQCD仕様 / ¥3,630(税込み)
▶ LP:カラーヴァイナル仕様(PARTⅠクリアレッド、PARTⅡクリアスカイブルー)/ 各¥4,400(税込み)
▶ 収録楽曲(LPはM1~11がPARTⅠ、M12~21がPARTⅡに収録)
01. おしゃべり!おしゃべり!
02. 恋の極楽特急
03. 結婚相談所
04. 飾窓の少女
05. パレード
06. 真夏の海
07. あの娘の彼
08. ショートケーキのサンバ
09. 私の運命線
10. セシルカットブルース
11. やられちゃった女の子
12. ひまわり
13. 甘い恋(Single Version)
14. ポルターガイスト
15. 眩暈
16. 黒い革のブルース
17. ロック ステディ ガール(Single Version)
18. ブルーメロディ
19. ハートに火をつけて
20. サマータイム
21. 赤い帽子(Alternate Mix)
▶ 小島麻由美オフィシャルサイトhttps://kojimamayumi.com/

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