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“差別”ってなんですか?憲法学者 木村草太さんに聞く“差別”の仕組み

TBSラジオ

武田砂鉄のプレ金ナイト
2024年1月26日放送

今回のゲストは、憲法学者の木村草太さんでした。

木村さんはTBSラジオ『Session』に出ることが多く、『国会論戦珍プレー・好プレー!』という名物企画内の掛け合いで砂鉄さんの名前を絡めたことも。しかし、今回が初対面のお二人でした。

TBSラジオのトイレは憲法に通ずる?!

前述した通り、TBSへお越しになることも多い木村さん。2021年2月に発売された著書『憲法学者の思考法』では、「とあるラジオ局のトイレに、“居眠りはやめましょう”と書いてあって、これはなかなか驚いた」と書かれていました。そのラジオ局、実は…TBSラジオのことです。

砂鉄:「”居眠りはやめましょう”っていうところから憲法の話に移っていって。憲法っていうのは、“過去の失敗の反省の張り紙のようなものだ”っていうふうに書いてあって、なるほどと。そうすると、そこで座っている人が居眠りはやめようと。これは非常に憲法に通じるということを書かれていて、なるほどというふうに思ったんですよね。」

木村:「そうなんです。そういうことを書いたことがありますね。」

砂鉄:「でも憲法っていうのは、そういう性質があるということでよろしいですかね?」

木村:「そうですね。過去に拷問をした人がいるから、拷問をされない権利が書かれていて、過去に任期も考えずに居座った政治家がいるから、議員の任期がちゃんと書かれていてってことになるんですね。」

砂鉄:「お金をちょろまかした人がいたら、それについて厳しくやっていこうというふうになっていくっていうのが…」

木村:「政治資金規正法って昔は無かったわけですから、それはやっぱりダメだということで出来て。今、20万円以上であれば名前を書かないといけないけど、それ未満だと書かなくていいっていうのがあるので、こういう問題が起きているので、じゃあ書きますか、みたいな話になればいいんですけど、なかなかそこまでいかないっていうことですよね。」

「差別かどうかを自分だけで判断出来ると思っている時点でアウト」

木村草太さんは2023年12月に新刊『「差別」のしくみ』を発売しました。同性婚・夫婦別姓などのジェンダー、人権をめぐる差別など、その構造を徹底検証した一冊です。

砂鉄:「恐らく多くの人は、差別と言われたら“それは良くないものだ”って言うけれども、では“差別ってなんですか?”とか、“差別ってどういうふうに定義されるんですか?”ってなると、ちょっと口籠るというか、あんまり明文化出来なかったりするところもあるような気はするんですけれども。差別というのはそもそもどういうふうに定義をされるのか、定義することが可能なのかどうなのかっていう辺りも聞きたいんすけどね。」

木村:「そこが大変重要なポイントですね。例えば、自分の意思で変えられない性別・人種・性的指向とか、そういった要素で区別をすることが差別なんだみたいな、そんな行為の形で差別を定義しようとする人が多かったんですが、私はそれは差別というものが感情とか評価の問題であるために、行為の形で定義をしようとする試みは失敗するんじゃないかというふうに考えてきました。(中略)私が定義をするとすれば差別というのは、人種とか性別とか、人間の類型に向けられた否定的な評価、あるいは蔑視感情のことであるというふうに定義をすべきだと考えています。
(中略)
例えば、愛情という感情について考えて欲しいんですが、例えば1万円以上のプレゼントをくれれば、それが愛だと定義出来るかっていうと、これは出来ないでしょうね。1万円のプレゼントがすごく愛情が籠っていると受け取られることもあれば、気持ち悪いストーカーの行為として受け取られることもあるということなわけですね。なので、愛情に基づく行為が形で定義出来ないのと同じように、差別的行為というのも、こういう行為の形式があれば差別があるとは定義出来ないんだと、こういうふうに考えていけば差別というものをより明確に捉えられるんじゃないかな、というのが私の議論ですね。」

砂鉄:「差別っていうものをシンプルに考えたい人というのは、これをやったら差別ですとか、この言葉を出したら差別ですと。でもそれを逃れれば差別じゃないって言いたがるわけですよね。そうすると、かなり乱暴なことや危ういことが起きるってことですね。」

木村:「差別に基づく行為がきちんと捉えられないっていうことも起きますし、差別でないものを差別と認定してしまうってこともあるわけですね。例えば、女性が活躍するのはムカつくという感情に基づいて、大学入試などで女性を減点する、これ差別ですね。一方、単なる計算ミスで、たまたま計算ミスの対象が女性だった・外国人だった、これは計算ミスであって差別ではないわけですね。差別ではない・間違いというのは、間違いを指摘すればすぐに解消されるんですけれども、差別感情が背景にあると、明らかに不合理・間違いに見えるものであっても、何かと理由をつけて維持しようとしたりする。ということで差別の問題として深い問題になっていく、こういうものなわけですよね。」

砂鉄:「それこそ国会議員の中にもそういう人がいるのが残念ですが、差別的な言動を繰り返すような人が、それはおかしいではないかって言われても、自分は差別していませんって繰り返す場合ってのがありますよね。当然その言動というのを控えて欲しいと思うわけですけれども、その発言が刺さってしまう人もいるわけですよね。これに対してどうすればいいんでしょうね。」

木村:「まずですね、差別かどうかを自分だけで判断出来ると思っている時点でアウトということですね。何故あなたが差別かどうかを自分だけで判断出来ると思ったんですか?という問いを立てなきゃいけない。差別というのは自分の感情の一種ですから、多くの場合はそれは正しい感情・正しい評価だと思っているので、自分はこれは恥ずかしい感情だ・恥ずかしい評価だと思っている方がむしろ少ないわけですね。(中略)だから、差別かどうかということではなくて、あなたはどういう評価や感情に基づいて行動したんですか?と問う、ということが大事かなと思いますね。」

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