玉置さんコレクション 貝類800種 博物館に寄贈 1950年代に久里浜で採取
横須賀市上町在住の玉置哲男さん(79)が先ごろ、所有していた海産貝類約800種のコレクションを横須賀市自然・人物博物館に寄贈した。貝の採取と標本づくりを趣味としていた玉置さんの亡き父である正雄さんから引き継いで大切に保管していたもの。久里浜海岸の南東エリアに横須賀火力発電所が建設される前の1955年から60年頃に同地の周辺で集めた貝が112種あり、寄贈を受けた同博物館では、「大規模開発による海洋生態系の変化を理解するための資料として役立てることができる」としている。
海洋生態系の変化わかる資料
寄贈された貝類は「腹足綱(ふくそくこう)」と呼ばれる巻貝の種類や2枚貝の「斧足綱(ふそくこう)」などの日本産が720種ある。大半が久里浜、野比近辺を中心に長井、荒崎、長浜、黒崎等の三浦海岸の海岸線を正雄さんが歩いて採取したもの。当時小学生の哲男さんも父に連れられ膝から腰あたりまで水に浸かり、箱メガネで海中をのぞきながら探した記憶があるという。「久里浜港に積まれていた蛸壺を一つひとつ覗き水深30m位の場所に生息している希少な『ヒメハラダカラ』を見つけたことが忘れられない」と振り返る。
正雄さんのコレクションを工学博士となった哲男さんが引き継いだが、現役時代は横須賀を離れていため活動をストップ。仕事から離れた7年前に博物館への寄贈を念頭に置きながら標本の整理を始めた。父が記した採取場所と年代などのラベルを基に複数の図鑑やインターネットの情報とも照らし合わせて確認。日本産、外国産の綱別リストを作成した。
高度経済成長期以前の久里浜海岸は、平作川河口から南側に伸びる砂浜が広がっていた。火力発電所の建設に伴う、千駄ヶ崎海岸の埋め立てや日魯漁業の工場建設、東京湾フェリーの就航などに伴う港湾整備で周辺環境は激変。海洋生態系への影響とは無縁でなかったことが推察される。「同海岸は潮流の関係で中央付近を境に内湾性と外湾性の異なる生物が生息していたと考えられるが、それを裏付ける貴重な資料になる」と同博物館外部研究員の萩原清司さん。哲男さんも「父との想い出の詰まったコレクションが散逸することなく管理され、多くの人の目に触れることを願う」と話している。