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ソニン(主演・訳詞)×稲葉賀恵(演出)×キム・ハンソル(脚本・作詞)~ミュージカル『ラフへスト』クリエイター座談会

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稲葉賀恵、ソニン

2024年7月18日(木)~28日(日)東京芸術劇場シアターイーストにて上演されるミュージカル『ラフへスト~残されたもの』。

2024年1月に開催された第8回韓国ミュージカルアワードで作品賞、脚本賞、音楽賞の主要3部門を総なめにした本作は、韓国を代表する天才芸術家と称された実在の二人の男性、詩人イ・サンと韓国抽象美術の先駆者キム・ファンギを夫に持ち、自身もエッセイストで評論家で西洋画家でもあったキム・ヒャンアンの人生を史実に基づき描いたオリジナル・ミュージカル。

脚本・作詞のキム・ハンソル、日本版演出の稲葉賀恵、主演のキム・ヒャンアンを演じるソニンの鼎談インタビューが到着した。なお、稲葉は今回が初のミュージカル演出、ソニンは初の韓国ミュージカル出演に加えて、訳詞にも挑戦し、クリエイターとしても参加している。

――キムさんが今作を執筆しようと思われたきっかけを教えてください。

キム:偶然、韓国の二人の天才芸術家であるイ・サンとキム・ファンギの妻が同一人物だと知って、二人の天才の心を掴んだ女性とはいったいどんな人だろうと気になってキム・ヒャンアンについて勉強し始めました。しかし勉強すればするほどキム・ヒャンアンという人物にのめり込み、ヒャンアン先生の人生そのものが一つの芸術であるという考えが浮かんでミュージカルとして書くことになったのです。

キム・ハンソル

――稲葉さんは、ミュージカルの演出は今作が初となります。この作品に最初に出会ったときの印象はいかがでしたか?

稲葉:この作品は、日常の些細な機微を大事にしていると感じたので、グランドミュージカルというよりも、自分がこれまで触れてきたような、会話や関係性の繊細さを大事にした戯曲だと感じました。なので、もちろん歌はありますが、あまり「ミュージカルだ」と思わずに演出をお引き受けすることができるなとまず感じました。

――ソニンさんも今作は、初韓国ミュージカル、初の訳詞と“初尽くし”。最初にお話を聞いたときの心境は?

ソニン:韓国ミュージカルはずっとやりたかったんですよ。ご縁がなかったのか、なかなかお話がいただけなかったので、待ち構えていました(笑)。韓国ミュージカルにもさまざまなジャンルがあると思いますが、この作品は小劇場などがぴったりくる繊細な表現が生きる作品だと感じました。韓国ミュージカルにはいわゆるグランドミュージカルというような壮大な世界観の作品もありますが、最近私は、どちらかというと少人数で作る繊細な作品に触れたかったので、そのタイミングで興味を示していた方向性とカチンとハマったような感覚がありました。もちろん、演出を稲葉さんが担当されるというのも、この作品に出演したいと思った大きな理由の一つです。ずっとミュージカルの演出をされてきた、ミュージカルに慣れた方ではなく、ストレートプレイを作り上げてきた方とご一緒できるというのはとても貴重な機会。私たち、実は(2015年に上演した)「トロイラスとクレシダ」という作品でご一緒したことがあるんですよ。そのときは、稲葉さんは演出助手をされていて。そういう意味でも、今回、稲葉さんとご一緒できるのはすごく嬉しかったです。

訳詞については、これまでも日本初演の作品では、クレジットはされていなくても関わることが多かったんですよ。ただ、韓国語を日本語に訳すというのは初めてだったので、これまでとは違うだろうなと思っていたんですが、実際にやってみたらとても性に合ってて。韓国語は、日本語と言葉の順番も一緒だし、私の、語学と文化の理解度で言っても英語よりある。韓国語歌詞のニュアンスを汲み取って日本語歌詞に変換させることが、すごく楽しくできました。

――演出面ではどのようなことを考えていますか?

稲葉:この芝居を面白いと思った理由の一つが、時間の操作にあります。特徴的ですよね。誰が操作しているのか、なぜこういう仕組みになっているのか。それから、芸術家の方たちが残そうとしているものをどう舞台の上に表出させるのか。そうしたことから私が最初に考えた演出プランは、宇宙のような空間でやりたいということでした。例えば、イスがあってテーブルがあって家の壁があるということではない。暗闇の中、混じり合うのかどうか分からないくらい遠いところから近づいてきて、重なって、また離れる。「あなたを見つける奇跡」ということをこの作品の歌詞の中でずっと伝えているので、それを表現するための空間をどう作ろうかと考えています。

ソニン:役者としてもとても興味深いです。ミュージカルはある意味では、分かりやすい表現をすることも多いじゃないですか。それを違う角度から切り取って演出するのは、容易じゃないと思うんです。その世界で芝居する役者もまた新しい切り口を、学ぶ事になる。私がこれまで経験してきたミュージカルとはまた違う経験ができるだろう思っています。これまで何度も訳詞などの会議で稲葉さんとお話をさせていただいていますが、私は稲葉さんの芸術のセンスに同調しています。そういう意味でも、同じ方向性で進めていけるのではないかと思っているので、これからの稽古が楽しみです。

――キムさんからも日本での上演に向けての期待や楽しみを教えてください。

キム:「ファンギ先生が勉強をした、イ・サン詩人が暮らしていた東京で『ラフヘスト』が上演される!」これだけでも十分に感動的で涙が込み上げそうです。自分の感嘆詞を信じて前に一歩進むことができる小さな勇気が伝わればいいなと思います。

▼衣装クレジット(ソニン)
・Diagram
・Limit till 2359
・eije
・Bellis
・アプロ

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