人生にとってポジティブな側面も!「転校」が子どもに与える影響とは?
臨床心理士・公認心理師のyukoです。子どもの転校と聞くとどのようなイメージが浮かびますか? せっかく友だちと仲良くなれたのに、学校に慣れてきたところだったのに、とネガティブなイメージをもつ方も多いかもしれません。しかし、転校にはメリットとデメリット両方の側面があります。子どもの転校について、心理的な影響を中心に考えていきます。
引っ越しを楽しみにする息子、転校を嫌がる娘。
小1の息子と小5の娘がいるわが家。夫の転勤が決まり、他県に引っ越しをすることに。引っ越しに伴い必要となってくる転校。小1の息子は特に何とも思っていないようで、新しい場所に行くのを楽しみにしているよう。一方小5の娘は2度目の転校ということもあり、最近は暗い表情ばかり。家族一緒に過ごす時間を大切にしたい一方、転校をさせるのはかわいそうなのかな?
仕事の都合や介護など、様々な事情から子どもを転校させないといけないご家族は多いと思います。
転校と聞くと、「子どもがせっかく学校になじんだのに」「友だちと離れさせるのはかわいそう」など、消極的な印象をもつ方もいらっしゃいます。
実際、転校は子どもにどのような影響を与えるものなのでしょうか。
転校が与えるネガティブな面とポジティブな影響の両方を考えていきます。
転校が与える「ネガティブ」な影響
ネガティブな影響、不安要素としては、新しい環境にどの程度なじめるかというところでしょう。学年やクラスが変わるだけでも不安に感じるような子にとってはやはり負担は大きいかもしれません。
その他、
・学習のスピードやペースの変化に戸惑う。
・友人と会えなくなる寂しさ。今まで築いてきた友人関係がリセットされてしまう感覚になる。
・方言や地元特有の文化の違いに悩むことがある。
など、大人には大人の大変さがある一方、子どもには子どもの年代特有の難しさがあります。
勉強のフォローアップや、可能であれば元の学校で仲が良かった友達と連絡する手段を作ってあげるなどの支えがあると子どものストレスは減りやすくなるでしょう。
転校が与える「ポジティブ」な影響
ポジティブな影響としてはやはり、環境の変化が子どもにとってよい方向に働く場合がある点です。以前の学校で得られなかった経験や新しい友人との出会いを前向きに受け入れられると、結果として転校はよいものになりえますよね。
また、
・地方によって考え方や文化の違いがあることを知り、色々な価値観が身についた。
・新しい環境に慣れるのが得意になり、大人になってからも環境の変化に動じなくなった。
・住んでいる場所についても、出会う人についても絶対的なものではなく、変えられるものと感じられるようになった。
など、長い人生において大切な考えを身につけるよい機会ともなりうるんですね。
大切なのは「レッテルに囚われない」こと
転校によって心機一転でき、よい経験だったと振り返られる子もいれば、あのとき転校したくなかったと消極的に考える子もいるのは事実です。結果はすぐに伴うものではなく、数年後にしかわからないことも多くあるでしょう。
「当時は嫌だと思ってたけど、5年後になって振り返ると、あの経験がなければ今の自分はいない」と肯定的に捉えられるなんてケースも多いもの。
考え方として大切なのは「転校させるなんてかわいそう」というレッテルに囚われないこと。親自身が悩み過ぎないのはもちろん、不要なレッテルから子どもを遠ざけるのも重要です。
世の中には様々な考えの方がおり、外野からはさまざまな言葉が飛んできます。
・転校なんてかわいそう。子どものためを思うなら地元に居つづけるべき。
・ひとりっ子なんてかわいそう。兄弟のよさを知らないなんて。
・シングルマザーなんて大変ね。子どもも辛いでしょうに。
もちろんそのような言葉は決して事実ではなく、発言者の主観に過ぎません。かわいそうなのは境遇や環境の変化ではなく、そのようにレッテルを貼られ、傷つけられることです。
親子を傷つけてくる言葉や人間関係とは距離を置き、巡り合った環境でとれる最善の策を考えていくのがよいでしょう。親にとって、子どもにとって、温かく優しい言葉をたくさん受け取り、信じていけるといいですよね。
yuko/臨床心理士・公認心理師