「パパが45歳」以降に出産した家庭の住宅費・教育費・老後資金の【家計対策】 「家計再生コンサルタント」が伝授
パパが45歳以降になってから子どもに恵まれた家庭は、教育費の準備や老後の資金確保など、どう乗り越えればいいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭さんに伺いました。全2回の前編。
【画像】「これが葉っぱ?」発達障害の特性を強みにした「葉っぱ切り絵アーティスト」 驚きの作品パパが45歳以降になってから子どもに恵まれた家庭は、教育費の準備や老後の資金確保など、どう乗り越えればいいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭さんに伺いました。
(全2回の前編。後編を読む。※公開時よりリンク有効)
複合的な不安を抱える45歳以降のパパたち
──晩婚化の影響を受け、40歳以上でパパになる人の数は、この20年(2002~2022年)でそれ以前の約1.4倍に増えています(厚生労働省の人口動態調査より)。
20代・30代よりも40代半ばからの子育ては収入が安定し、金融資産も比較的多く、経済的な強みがあるように見えます。
しかし、子どもが大学に入学するころには定年退職を迎え、再雇用となっても収入が大きく減少する可能性もありますが、40代半ばで初めてパパになる方々が直面する家計の悩みとして、横山さんのもとにはどのような相談が寄せられることが多いのでしょうか?
横山光昭さん(以下、横山さん):「教育費が心配です」と単独で家計相談に来られる方は実はそれほど多くないんですよ。
というのも、40代、50代となると、まず自分たちの老後の生活への不安があり、その上で住宅取得や教育費など、目の前の支出についても気になってきます。
つまり、一般的に人生の「三大支出」といわれる①住宅費②教育費③老後資金への不安が重なって出てくるのです。
一方で、「教育費はどうしたらいいんだ」と急に困って来られる方もいます。例えば、子どもが中学受験を考えるようになり、塾代の見通しが立たなくなったり、予想外の支出に直面して慌てて相談に来られるケースですね。その不安な気持ちもよくわかります。
しかし、急に「何百万円ものお金がわいてくる」なんて魔法のような解決策はありません。教育費が必要になる時期は、ある程度予測できるもの。だからこそ、できるだけ早い段階から計画的な準備を始めることをお勧めしています。
オンライン取材中の家計再生コンサルタント・横山光昭さん
毎月の家計を確認する
──具体的にどのようなアドバイスをされるのですか?
横山さん:例えば、ダイエットを始めるとき、まず体重計に乗って自分の体重を確認しますよね。それと同じで、私がまずお聞きするのは「あなたの家計は毎月どれくらいですか」という点です。世帯の手取り月収を聞いて、食費、住居費、生命保険料など、支出を項目ごとに確認していきます。
家計をがっちり把握しろとまでは言いませんが、大まかなお金の流れをまずは確認すること。その上で、このままだと貯蓄が残らないのか、毎月いくら貯められる可能性があるのか現状を理解することから始めていきます。
提供:アフロ
45歳~生活レベルが下げられない!?
──40代半ばの場合、生活レベルが上がっていて、それを下げるのが難しいという声をよく聞きます。
横山さん:そのとおりです。収入が高くなると、生活レベルも比例して上がりやすく、生活全体が「メタボ」状態になっているケースが少なくありません。
その結果、収入が高いにもかかわらず、思うように教育費が捻出できていないケースもよく見かけます。こうした状況を変えるには、まず固定費の見直しから始めるのがよいでしょう。
例えば生命保険なら、本当に必要な保障は何かを見直してみる。携帯電話なら、料金プランの変更や格安スマホへの切り替えを検討する。住居費なども含めて、一つひとつチェックしていくことです。
ただ、正直に申し上げて、こうした見直しは簡単ではありません。しかし、「これは削れません、あれも無理です。でも、『お金は貯めたい』です!」という姿勢は矛盾しています。
まずは世帯の家計状況をしっかりと把握し、そこから教育費にいくら回せるのかを考えていきましょう。特に40代半ば以降は20代・30代よりも稼げる期間が限られているため、貯蓄ペースを上げていく必要があります。
教育資金のための投資は早めに
──支出を見直すことは大切ですが、それだけで十分な教育資金を準備できるのでしょうか?
横山さん:今は貯金だけでは難しい時代です。定年退職後の生きる期間が長くなっていて、インフレも進んでいる中で、年金だけでは生活費や老後に必要なお金が足りないというほうがほとんどだと思います。
かといって、60歳・65歳までの間に貯金だけで何千万も現金を貯められる人は少ないのが現実です。
そのためNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった投資の活用が有効です。
例えば、教育費の目標が300万円の場合、貯金と投資を組み合わせて、150万円は貯金、残りを投資で運用するというプランです。
ただし、iDeCoは原則60歳になるまで資産を引き出すことができません。一方、NISAは子どもが小さいうちから始められるので、教育資金の準備に適していますね。
写真:Trickster/イメージマート
──教育資金のための投資は、いつごろから始めるのがいいのでしょうか?
横山さん:遅くても子どもが7歳ぐらいまでに始めることをお勧めします。というのも、教育費が本格的に必要になるのは大学入学時、つまり子どもが17歳~18歳のときです。
投資は10年以上の長期で運用してこそ効果が期待できるもの。子どもが0歳、1歳のころから始めれば、15年以上の運用期間を確保し、資産を育てていくことができます。
ただし、投資を始めるうえでは、病気などの理由で働けないときのための「生活防衛資金」として、最低でも生活費の7.5ヵ月分は現金で持っておくことをお勧めします。
例えば、毎月の生活費が40万円の世帯であれば、生活防衛資金として300万円程度を現金で確保しておく。その上で、残りの資金をどのくらい投資に回すかは、ご自身の投資に対する知識や不安の度合いによって変わってきます。貯金が1000万円あっても、まずは50万円程度から慎重に始める方もいれば、残り全額を運用に回す方もいます。
──投資を始めるにあたって、専門家のアドバイスを受けたほうがよいでしょうか?
横山さん:NISAなどを始めること自体はそれほど難しくないため、まずは自分で調べて始めてみる、というのも十分アリだと思います。有名な投資商品もいくつかありますし、それらを利用すれば、基本的に大きな間違いは起こりにくい。
ただし、貯金と投資バランスや、どのくらいのペースで投資をしていくのかなどを知りたい場合は、ライフプランをFPに相談するのもいいと思いますね。
予期せぬ事態に備え「万事OK」の状況を目指す
──投資が有効なのはわかりました。一方で、貯蓄をするためには夫婦での協力が必要ですよね。
横山さん:そうですね。最近は夫婦別々で家計管理をしている共働き世帯が増えています。「これは夫が払う」「これは妻が払う」と、バラバラに管理している。その結果、パートナーの収入がわからない、お互いにどれだけ貯まっているのかわからない、という状況の方も多いのではないでしょうか。
しかし、子どもが生まれるのを機に「一緒に貯めていきたい」という気持ちが芽生えてくることは自然な流れです。
すべての貯金を一緒にする必要はありませんが、家計簿アプリを活用したり、月1回話し合う機会を設けたりと夫婦でお金の動きをしっかりと共有し、計画的に管理をしていくことが大事だと思います。
──夫婦で家計の見直しを始めようと思っても、具体的に何から手をつければいいのか悩む方も多いと思います。そうした際、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのも一つの方法でしょうか?
横山さん:はい、特にママがマタニティ期や、子どもが未就学児の間に一度相談にいくのは有効だと思います。45歳からの子育ての場合、20年というスパンでの家計を考える必要がありますから計画が大事です。
そのとき、私としては夫婦で一緒に相談にいくことをお勧めします。教育方針は夫婦で違うことも多く、「子どもは私立に通わなくてもいい」と考える方もいれば、そうでない方もいる。夫婦の意向を長期的な視点で数字化してみるのも非常に有効です。
実際、相談の中で「そう思っていたの?」と気づくことも少なくありません。教育費から相談を始めたとしても、結果として人生全体の生き方を考えるきっかけにもなると思います。
転職や独立を考えている家庭
──将来のライフプランを考える上で、転職や独立など、親のほうも変化を検討している場合はどうすればよいでしょうか?
横山さん:経済的な見通しが立たない場合でも、「子どもは高校までは公立だけど、大学は私立に行かせたい」といった、ざっくりとしたプランを立てることはできます。
そして、子どもが大学に入るまで最低でも「300万円は貯めないといけない」といった具体的な目標があれば、転職後であろうと、独立後であろうと、その目標額に向けて最低限これくらい稼ぎが必要だという認識を持つことができますよね。
繰り返しになりますが、今の家計状況を見て、削減できるところは削減する、必要に応じて収入を増やすことを考える、などできることから進めていくことが、一番成果があり確実だと思います。
提供:mugi/イメージマート
──あらためて、45歳以降のパパへのアドバイスをお願いします。
横山さん:教育費はいくら、老後資金はいくら、とお金の使い道についてすみ分けて考える方も多いと思います。しかし、私がお勧めしたいのはあえて「色をつけない」でお金を置いておくこと。人生は計画どおりにはいかないものです。子どものためのお金として考えていても、途中で予期せぬ出費が必要になることもある。
だからこそ、その時々の状況に応じて、やれることやれないことを判断できる「万事OK」という状態を作っていくことが大切なんです。
高齢になってからの子育ては、時間的な制約があることも確かです。その自覚を忘れないこと。だからこそ、収入が高いうちから計画的に準備をしていく意識が必要なんです。目の前の生活水準にとらわれすぎず、将来を見据えて準備を進めていく。それこそが、子どもの未来をしっかりと支える家計の形だと思います。
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「子どもにお金をかけてあげたい、自分にもお金を使いたい。でも将来の貯蓄が不安です」と、そう話す私に対し、「それはもう稼ぐしかないですね(笑)」と横山さん。おっしゃるとおり、魔法のような解決策などはありません。
家計の現状に目を向けて、将来何が起きても対応できるよう、今からできる準備をしっかりと進めていく。その大切さを教えていただきました。
次回後編は、子どもとお金の関わり方について引き続き横山先生にお話を伺います。
取材・文/山田優子
後編を読む。
※公開時よりリンク有効
『月3000円からはじめる新NISA超入門』著:横山光昭(アスコム)
『50代でも間に合う新NISAとiDeCo』著:横山光昭(ワン・パブリッシング)
『収入減でも家計がラクになる貯蓄術 貯金は「夫婦の会話」で9割決まる!』著:横山光昭(東京ニュース通信社)