魚介類を使った接着剤「魚膠(ぎょこう)」とは? 工芸品や美術品の制作で活用
合成糊が開発される前、我が国では「魚を煮たもの」が糊として利用されていました。一体どんなものなのでしょうか。
ミドリムシから作られる接着剤が開発
植物と動物の性質を併せ持つ不思議なプランクトン生物ミドリムシ。理科の授業で習うくらいしか思い出のないこの生き物を使った「接着剤」が開発され、ニュースとなりました。
産業技術総合研究所と化学メーカーの共同開発で生み出されたその接着剤は、ミドリムシの体内に含まれる「パラミロン」という多糖類を原料にして作られています。石油をもとに作られた合成接着剤と比較しても見劣りしない接着性能を示すそうです。
またこの接着剤は加熱すると容易に剥がれ、何度でも接着・剥離が可能という便利な性質を示します。これを利用し、自動車などの強度が必要な組み立て工業品の製造に利用することを目指しているそうです。
生き物で作る接着剤といえば「膠」
さて、このミドリムシ由来の接着剤のように、動物を原料として作られた接着剤は古くから存在します。その最も代表的なものが「膠(にかわ)」でしょう。
膠は「煮皮」に由来し、動物の皮や腱などを煮て取り出したゼラチン質が主成分となっています。加熱すると溶けて用意に塗布することができ、冷えると非常に強く接着します。
日本では魚に由来する「魚膠」もよく作られてきました。とくに皮やヒレ、鱗が原料として用いられてきたそうです。
現在も重要な存在!
この魚膠、実は現代でも盛んに使われる分野があります。それは工芸品・美術品の制作です。
魚膠は木材との相性がとても良く、工芸品作りで木材同士を接着させる際には欠かせない素材となるのだそうです。また、日本画において用いられる顔料は粉末であることが多く、そのままだと画材に塗ることができません。そのため魚膠を温めたものに混ぜ、塗布するのです。
魚膠は海外でも作られています。チョウザメなど大型の魚の浮袋で作られる魚膠の一種「アイシングラス」がそれで、工芸品や美術品の接着のほか、ビールやコンソメなどを製造するときの清澄剤としても用いられています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>