東京・多摩川沿岸の古墳めぐりで悠久の時の流れを感じる
ぶらぶら歴史さんぽ@東京(0002)
世田谷区から大田区にかけて、多摩川沿いに大小多く連なる古墳群を巡ります。およそ2時間余りの歴史ウォーキングです。
<概要>
東京の武蔵野台地の南東に広がる古墳群は「荏原古墳群」と呼ばれ、おもに古墳時代の4世紀から6世紀にかけて築造されたものになります。世田谷区の上野毛周辺から大田区の田園調布のあたりに多く集合しています。
<ウォーキングコース>
東急田園都市線「二子玉川」駅を起点に多摩川沿いに南東へ、国分寺崖線を上り下りしながら東急東横線「多摩川」駅までのおよそ6キロメートルの散歩です。
■「二子玉川」駅から「野毛大塚古墳」まで
「二子玉川」駅からスタートです。改札を出ていったん駅の北側を流れる丸子川に出ます。川の流れに沿って上野毛の五島美術館に向かいます。美術館手前で東急大井町線の上に架けられた富士見橋を渡ります。ここは国土交通省が選定した“関東の富士見百景”のひとつ。この日も二子玉川の高層ビルの間から富士山がちょこんと姿を見せていました。
五島美術館は日本を中心とした東アジアの古美術を多く収蔵しており時間があれば一見の価値アリ。今回は美術館の前を過ぎて南東へ進みます。右手に上野毛二丁目緑地があります。ここが上野毛稲荷塚古墳となります。案内看板が立っていますが敷地内へは扉が施錠されており立ち入れず。
さらに南東を進み、都道311号沿いにある多摩川野毛町公園にあるのが、コース前半の最大のスポット「野毛大塚古墳」です。古墳は公園内にきれいに整備のうえ公開されており、その全容が非常に分かりやすい。形状は帆立貝式古墳とされており、比較的めずらしいタイプでしょうか。
周囲の堀もキチンと再現されています。墳丘本体に上がることができるのも嬉しいです。最頂部には発掘された石棺や副葬品がどのように埋葬されていたのか分かるように図示されているところも親切。鎧や鉄剣などが出土し、これらは国指定の重要文化財となっており、また古墳本体は東京都指定史跡です。全長は82mほどあり帆立貝式古墳としては最大級規模だそうです。良好に保存されしかも親しめるように整備されている古墳はとても貴重ではないかなーと感じました。
■「御岳山古墳」からさらに東へ
ふたたび東へ歩き出します。等々力渓谷(2024年末時点で立入規制中)を過ぎて南へ入ると都道312号を挟んで渓谷と反対側に「御岳山古墳」があります。こちらも形状は帆立貝式。現在は全体が樹木に覆われ、また中に入ることができないため周囲の道路から眺めます。
ここからさらに東へ向かうと「狐塚古墳」が緑地として開放されています。こちらも墳丘に上がることができます。その東側にある宇佐神社の境内には「八幡塚古墳」があります。このあたりは南側が多摩川に向かって傾斜した台地の中腹にあり、眺めがたいへん良いです。このような場所にお墓をつくるのもよく分かる気がします。
「荏原古墳群」は武蔵野台地の南端そして国分寺崖線の崖の上に築造されています。国分寺崖線は多摩川やその周辺河川の浸食により形成された自然河川堤防と考えられています。その高低差は最大で約20メートルほど。田園都市線が台地側の「用賀」駅から川岸側の隣駅となる「二子玉川」駅に向かうと、途中で地下から地上に突如現れることからその高低差がよく実感できます。崖上から見える南西側(神奈川県川崎市方面)の展望はたいへん見晴らしがよいです。今回のウォーキングルートはこの崖線を何度も登降するため意外に運動量を要します。
■多摩川台公園を荏原古墳群最大規模の「亀甲山古墳」まで
さらに南東へ進み大田区に入ると多摩川台公園にやってきました。公園は多摩川に沿って東西に横長に伸びており、公園内全体に古墳が点在しています。まず西端にある「宝来山古墳」。形状は前方後円墳。残念ながらこの日は扉が閉ざされており間近に見ることができませんでした。
公園内を東へ進むとその先にいくつもの小規模な円墳が連続しています。最後は公園の東端にある「亀甲山古墳」です。こちらも形状は前方後円墳。全体が密集した樹木で覆われており全体の概要ははっきりとは把握できません。しかし古墳の前方から後方へ周囲を歩けるのでその全長の規模(約107m)がよく体感できます。「亀甲山古墳」は国の指定史跡となっています。
公園内には古墳展示室という施設があります。施設内には古墳群の概要が解説されていたり、古墳の構造の一部を再現してそのなかを通れるようになっており規模感などを実際に知ることができるように工夫され、なかなか楽しめます。入場無料なのでお得ではないでしょうか。
■絶景のパノラマ風景を望む多摩川浅間神社を経て「多摩川」駅まで
公園を北側に下りるとすぐに東急東横線「多摩川」駅になりますが、ほんの少し足を伸ばすと多摩川浅間神社があります。本来この地も古墳であったようですが、いまはその痕跡もよく分かりません。境内に入ると南西側に大きく張り出した広いテラスがあり、多摩川を挟んで川崎側の景色がよく見渡せます。遠くには富士山の姿も見えました。
古墳時代の人々もおそらくこの台地上から南西側に開けたパノラマ風景を観望して嘆息したのではないでしょうか。もちろん当時は高層建築などはありませんでしたから、現在の湘南あたりまで関東平野が遠く広がっています。丹沢の山並みのさらに向こうには秀麗な台形状の富士山の雄姿。ほかの山とはまったく異なるその独立峰の偉容に特別な想いを抱いたとしてもなんら不思議はないと感じます。多摩川、富士山そして川を渡る東横線の光景はこの散歩の最後にふさわしい素晴らしい眺望でした。
じつはこの散歩は小学校のときの夏休みの自由研究とほぼ同じルートをたどってみました。その当時は自転車をこぎながらだったのですが、国分寺崖線をヒイヒイ言いながら自転車で上り下りしたことを苦笑しながら思い出しました。在りし日の古墳時代の人々の様子と自分の子ども時代を重ねて思い返す懐古的な旅として2024年を締めくくりました。
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩・見学時間は除く)
「二子玉川」駅→ 上野毛稲荷塚古墳(25分)→ 野毛大塚古墳(10分)→ 御岳山古墳(10分)→ 狐塚古墳(5分)→ 多摩川台公園・宝来山古墳(25分)→ 亀甲山古墳(10分)→ 多摩川浅間神社(5分)→ 「多摩川」駅(3分)
コースタイム/ 1時間30分程度
歩行距離/ 約7キロメートル
[アクセス]
●往路
東急田園都市線「二子玉川」駅から徒歩
●帰路
東急東横線「多摩川」駅まで徒歩
<参考リンク>
野毛大塚古墳 (世田谷区)
亀甲山古墳 (大田区)
多摩川台公園古墳展示室 (大田区)