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福岡・西中洲の名建築がまた一つ・・・

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河庄ビル 外観

西中洲の老舗焼鳥店「藤よし」から入ってすぐ目の前にある河庄のビルが建て壊しになると発表されました。
「寿司 河庄」は1947(昭和22)年に開業し、1959(昭和34)年、建築家・吉村順三氏により設計・建築されたのですが、遂に解体され、来年、新しいビルになり、「河庄」もそこで再開するそうです。福岡で、しかもこの時代に、飲食店が著名な建築家に建築を依頼するというのはかなり稀であり、個人的にも非常に残念です。
福岡の鮨業界に多大なる貢献をしてきた「河庄」。「やま中」や「高玉」の創業者も元々「河庄」出身者の店ですが、その他でも店名に「庄」がつく店は「河庄」出身ということで、福岡におけるこの店の功績は誰の目にも明らかです。最近では「河庄」出身者というよりも、「やま中」や「高玉」から独立した店、つまり孫弟子の店が目につきますが、東京の名店で修業した人の店も増え、福岡の鮨業界の系譜も多岐にわたってきました。

私がまだ20代、30代の頃、西中洲という街は周辺とはまったく異質な街でした。ちなみにここで言う西中洲というのは大通り沿いではなく、内側とでもいいましょうか、春吉交差点から内側に入ったエリアのことを指します。
天神と中洲という西日本有数の街に挟まれているのに、存在感がないというか、メディアに出てくることもほとんどない街でした。県外の方からすると中洲と西中洲は隣接しているし、どちらも「中洲」とついているので、大きなくくりで「中洲」といっしょくたにされていたかもしれませんが、那珂川を挟んだその2つの街の性質はまるで違っていました。共通しているのは昼の顔がないということ。いや、むしろ中洲の方が随分前には映画館やパチンコ店などもあり、多少は昼の人通りもありました。しかし西中洲は今に至るまで飲食以外の業態がほとんどなくて、しかも昼営業をしている店もほとんどありませんから、昼は店の準備をしている人や食材などを納入する人たちしか人影をみませんでした。

30年くらい前、西中洲には高級な料亭や会員制のクラブが何軒もあり、福岡の政財界の人たちが夜な夜な会合や接待をする、東京でいえば神楽坂や赤坂のようなイメージでした。もちろんお店の数自体も今よりかなり少なく、飛び込みで入れるような店は、ほとんどなかったように思います(実際にはあったのかもしれませんが)。街自体ちょっと敷居の高い雰囲気で、大人が行く街どころか、限られた人しか行けない空気を醸し出していましたので、その頃私はほとんど足を踏み入れたことはありませんでした。

私が頻繁に通っていたのは20数年前。ちょうどフレンチの「Le Maison de la Nature Goh」が西中洲に開業した頃でしたが(現在は住吉で「Goh」「GohGan」として営業中)、当時、あそこにフレンチレストランを出すというのはかなりの自信、あるいは度胸がないとできなかった時代です。しかし「Goh」は開業直後から人気を博し、ちょうどその頃から徐々に街も変化してきました。それは、まだ30代になったばかりの若手だった福山剛シェフが、あの街で繁盛店を作ったということが、大きなきっかけにもなったはずです。

その後、西中洲も料亭がすべてなくなり、古い家屋もビルやホテルに建て替えられ街の様相は一変しました。古く小さなビルがなくなり大きなテナントビルやマンションやホテルができ、昨年は遂に西中洲最後の砦ともいえる昭和なイメージの渋い西中洲アパートが解体されました。今は駐車場の状態ですが、あそこにどんなものができるのかは個人的には大きな関心事です。

そしてもう一つ気になる土地は、「三原豆腐店」の北側の元ラブホテル「百萬石」だったところ。ここはもう随分長いこと駐車場のままですが、西中洲アパート跡同様、土地としてはけっこう広いので妙なものができないことを願うばかりです。
まずは「河庄」の新ビルが街と調和した素敵なビルになってくれるとうれしいなぁ。

弓削聞平
福岡のグルメ系エディター。グルメ雑誌「epi」「ソワニエ(現ソワニエ+)」「UMAGA」の創刊編集長。「ぐる〜り糸島」「私、この店、大好きなんです。」「福岡気軽で楽しい町の寿司屋」などを多数編集・発行。

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