“安全安心なまち”を築くには 警察署長に聞く
県警は先月末、警察署長らの定期人事異動を発表した。同21日付で、藤沢署と藤沢北署にも新たな署長が就任。未だ被害が後を絶たない特殊詐欺や交通事故など市内の治安対策では課題が山積する中、”安全安心なまち”を築く道しるべは。トップ2人の仕事観や意気込みなどを聞いた。(聞き手は下井田実梨、舩橋岬)
広い視野で治安維持を
――これまで携わった部署を教えてください。
「さまざまな部署を経験しましたが、おおむね刑事部でした。前任では横浜市中区にある県警本部で組織犯罪分析をしていました。署長は2年前に栄区で務めて以来、2度目です」
――警察官を目指したきっかけは。
「進路を決めたのは高校生の時です。警察官は正義感がなければできない仕事であると認識していました。人の役に立つことが好きな自分の性格に合っているのではないかと思い、志望しました。今振り返ってみると適職だったと思います」
――苦労した点は。
「基本的に仕事が好きなので、苦労を感じたことはあまりありません。ただ、今では成人した息子たちが小さいころ、刑事担当で現場に出ていましたので、急な招集で出かける約束を守れなかったことはつらかったですかね」
――休日はどのように過ごしていますか。
「吹きガラスは、8年ほど続けている趣味です。コップやペーパーウェイト、皿、花瓶などを月に2〜3度作っています。制作中は手を動かし続けていなければ、溶けたガラスが下に垂れてしまいます。なかなか自分の思い通りにならないところに、しみじみと魅力を感じます」
――藤沢市の課題は。
「増加する特殊詐欺の被害防止や交通事故防止などは他のエリアとも共通した課題として挙げられます。地域ならではのものですと、特に夏季の湘南エリアは海岸の人出が多いので、訪れる全ての人が安全で楽しく過ごせるような治安維持は大事だと感じます。覚悟をもって解決していかなければなりません」
――県内の新署長で唯一の女性です。意気込みを教えてください。
「仕事をする上で女性だということは、例えば活発な人がいれば穏やかな人もいるというように、個人それぞれが持つ個性の一つに過ぎないと思っています。生活安全や刑事などいろいろな部署を経験してきたことを生かし、広い視野をもって取り組みたいです」
住みやすさの実感支える
――藤沢市との関わりや印象は。
「5年ほど前まで藤沢市役所の防災安全部に出向し、海に面したまちの藤沢で重要な課題である津波対策を行いました。2020年東京オリンピックのセーリング競技の会場だった江の島の警備にも携わりました。藤沢は魅力のある良いまちであるという印象を持っています」
――これまでの職歴を教えてください。
「警察官として今年で38年目を迎えます。前半の計10年間は機動隊員として勤めました。横浜で開催されたAPEC首脳会議や、日韓ワールドカップなどの大規模警備を経験しました。後半は厚生課で新型コロナウイルス禍の中、全県警署員のワクチン接種を担当しました。相模原署では副署長を務め、署長は藤沢署で初めて就任します。警察官として今年が最後の年でもあるので、集大成として頑張ります」
――警察人生38年間で特に印象深い出来事はありますか。
「阪神淡路大震災の際に、兵庫県芦屋市での支援活動では、避難のため空き家になった住宅のパトロール活動を行いました。また川崎市の宮前署で警備課長として勤めていた際に東日本大震災が発生し、帰宅困難や計画停電による混乱から、初動対応の必要性も学びました」
――非常時の迅速な初動対応には、平時からどのような備えが必要となりますか。
「災害が起こる可能性はこれからもあります。的確かつ迅速に動けるよう、関係機関との連携が常日頃から必要だと思います。また災害のみならず治安維持の側面でも、特殊詐欺などは金融機関や小売店に通報や警戒をしていただくよう協力を要請し、予防に力を入れていくことを心がけていきます」
――改めて新署長としての抱負をお聞かせください。
「藤沢は他の地域から見ても人気の高いまちです。その魅力である住みやすさを住民の方がより実感できるよう、治安維持の面から支えていきたいと思います」