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【静岡県立美術館の企画展「生誕140年記念 石崎光瑤」】 鳥たちの顔つきがいい。秋野不矩とはニアミスなのか?

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市駿河区の静岡県立美術館で開かれている企画展「生誕140年記念 石崎光瑤」を題材に。

2月第1週の日曜日に足を運んだが、若い男女が多い。女性だけのグループも目につく。ミューズスタッフ(監視員)の一人が「通常の企画展より平均年齢が低い」と印象を話してくれた。

富山に生まれ、昭和初期に京都で活躍した画家石崎光瑤(1884〜1947年)の作品がなぜ今、10~30代の心をつかむのか。完璧な正解はないだろうが、彼の花鳥画の豊かな色彩は理由の一つになるだろう。とある専門誌が使った「若冲の再来」というキャッチフレーズも興味関心を高めたのではないか。

見どころはいくつもあるが、まず第一に「大きい」ことが挙げられる。天地257センチ超の二曲一隻「寂光」(1929年)は、美術館の展示ケースに入らなかったそうだ。金を背景に7羽のクジャクが枝でくつろぐ。画面下に月。画面サイズの割には見る者を圧する気配はなく、屏風の前にいると心が静まっていく。

かろうじて展示ケースに収められている「雪」(1920年)も天地260センチで、観覧者は見上げる格好になる。右隻は小川が蛇行する苅田にオシドリ、左隻は杉の木立の間に晴れ間がのぞく。どちらも水分の多そうな雪がたっぷり積もっていて、例えば柳の枝一本一本に白の絵の具が厚く盛られている。でこぼこの絵肌の効果もあってか、今にも枝から雪が落ちそう。しんしんと降る雪景色が動的に見えてくる。

鳥たちの顔つきがいいのもポイントか。第1回帝展特選の「燦雨」(1919年)は熱帯植物が生い茂るインドの情景だが、雨に追い立てられるインコの表情がなんとも味わい深い。六曲一双の「奔湍(ほんたん)」(1936年)は画面全体を白い奔流が覆うが、左上に水流とスピードを競うようなヤマドリの姿がある。凜として顔つきに背筋が伸びる思いだ。

石崎の年譜を見ていたら、1945年まで京都市立美術専門学校の教授を務めている。浜松市出身の秋野不矩(1908~2001年)の年譜と付き合わせた。秋野は1949年に同校助教授に就任している。ニアミスだったか。

ただ、1935年に設立した日本画家のグループ「春虹会」には石崎、師匠の竹内栖鳳とともに秋野が師事した西山翠嶂も名を連ねている。1938年の新文展には二人とも作品を出している。互いに面識はあったのではないだろうか。考えたら楽しくなってきた。

(は)

<DATA>
■静岡県立美術館「生誕140年記念 石崎光瑤」
住所:静岡市駿河区谷田53-2 
開館:午前10時~午後5時半(月曜休館、祝日の場合は翌日休館)
観覧料(当日):一般1400円、70歳以上700円、大学生以下無料
会期:3月23日(日)まで

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