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140年の歴史と地域への想い|松本の地に根付く日邦バルブの未来戦略とは?

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1883年(明治16年)に創業し、140年以上にわたり日本の水道インフラを支えてきた株式会社日邦バルブ。高い耐久性を誇るバルブの開発を通じて、災害時の水道復旧や持続可能な社会の実現に貢献してきました。近年では、環境負荷を減らす素材の導入やスマート技術を活用した遠隔開閉バルブの開発にも力を入れています。

そんな日邦バルブの挑戦は技術革新だけにとどまらず、2013年からJリーグに所属する松本山雅FC(以下、松本山雅)のスポンサーとして地域を支え、クラブとともに地元の発展に貢献してきました。企業の社会的責任を果たしながら、社員の誇りやモチベーション向上にもつながるこの取り組みは、地域に根ざした企業だからこそ実現できるものです。日邦バルブの技術革新と地域貢献の取り組み、そして松本山雅との関係について、株式会社日邦バルブ 専務取締役 宮下真一郎氏(以下、宮下)に話を伺いました。

140年の歴史と知られざる貢献

ーーまず、日邦バルブはどのような企業なのか教えてください。

宮下)日邦バルブは水道用のバルブを製造している会社です。創業から140年以上の歴史を持ち、日本の水道インフラを支える役割を果たしてきました。水道バルブは“地中に埋設されている”ため一般の方の目にはほとんど触れませんが、全国の水道局や工事業者に採用されており、その品質と信頼性には定評があります。

また、日邦バルブの製造するバルブは厳しい環境にも耐えうる高い耐久性を持ち、とくに寒冷地での凍結防止機能や耐震性の向上など、日本の地理的条件に適応した製品開発を行ってきました。最近では環境負荷を減らすための新素材の導入や、スマート技術を活用した遠隔制御可能なバルブの開発にも力を入れています。

ーー140年以上の歴史がありながら、「企業の名前があまり知られていないことが課題」とおっしゃっていました。

宮下)私たちの仕事は社会のライフラインを支える重要な役割を果たしていて、日常の生活用水の安定供給を支える一役を担っています。また、震災後の生活用水の復旧や老朽化した水道設備の破損予見の検査など、安心して水が使える環境を守ることにもつながる仕事なのですが、たしかに一般の方には馴染みがありません。近年では松本山雅のスポンサーであることを通じて、少しずつ地元の皆さんに日邦バルブの存在を知っていただく機会が増えてきました。

スポーツ支援を通じて地域社会に貢献することは、企業としての責任を果たしていくと同時に、社員のモチベーション向上にもつながっています。今後も、業界内にとどまらず、より多くの人々に日邦バルブの使命や取り組みを知っていただけるよう努めていきます。

松本山雅との出会いとスポンサー契約の経緯

ーー日邦バルブさんが松本山雅のスポンサーになったのは2013年。どのようなきっかけがあったのでしょうか?

宮下)当時総務部長だった私に対し、「日邦バルブさんも松本山雅を応援しないの?」と知人から言われた声をかけられたのがきっかけです。ホームスタジアム『サンプロアルウィン』が日邦バルブから徒歩20分ほどの距離にあり、松本山雅はもともと地元のクラブとして活動をしていることは知っていましたし親しみを持っていました。

また、以前から地域貢献の一環としてスポーツチームのスポンサーには興味を持っていて、松本山雅の応援を通じて“地域の一体感”を生み出すことに関われることは、企業として大きな価値があると感じていました。そうした想いを社長に相談したところ、即決だったことはよく覚えています。

2013年は松本山雅がJ2に昇格したばかりの時期だったというのも、スポンサー契約を決める上で重要でした。クラブが成長し、さらに上を目指そうとするタイミングであったこと、そして、地域の皆さんが誇りを持ってクラブを応援している様子を見て「今こそ支援すべきタイミングだ」と確信しました。

ーーさまざまなタイミングが重なり、日邦バルブさんとしてとすごく前向きにスポンサーがスタートしたのですね。

宮下)応援し始めて、日邦バルブの企業理念と松本山雅の姿勢には共通点があるとも感じるようになっています。

私たちの事業の背景には、「地域社会に貢献し、安心・安全な水道インフラを守る」という強い思いがあり、松本山雅も「地域とともに成長し、地元の誇りとなるクラブであり続ける」ことを目指しています。このような価値観の一致は、スポンサーを続ける上で大事なことですよね。

また、日邦バルブの企業理念である「使ってくれるから造れます」の通り、日邦バルブの製品は全国各地の根強いファンに支えられています。「丈夫で長持ち」という評価をいただき、長年にわたり愚直に「お客様に安心して使ってもらえる良い製品」を製造し続けてきました。この松本の地から全国に向けてひたむきに突き進む姿勢が、同じく松本をバックグラウンドとして全国各地のライバルチームに粘り強く果敢に挑み続ける松本山雅の戦う姿勢に重ねているところです。

実際にスポンサーになったことで、社員の間でも松本山雅への関心が高まり、試合を観戦する社員も増えました。スタジアムやメディアでの露出も、単なる広告ではなく“地域と一体になった活動”として企業ブランドを高められることは大きなメリットだと感じています。

スポンサーとしての活動と影響

ーースポンサーを続ける中で、とくに印象に残っている出来事はありますか?

宮下)2015年のJ1昇格の際に、松本山雅とのコラボ商品を作ったことですね。Jリーグの許可を得て、特別仕様の水抜水栓柱(イマジナ)を製作しました。

正直、原価も高く、エンブレムのガイドラインを満たすための試行錯誤やこまかな調整が必要でしたが、限定200本の販売はお客様からは好評で、開発チームも大きな達成感を得たと聞いています。

また、今シーズンの初めに、松本山雅から「ガンズ君の募金箱を作ってくれませんか?」と打診があり、社内で検討・検証を重ね、3Dスキャナー・光造型機を駆使し、苦労の末、2体の募金箱を完成させることができました。うち1体は社内のプラモデル職人が丁寧に塗装した完成品として希望した納期期限内に寄付することができました。これも、お客様の困ったを解決する!日邦バルブの精神が象徴された出来事となりました。

ーースポンサードを続ける中で、企業としてのメリットを感じることはありますか?

宮下)スポンサー活動を通じて、社内の雰囲気も変わりました。松本山雅の試合がある日は、社員の間でも話題にのぼるようになり、クラブの成績によって社内の雰囲気が盛り上がることもあります。また、新卒採用活動でも「地域貢献をしている企業」として興味を持ってもらえることが増えました。

さらに、スタジアムでの企業広告やイベント協賛を通じて、地元企業とのネットワークも広がりました。他のスポンサー企業との交流が生まれ、新たなビジネスチャンスにもつながっています。スポーツチームの支援が、単なる宣伝以上の価値を生み出すことを実感しています。

未来への挑戦|新規事業と社会貢献

ーー現在、日邦バルブでは新たな取り組みにも力を入れていると伺いました。

宮下)現在とくに力を入れているのは『遠隔開閉バルブ』の開発です。現在、水道メーターは遠隔で管理できますが、バルブはまだ人が手作業で開閉しています。そこで私たちは電力会社の電力スマメ通信網を活用した、遠隔操作可能なバルブを開発中です。この技術が確立されれば、現場作業の負担を大幅に軽減し、効率化を図ることができます。

この遠隔開閉バルブは、IoT技術を活用し、スマートフォンやタブレットから操作が可能な仕組みになっており、 地震や水圧異常が発生した際にも遠隔操作を行い迅速に対処することで被害を最小限に抑えることができます。

ーー実際の導入状況はいかがですか?

宮下)いくつかの自治体や企業と協力して実証実験を行っています。昨年から静岡県の市町村で試験導入し、今年は長野県の市町村でもテストを行っています。初期の結果は良好で、遠隔操作による管理の利便性や、メンテナンスコストの削減が期待されています。

さらに、水道バルブだけでなく、農業用や産業用にも応用できる可能性があるため、今後は他の分野への展開も視野に入れています。

ーー作業が効率化して人手不足の問題に対応するだけでなく、災害時の対応の面でもメリットを発揮するという面では、社会的にも大きな意義がある活動ですね。海外での展開も視野に入れられているのでしょうか?

宮下)海外展開ももちろん視野に入れていて、とくに水道インフラが整っていない国々での展開を目指しています。発展途上国でも日邦バルブの遠隔開閉バルブを導入することで、水の無駄を減らし、効率的な供給を実現することで、清潔な水を確保するための助けになると考えています。また、海外の水道事業者と連携し、地域特性に応じた検討を進めていきたいと考えています。

ーー環境に応じた細かな技術開発に対応できることが日邦バルブさんの優れた点であることがよくわかります。

宮下)今後も国内市場でのシェア拡大、そして海外進出を進めたいですね。また、若手の登用を積極的に進めることで、これまでの水道バルブの概念にとらわれず、より柔軟な発想を持って新しい技術と融合させた製品を生み出すことが、これからの成長につながると確信しています。

松本山雅のユースアカデミーの合言葉「3C(Challenge!(挑戦しよう) Change!(変わろう) Chance!(今がその時)」のように、我々も時代の変化に柔軟に対応できる企業に進化したいと挑戦する気持ちを持ち続けていたいと考えています。

環境負荷の低減の製品開発にも取り組み、最終的には、「日邦バルブといえば、社会に貢献する企業」と認識されるような存在になれればと思います。そのためにも、松本山雅を一生懸命会社として応援し続けられればと思っています。

ーーありがとうございました!

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