北九州でカウンターを極める~『ヤハタココ』編~
北九州市に来たばかりで知り合いがいない、などの理由で、いわゆるソロ活を余儀なくされる機会も多々あるかと思いますが、初めてのお店に一人で入るのはなかなか勇気がいるものです。
そこで、一人で行っても馴染みやすい、一人なのに不思議とさみしくない!そんな、北九州市のカウンターのあるお店をご紹介していきたいと思います。
店主さんとおしゃべりしたり、他のお客さんと仲良くなったり、一人きりの時間を思う存分堪能したり。 “一人だからこそできる楽しみ方”をぜひ北九州市で極めてください。
【ヤハタココ】
最初の一歩
昔ながらのお店や公園も多い住宅街に溶け込んでいる、二階建ての建物。 外観はオフィスのようでありながら、一階は大きなガラス窓で観葉植物にあふれたオシャレな店内が見え、「ここは何だろう?」と興味を惹かれます。 こちらは、一階と二階、それぞれ異なる使い方をしているコミュニティカフェ【ヤハタココ】。
電車なら「八幡駅」から徒歩10分ほど、「前田」バス停も近く駐車場も5台ほどあるためとてもアクセスしやすいカフェです。
表には掲示板のようなものがあり、メニュー以外にスケジュールなども掲示されていて、普通のカフェじゃなさそう・・??ますます気になる!さっそくお邪魔してみましょう。
ヤハタココの成り立ち
今回お話しを聞かせてくださったのは、オーナーの福原さん。
いただいた名刺には「株式会社福原材木店 代表取締役」と記載がありました。
というのも、「ヤハタココ」は戦前から133年もの長きに渡り八幡東区で材木店を営んでいる会社が運営しているカフェなのです。
少子高齢化が進み、活気を失いつつある地方都市。それはかつて“鉄のまち”として栄えた八幡東区も同じです。そんな中、福原さんは「地元企業が何かまちの活性化に役立つことをして行かないと、このまちの魅力が薄れていく、私たち老舗企業は何ができるのか?」と考えたといいます。
昭和の時代、福原材木店では屋外にあった木材の加工場で、大工さんや地域の方々が集まれば、端材を燃やして暖をとり、そこでお茶や雑談をしていたそうです。
自然とその場では、コミュニティが生まれ、皆が顔馴染みになっていったといいます。
「そのような場を現代に合わせ提供していくことも、地元で長く商売をしてきた老舗企業の役割にあるのではないか?」
魅力的なお店、さらにそこに何か仕掛けを入れ、人が集まって、そこでまた新しいものが生まれる。
そういう循環していく場所をつくっていかなければいけない。そう考えたのが「ヤハタココ」誕生のきっかけなんだそう。かつての材木店の加工場で行われていた理想的なコミュニケーションの形を現代風にアレンジして生まれたのが「ヤハタココ」なんですね。
その大事な“場所”ですが、現在「ヤハタココ」があるのは福原材木店の斜め前。もともとは保険屋さんのオフィスビルだったそうで、解体してオシャレなカフェを作る案もあったそうです。
しかし、福原さんは「ずっとこのまちを見てきた、地域の方々にとって馴染みの建物を、安易に建て替え、景観を崩すのはどうなのだろう」と思い直します。昭和の時代からずっと地域と一緒に時を重ねてきた建物、この建物を残し、内部をアレンジすることで、地域の人は「あの保険屋さんね」と外観を見ただけでわかる、それが人を集めるきっかけにもなるのでは、と考え、この外観のまま、地域で生き続けることとなりました。
こだわり抜かれた内装
さて、そんな経緯で外観を活かしたままカフェに生まれ変わった「ヤハタココ」。
中に入ると、その洗練された雰囲気にテンションが上がります。福原さん曰く「ここ本当に八幡?」と言われることもあるそうですが、それも納得。都会にあるようなカフェのスタイリッシュさで、上質な空間が広がります。
前面ガラス窓のおかげで室内に居ながら開放感があり、観葉植物の緑も目に優しく、なんだかテラス席でお茶しているようにリラックスできます。このガラス窓、ここにも実はこだわりが。
以前のオフィスビルは腰の高さまでの窓だったそうですが、床まである掃き出し窓に変更。さらに中と外を繋げる形で縁側のように腰掛けられるようにしたんだそう!そこに腰掛けてふっと一息ついてほしい。まさに“縁側”のようなスペースです。全面開放できるため、お店の前を通る近所の方が挨拶してくれたり、小学生がそこに腰掛けて中にいるスタッフと「今日学校で何があったの」って話したり。お客さまとの距離を縮めるひとつのアイデアが見事に成功しています。
それ以外にも本業を活かし、トイレの内装や焙煎室の躯体を木でつくったり、キューブ型の木のイスがあったりと随所にこだわりが。
前面のガラス窓には、黄色いフィルムを貼っているそうで、夕方になると西日がそのガラスを伝って店内へ。温かみのある雰囲気に一変するそうです。内装の細やかなこだわり、時間によって変化する雰囲気なども実際に行って味わってみてはいかがでしょうか。
コーヒー文化を根付かせたい
地域の活性化を願う想いはもちろんですが、福原さんが、人が集える場所を“カフェ”にしたのは自然な流れでした。
実は福原さん、元々コーヒーのバリスタでもあるのです!
学生時代にコーヒーにハマり、「将来お店をやりたい」という気持ちがあったという福原さん。
木材・建築の世界も何かチャレンジしていかなければ生き残れない時代になり、八幡東区の地域の課題も相まって本業の柱にカフェを併せることでその夢が実現することに。
お店は基本的に、設計士である奥さまとパティシエのスタッフさんにお任せしているそうですが、焙煎は福原さんが担当。本業を進めながらも時々コーヒーの香りを嗅ぎに来るのが癒しなんだそう。海外では出勤前にちょっとお店によってエスプレッソを飲む風習があり、そんな「余裕(息抜き)」を八幡に馴染ませていきたい!と想いを語ってくれました。
そんな思いもあり「ヤハタココ」は朝7時30分からオープンしていますが、本業の材木店は朝も早いため、トラックで材料を取りに来たついでにコーヒーを飲む大工さんもいるそうです。
少しずつ朝コーヒーの文化が八幡にも根付いているようですね。
コーヒーが主役!でありつつも、コーヒーに合うデザートも充実。さらにお客さまからリクエストもあったことで、週替わりのお弁当の提供も始まりました。いろいろな地元の店舗さんとコラボしてコミュニティをつくっていくというコンセプトの「ヤハタココ」らしく、地元で人気のお店に依頼し、アレンジした特別なものを提供しています。
また、「ヤハタココ」には買って帰れる商品も豊富で、なかなか目にしないような商品もバイヤーを通じて選び、テスト的に出したりしているとのこと。九州で置いているのはココだけ!という商品もあるので、お土産に買って帰るのもおすすめです。
カフェだけじゃない、ヤハタココの楽しみ方
店内で気になるのがオシャレなカウンターキッチン。こちらはシェアキッチンとして地元店舗などにテストマーケティングとしてお貸ししているそうです。
例えば、新商品を販売する際に自社でやるとコスト面や段取りが大変なため、お試しでここのエリアの人たちに食べてもらったりしています。「お店はどこにあるの?」「この間の美味しかったよ」など、作り手と買い手のコミュニケーションがそこでも生まれるように工夫しているそうです。
さらに「ヤハタココ」の二階は、貸出用のフリースペースになっています。現在も書道教室、ヨガ教室、体操教室、フットマッサージなど様々なジャンルで利用されています。利用希望者さんとは面談を繰り返し、プレゼンテーションをしていただいた上で、お貸しするかを判断されているそうです。「ココでやりたい!」という熱意に惚れ込んで共に歩み応援していく、そんな思いが感じられます。
なぜシェアキッチンやレンタルスペースをつくったのかお聞きすると、「自分たちだけで成り立つカフェだけ、というのは私たちのコンセプトにそぐわないのです。そこにコミュニティという人と人、地域と人、企業と人の交流を埋め込んでいかなければ意味がないし、このまちにとって何ができるかを一緒になって考えることが大事だと思います」と語ってくれました
「例えば、過去に自宅の一階を改造してお店がしたい!というお話をいただきました。私たちはそうしたご相談に、設計や建築で材木店としてお手伝いすることができますし、地元の金融機関や不動産、職人さんなどチームでサポートすることができます。そうした“全部が地元で循環して回っていくもの”をつくり地域の繁栄に繋げていくべきだ」と福原さん。
「ココでやりたい」という人が八幡に集まってくれば、八幡東区に大小関係なくひとつ企業ができて、そこにまた人やファンが集まって、八幡にはこんな魅力があるんです!というその魅力が増え、地域の盛り上がりにつながる。二階のフリースペースも、お客さまに楽しんでいただくだけでなく、しっかりと地域の活性化について考えられているんですね。
ヤハタココが目指すもの
福原さんが「ヤハタココ」に込める想いとは?
「“商い”は必ず人と人が接します。まちのカフェも店員さんとの会話や友達との会話もあるのですが、コーヒーを飲んでそこで終わるのが通常です。私たちは何か地域に貢献していかなければならない、魅力あるまちにして活性化を促していかなければならない、企業はもちろん子育て世代やご高齢の方々とも融合していけるコミュニティを目指すとなれば、“交流ありき”でこそ、このまちでやる意味があると思っています」
歩道に面した“縁側”に座って近所の方と語らったり、フリースペースを通して人と人、人と地域を繋げているヤハタココ。それでも「まだまだ発展途上」と福原さんはいいます。それでは今後の計画は?
「コーヒーやスイーツを提供している、建物の中にある躯体“コーヒーステーション”は、360度見て回れるようになっています。この棚の一部に、ヤハタココに関わってくれた様々な人たちが推薦してくれた本を並べて、みなさんに読んでいただくのが面白い!と考えています。例えば、地元の企業の役員さんや飲食店の店主の方、メーカーの商品開発をされている方がオススメする本なんかがあると、ジャンルも様々で、ついつい手にとって見てしまう、親近感もわきますよね。
その他にも、ドリンクの種類を定期的に変えたり、エスプレッソ用のコーヒー豆を変えたり、変化と進化を楽しんでもらえるよう、飽きさせない工夫はこれからもしていきたいですね」
建物とコンセプトがうまくいっているので、ヤハタココ自体が「まだまだこれできる!」というアイデアが浮かぶ箱になっている、と福原さん。もっともっといろんなアイデアを考えて、精査して実行していきたいそうで、これからもヤハタココ自体から目が離せません!
人と人、人と地域、人と企業を結ぶ
「ココで会おう」「ココが良い」「ココにいきたい」の“ココ”
“coffee“ ”company“ ”community“ の ”co“ でもあり、親しみやすく響きも良いことから名付けられました。
敢えて大々的な宣伝をしておらず、いまだにご近所の方でココが何なのかわかっていない人もいるという「ヤハタココ」。それでもオープンして2年が経ち、2年間ずっと通ってくれえる人が多く、お土産を持って来てくれる人やお子さんの成長を嬉しそうに話に来てくれる人など“ヤハタココらしい”景色が見られるようになってきたそう。八幡というまちに溶け込んだ、喫茶店のようなカフェ。
「時間がゆっくりと流れる、このゆったりとした空気感と雰囲気を味わってほしい」と福原さんはおっしゃいます。
「ヤハタココ」のテーマである“企業と地域、地域と人がつながる場”。人と人や人と地域を繋げるカフェはありますが、“企業”も繋げる、というのは珍しいように思います。この“企業”とは、フリースペースを利用してくれる人たちやコラボしてくれるお店などのこと。
「やりたいことはたくさんありますが、自社だけではできないことも多いので、地元の企業さんやお店と一緒にやることも必要になってくる、そうしていかないといけないと思います。自社繁栄だけでは地域は繁栄しませんからね」と福原さん。
地元が繁栄していく、それは地元のいろんな企業が活性化していくこと。人が動いていく、流れていくことで情報が行き交う、それが大事。「地元にたくさんある企業がひとつひとつ、何かできることを発信していけば、いずれ大きなものにつながる。そのために何か地域貢献できればな、というのが、長くここで育ってきた自分のテーマです」と語ってくれました。
「ヤハタココ」がひとと繋げる“企業”、本業である「福原材木店」もそのひとつ。
ハードな仕事の中で、ネクタイを緩めるような場所がほしいと思っていた福原さんは、社員にも開放し、ここで設計の打ち合わせをしたり、休憩に使ったり、会議をしたりしているそう。コーヒーを飲んでホッとひと息つく、それがまた頑張りを生み、良い循環になる。「それが“ココ”でよかったなと思います」と福原さん。社員さんがいると地域の人が遊びに来てそこでまた会話が生まれたり、社員の顔を知ってもらえたり、ココにくることで地域の人に会えるという利点もあり、地域の人といい関係が築けているようです。
コミュニティの理想の形をつくっているヤハタココ。福原さんの想いは八幡だけにとどまらないようです。
「これから他の地域でも展開していけば面白いかなと思います。いろんな“ココ”をつくっていくのは面白くて、そのためにはヤハタココをしっかり腰を据えて、運営していくことが大事だと思っています」
コクラココ、ハカタココ、なんてものが生まれるかも?
まずは「ヤハタココ」から、その居心地の良さを体験してみては?
詳細情報
北九州市八幡東区前田2丁目4−11
営業時間/7:30~18:00
定休日/日・月曜日
※臨時休業などの情報はInstagramをご確認ください
さいごに もちろんみんなでわいわいするのも楽しいですが、ひとりの楽しみ方は無限大!特に北九州市は人懐っこい人が多いので、店主さんもお客さんも気軽に話しかけてくれてすぐに打ち解けられる、ソロ活にはもってこいの地域です。これからもひとりで行ってもさびしくない、親しみやすいお店を紹介していきますので、お楽しみに!
協力:門司港ゲストハウスポルト
ゲストハウスPORTO(ポルト)門司港 | 福岡門司港のゲストハウスhttps://moji-porto.comPORTO(ポルト)はイタリア語で「港」ー 門司港は昔も今も「港」として日本中・世界中からたくさんの人や文化が交わり多様でありながら独自の文化をもっている。人生が船旅であるように、宿を訪れた人たちが船旅の中での疲れが癒され、次の場所に向かって進む元気が湧いてくるような陽気な宿でありたい。皆さんの船出を見届けていきます。
ゲストハウスPORTO(ポルト)門司港 1 User 2 Pockets
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