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【なぜ】全国で唯一、鬼王を祀る『稲荷鬼王神社』の節分の掛け声が独特 → 宮司さんに聞いた「鬼は内」になった理由

ロケットニュース24

節分と言えば2月3日。と思っていたら、2025年は2月2日なのだとか。節分は日付で決まっているのではなく、立春の前日と定められており、2025年は地球と太陽の位置関係から暦がズレるため2月2日になるそうな。へー。

私(中澤)が今年の節分が2月2日であることを知ったのは、1月後半に訪れた新宿にある稲荷鬼王神社でのこと。境内の掲示板に節分のお知らせが貼られていたのである。っていうか鬼王神社なのに節分やるんだ……!

【写真】新宿歌舞伎町のビルの隙間にこんな場所があろうとは

・謎多き節分祭

貼り紙によると、今年の稲荷鬼王神社の節分は2月2日の18時からで、福袋も頒布(はんぷ)するらしい。節分に福袋とは? シンプルに謎である。

そもそも、ネットで検索すると「鬼を祀る」とか「鬼の王を祀る」とかの言葉がヒットするこの神社。隠れ気味の立地も含め、その言葉に雰囲気を感じて来たわけだけど、「鬼は外」しちゃって大丈夫そ? 謎が謎を呼ぶ。

・奇跡

まあ、節分祭に来てみれば何か分かるかもしれない。そう思って帰ろうとした時、ちょうど向こうから宮司さんが歩いてきた。まさかのタイミングにビビり散らかしたのだが、これをスルーしたら鱗滝さんも「判断が遅い」とブチギレるに違いない。そこでほぼ反射的に名刺を出して話しかけた。

大久保宮司は優しいおじさんという雰囲気。良かった、鬼舞辻無惨みたいな人じゃなくて。さて置き、話を聞いてみると、まず節分の掛け声が「鬼は外」ではないらしい。え? なんて掛け声なんですか?

大久保宮司「当社の節分祭は新宿区の地域文化財になってまして。『福は内、鬼は内』と豆を撒いた後、その豆を拝殿に集め、一晩閉め切り、翌朝の春留めの儀で終了となります。その儀式の長さも特色と言われております」

──掛け声が「鬼は内」なのは、やっぱり鬼を祀っているのと関係があるんですか?

・鬼を祀ってるわけではない

大久保宮司「誤解される方が多いんですが、鬼を祀っているわけではありません。当社が祀っているのは、鬼の王様と同じ力を持つという意味で「鬼王様」と呼ばれた神様です。鬼王様は、月夜見命(つきよみのみこと)、大物主命(おおものぬしのみこと)、天手力男命(あまのたじからおのみこと)ですね。

その鬼王様という呼び名に因んで、当社では掛け声も『鬼は内』になっております。この場合の『鬼』は昔から『春の神様』といわれ、『福よ来い、春よ来い』という意味だといわれています。この辺りが大久保村だった頃からのものですから、当時の人が神様の名前に気を使ったということでしょうね

──なぜ、節分に福袋を配るんですか?

大久保宮司「当社の福袋は、年男、年女が、神様からいただいた福を分けるという意味で豆とささやかなものを手渡しするというものです。そうやって幸せを独占するのではなく、分かち合う。それが村の経済の考え方だったんでしょうね」

──福部分の考えは分かったんですが、なぜ袋なんでしょうか?

大久保宮司「ものが複数あるので袋に入れた方が親切だし、手渡ししやすいじゃないですか」

──手渡しにこだわっているということですか?

大久保宮司「そうですね。福を分けるという意味でも、手渡しは重要なポイントです。年男、年女も神様からいただいているものなので、1人で独占するのでもなく投げたりせず手渡しで分け与える。これは村社会の経済の循環も感じられて、素晴らしい考え方だと思います」

──とのこと。節分当日は忙しく取材などの対応は断っているらしいので、今回のタイミングは奇跡だったと言えるだろう。鬼王様のめぐり合わせか。

・平将門公所縁の地という説も

一聴するだけだと謎多きこの神社。紀州熊野から鬼王顕現を勧請したのが宝暦二年(1752年)で、氏神である稲荷神社(宇迦之御魂命)と合祀(ごうし)したのが天保二年(1831年)。現在は、熊野紀州にも鬼王顕現は存在せず、鬼王という名がつく神社は全国でここだけなのだとか。

ちなみに、鬼王の名前は江戸時代でもすでに特異だったらしく、宿場町ならともかく村だったこの辺りに勧請されたことにはがあるそうな。文書には残っていないが、村が「鬼王」という名前に抵抗感がなかったのは、この土地が平将門公(幼名 鬼王丸)に所縁がある土地だったからという説もあるらしい。ロマンだな。

そんな稲荷鬼王神社には、火産霊神(カグツチ)の祠などの大久保村の土俗の神々も合祀されていて、大きな神社とは違った独自の文化と歴史を感じる。新宿歌舞伎町のビルの隙間にこんな場所があろうとは

節分祭は18時からと、この時期は陽が落ちている時間帯に開始されるというのもここならではのものを感じる。闇の中、稲荷鬼王神社に鬼が舞うのか。撮影する分には「ご自由にどうぞ」とのことだったので行ってみようと思う。

・今回紹介したスポットの情報

店名 稲荷鬼王神社
住所 東京都新宿区歌舞伎町2丁目17−5

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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