ワクチン開発も生命科学で進歩する?【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】
ワクチン開発も生命科学で進歩する
新型コロナワクチンの登場
ワクチンは開発から実際に使われるまでに、十数年はかかるといわれてきました。ところが、新型コロナウイルス感染症ワクチンは、驚くことにとに1年ほどで普及しました。感染の深刻さに1日も早いワクチン開発が望まれていたところ、新型コロナウイルスの配列が公開された翌日には、mRNAワクチンの配列がデザインされました。そして、すでに感染症ワクチンとして開発され、臨床試験も行われていたmRNAワクチンが実用化されることになったのです。
mRNAワクチンは、これまでとは根本的に違う考え方で開発された、ウイルスのmRNAだけを利用するという新しいワクチンです。コロナ以前から、ワクチンはさまざまな病気に対して使われてきました。かつては、レトロウイルスの混入による感染などのリスクもありましたが、現在は生命科学の進歩のおかげで、ゲノム編集によってあらかじめレトロウイルスを排除した、リスクのないワクチンの製造が可能です。
ワクチン開発は、新型コロナウイルスでの実績からもmRNAワクチンが注目され、各国でコロナ以外の感染症に対するmRNAワクチンの開発が進んでいます。インフルエンザウイルスや、RSウイルス、がんやエイズ、アレルギーなどへの幅広い応用が期待されています。
ワクチンには6種類ある
毎年、インフルエンザが流行し始めるとワクチンの接種が呼びかけられるが、関心が一段と高まったのは、やはり猛威を振るった新型コロナウイルスの影響だろう。現在使われているワクチンは、下記の6種類。
mRNA ワクチンのしくみ
mRNA ワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図になる mRNA(メッセンジャー RNA)を脂質の膜で包んだもの。mRNA が取り込まれると、細胞内でスパイクタンパク質がつくられ、免疫のしくみが働いて、ウイルスを攻撃する抗体をつくる(下図)。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子