Yahoo! JAPAN

スーパー戦隊とはどういう番組なのか、今一度とらえ直すーー『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』チーフプロデューサー・松浦大悟さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

スーパー戦隊50周年記念作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』が、2025年2月16日(日)午前9時30分より、テレビ朝日系列にて放送中です!

2025年で50周年を迎えるスーパー戦隊シリーズ。本作では、その名の通り最高最強のナンバーワンを目指し、動物や恐竜=「獣(けもの、ジュウ)」をモチーフにした5人のヒーローが大活躍!

巨神テガソードと、全て集めると願いが叶う指輪・センタイリングを巡って、悪の組織・ブライダンのナンバーワン怪人たちと様々な「ナンバーワン対決」が繰り広げられます。歴代スーパー戦隊の力を持ったライバルたちが登場するという驚きの展開にも注目です。

アニメイトタイムズでは、『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』放送開始を記念して、チーフプロデューサーを務める東映・松浦大悟さんにロングインタビューを実施! 番組企画の成り立ちや、今作の世界観、スタッフ陣についてのお話を伺いました。

【写真】『ゴジュウジャー』 松浦大悟が明かす「ナンバーワン戦隊」誕生の記録【インタビュー】

スーパー戦隊シリーズの「変身ベルト」にあたるアイテム

ーーそもそもスーパー戦隊シリーズの企画は、どのような話し合いを経て作り上げていくのでしょうか?

東映・松浦大悟さん(以下、松浦):バンダイさんとの販売するアイテムに関する話し合いから始まります。まずは、僕と白倉さん(白倉伸一郎)、塚田さん(塚田英明)、バンダイさん首脳陣の少人数で方向性の会議をしました。

昨年、『仮面ライダーガッチャード』をやっていて分かったのは、仮面ライダーはとにかく「変身ベルト」が一番大事なんです。カードがどれだけ売れたとしても最終的に大事なのは、「それがどれだけベルトにつながったか」。それはある種残酷でしたが、非常にわかりやすい指標でもありました。

恐らく買う側にとっても、「とにかく仮面ライダーはベルトなんだ」というのが明確に見えていると思います。そう考えた時に、スーパー戦隊の「変身ベルト」にあたるものは何なのか。ひいては「スーパー戦隊って何番組なのか」ということを改めて考え直そうという話になったんです。「なりきり」(変身)なのか、「ロボット」なのか。バンダイさんはどちらを押したいの? と。それで言うと、「スーパー戦隊」が途切れなく続けてきたのは「ロボ」だからやはり「ロボ」を大事にしたい、という答えが返ってきて。では、「ロボ」を「ライダーベルト」にしましょうと、こちらから提案させていただきました。

ーー変身アイテムであり、ロボでもある「テガソード」誕生の背景はそこにあったんですね。

松浦:はい。スーパー戦隊における「ライダーベルト」を作るというのが「テガソード」の成り立ちです。

ーー「手がソード」や「メガゾード(『Power Rangers』におけるロボの名前)」、武器とロボの要素を同時に取り入れたネーミングになっていますね。

松浦:おっしゃる通りで、「手がソード」、「メガゾード」にかかっています。こちら発信ではなく、バンダイさんサイドのネーミングでしたが、あまり悩まずに「これだ!」と決まりましたね。

ーー松浦さん自身はスーパー戦隊の「ロボ」にどういう想いを持っていますか?

松浦:バンダイさんから「ロボを押したい」という答えが返ってきたとき、「ようし、上等だ」と思ったんです(笑)。元々特撮に負けず劣らずロボットもの愛好者でもあるので「東映で「ロボ」を中心にやっていいんですか!? やってやるぜ!」といった感じでした(笑)

ーーちなみに、どんな作品がお好きなんですか?

松浦:幅広く見ますが、人格形成の中心にあるのは富野由悠季監督の作品ですね。「ガンダムシリーズ」はもちろん、『OVERMANキングゲイナー』『伝説巨神イデオン』などは特に好きで。

ーー劇中での「テガソード」も、“巨神”と呼ばれるほどの神秘的な存在として描かれています。

松浦:でも、その辺りは脚本家の井上亜樹子さんのアイデアなんです。亜樹子さんはロボットものからは遠い人生を送ってきたらしく、これはチャンスだと思いました。つまり「どうしたらロボに縁遠い視聴者に、ロボットものを観たいと思わせられるか?」という視点を、当事者である亜樹子さんとともに考えることが出来ると。「亜樹子さんは、どういう〝ロボもの〟なら見ますか?」という発想で話していきました。そこから「神々しいロボ、神のような存在」という案が出てきて。田﨑竜太監督とも話して、「スーパー戦隊にも「大獣神」(『恐竜戦隊ジュウレンジャー』)がいますし、いいですね」と。

クリスマスだから…🎄🎁
もうワン🐶サービス!

  ◥◣_________◢◤

  ✨巨大ロボビジュアル解禁✨

その名も……『 #テガソード 』

  ◢◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄◥◣#5つの姿にフォームチェンジ 🕺#ゴジュウジャー#Gozyuger pic.twitter.com/soUFhyjbBU— ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー【東映公式】 (@Gozyu_toei) December 24, 2024

松浦:素面でロボットに乗り込むのも、「戦隊初心者」の亜樹子さんの疑問から来ているんです。「なんでロボットに乗るのに変身しているんですか?」と素朴な疑問があり、ハッとしまして。「伝統だからです」「設定的には、変身して搭乗者の負荷をやわらげたり……」などと説明することは容易でしたが、それは問題の本質じゃないだろうなと。

そこから出発して、今年は変身せずにロボットに乗り込んでみようか、という話になりました。〝ロボットもの〟って、本当はコックピットのシーンが一番大事なはずなんです。コックピットの中で、キャラクターの感情が迸り、それがマシンの動きにつながる。もしかしたら「スーパー戦隊」シリーズは『コックピット』シーンへの眼差しが少し足りなかったのかもしれないな、と。コックピットはただ技名を叫ぶ場所でなく、人の思いが乗る場所なんです。だから『コックピット』にもっと心を注げば、もっと色んな人がロボに興味持ってくれるのでは、と思ってやり始めた試みです。

ーー 「テガソード」「センタイリング」の制作について、もう少し詳しく伺えますか。「手拍子を鳴らして変身!」というアイデアも非常に楽しいです。

松浦:そうですね。拍手アクションはバンダイさんからご提案いただいて、「クラップ ユア ハンズ!」という楽しげな変身になりました。

何より「手」というのがいいです。変身アイテムからロボットに変形する以上、ある程度は形状も制限されますが、その中で、なぜか「手」(笑)。でも「なんで手なの?」と思わせない迫力を感じます。そして、「手」という発想が「指輪」に繋がっていきます。

指輪って非常にオシャレなモチーフだと思うんです。良い意味で玩具っぽくないですし、コレクションアイテムとしても扱える。最初は歴代戦隊もゴジュウジャーと同じように「ヒーローの面まんまの指輪」「お顔指輪」のパターンも考えていたのですが、『仮面ライダーウィザード』のウィザードリングと被ってしまうなと。そこで歴代戦隊のリングは、「クイズリング」にしてみました。展開する前はレッドがいなくて、ヒントになる、その番組特有の具象が描かれていて、回したらレッドが出てくる。「だーれだ?」みたいな意味合いになっています。各戦隊のファンに印象的な場面を思い返していただけるような、思い出の入った指輪にしたかったんです。

ただ、そうなると一つ一つのデザインをしっかり考える必要が出てきて(苦笑)。50戦隊分を作るのは本当に大変だったんですけど、株式会社プレックスさんと頑張ってデザインしました。渾身のアイテムになりましたので、ぜひお手に取ってみてください。

タイトル候補には「超世紀全戦隊」「戦隊天下一決定戦」も!?

ーー『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』という戦隊名が決まるまでの経緯をお聞かせください。

松浦:実は最初、僕から白倉さんに、『Power Rangers ◯◯』みたいに、「今後の戦隊の冠は全部『スーパー戦隊◯◯』にするというのはどうでしょう?」と提案してみたんです。シリーズのブランディングの枠組みを分かりやすくするという意味で。ただ、話し合う中で、「それではワンオブゼム(大勢の中のひとつ)になってしまう」となりまして。

他社のシリーズになりますが、白倉さんには『機動戦士ガンダム 水星の魔女』というタイトルがすごく響いたらしくて。ガンダムシリーズを作る時に「『水星の魔女」はなかなか出てこない、ビビるよね。『水星の魔女』て!」って。そんなシリーズを並べた時に抜きん出る冠。『水星の魔女』のように、シリーズの幅を広げるネーミングにしようという方向性になりました。

『ゴジュウジャー』はかなり早い段階で決まっていたんです。同時期に「最強戦隊」という案も出ていたのですが、少し地味だなと。あとは「戦隊最強伝説」「戦隊天下一決定戦」とか、昔使われていた「超世紀全戦隊」みたいなネーミングまで引っ張り出し……色々な戦隊冠を考え、最後は「ええい!カタカナにしちゃえ!」と(笑)。あの『暴太郎(あばたろう)』ですら漢字なので、カタカナになれば、否が応でも目を引くと思ったんです。遠目で一覧を見ても「ひとつだけ長いぞ!?」みたいな。

ちなみに白倉さんが気に入っていたのは、僕が冗談で出した「ぼっち・ざ・せんたい」という案でした(笑)。はぐれものの戦隊なので、あながち間違ってはいないのですが、本当に歴史の闇に埋もれてくれてよかった……(笑)。

ーー(笑)。「ナンバーワン戦隊」もかなり斬新なアイデアだと思いますが、反対意見はなかったのでしょうか?

松浦:「はあ?」みたいな声は勿論ありましたが、やったもん勝ちだと思っています。この番組に関わる人たちはなんだかんだ楽しいことが好きなので、保守的だとしても最後は分かってくれる人の方が多いです。

ーー今年は久々にグリーンの戦士も登場していますよね。メンバーの配色やデザインについてはどのように決めていくのですか?

松浦:グリーン登場はバンダイさんからの提案でした。『王様戦隊キングオージャー』のように、毎回グリーンバックを使って撮影する番組ではないので、久々に出てきてもらうのもいいかなと。ただ、青と緑が同時にいると撮影が大変なんですよ。その分、グリーンファンの皆様には楽しんでいただきたいです、手間は倍かかっていますので……(笑)。

デザインについては、白倉さんとの対談でも話した通り、「単体で仮面ライダーに勝てる」デザインをプレックスさんにお願いしました。

やっぱりスーパー戦隊に必須なものって、形・シルエットではなく『色』分けだと思うんです。たとえば最近だと、『仮面ライダーセイバー』が「戦隊っぽい」と言われていた理由は、そこにあったりするのかなと。『機界戦隊ゼンカイジャー』の経験上、どんな形でも「色さえ分かれていれば戦隊になる」という確信がありました。デザイナーの皆様にはご苦労をおかけしましたが、素晴らしいデザインになったと思います。

ーースーツの黒い部分などに従来とは異なる素材が使われていて、スタイリッシュな印象です。

松浦:僕の中に仮面ライダーゼロワンのデザインを見た時の衝撃がずっと残っているんです。それこそゼロワンを赤・青・黄~の5色で作ったら、戦隊に見えそうじゃないですか? そういう意味でも戦隊の特異性を考えて、突き詰めたデザインになっています。

☝️#ゴジュウジャーロボ祭り☝️

最後となる第5弾は
テガソードの生みの親!#ゴジュウジャー のデザインを担当された
山下貴斗(PLEX) さんの#テガソードレッド が堂々登場!

勿論ウルフ🐺も山下さんデザイン!
まさにスーパー戦隊デザインナンバーワン!☝️☝️

そしてそして!⬇️#すごいぞテガソード pic.twitter.com/tGEvSKnWO7— ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー【東映公式】 (@Gozyu_toei) February 14, 2025

ーー悪の組織・ブライダンについては、いかがでしょうか?

松浦:指輪がアイテムになるのは先に決まっていた中で、「劇中で敵味方問わず、みんながその指輪を欲している設定にしたい」という話になりました。なので、ブライダンは基本的に「指輪」を求めて侵略を仕掛けてきます。「指輪」からの発想で「結婚」というモチーフを出してくれたのは亜樹子さんでしたね。「悪の組織」なのに「結婚」という祝福のモチーフをあてがう辺りが、亜樹子さんのハイセンスな部分だと思います。

「ナンバーワン怪人」に関しては、例えば、そこまで「指輪」を重視するなら、『ルパンレンジャーvsパトレンジャー』のギャングラーみたいに「怪人に指輪が埋め込まれている」という設定にもできると思うんですけど、それだとヒーロー側が『自分の報酬のため』に怪人を倒す人たちになってしまう。我欲で「動き過ぎる」人たちになっちゃうよね、という危惧があったんです。基本的には癖が強く、まとまらず、はぐれものでいい。だけど人々を脅かす怪人に対しては結束するし、一方で指輪=自分の目的のためにひた走る。つまり「ゴジュウジャー」の5人にとって、怪人と戦うことは本来の目的ではないんです。それでも、人を守らずにはいられない。そういうヒーローって、良いんじゃないかなと思ったんです。

あとは「ナンバーワン戦隊」からの連想で、毎回何かの「ナンバーワン」が決まるのは絶対に楽しいだろうなと。「『快傑ズバット』じゃん!」という突っ込みもありますが、どちらかというと『ビーロボ カブタック』です(笑)。

ーー 『ナンバーワン戦隊』が発表されてから、SNSでは『快傑ズバット』の話題も上がっていました。

松浦:個人的にも「あれくらいぶっ飛ばないとな」って。急に早川健(『快傑ズバット』の主人公)がギター弾きながら、ブルドーザーに乗って来るんですよ(第8話「哀しみのプロパン爆破」)。で、子どもたちが「早川さんだー!」って普通に進行する(笑)。ブルドーザーには誰もツッコまない(笑)。『ズバット』をやりたい訳ではないですけど、素晴らしい先達だとは思っています。

加えて、白倉さんや田﨑監督は「クライシス帝国」(『仮面ライダーBLACK RX』)の「オレは怪魔獣人大隊最強の戦士!」という決めセリフが好きみたいでして。そんな話し合いもあって、「俺はノーワンワールド〇〇ナンバーワン!(自称)」と毎回のたまう「ナンバーワン怪人」の設定は決まっていきました。亜樹子さんは終始ポカンとしていましたが(笑)。

🕺✨キャスト発表②✨🕺

ジュウ大続報〜!!!#ゴジュウジャー と敵対する組織、
その名も #ブライダン 🏰
幹部の2人がお披露目だワン!

🔥特攻隊長#ファイヤキャンドル / #三本木大輔

💐テクニカル隊長#ブーケ / #まるぴ

彼らの目的とは一体…!? pic.twitter.com/wgYqavV4Ko— ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー【東映公式】 (@Gozyu_toei) January 26, 2025

ーー脚本を井上亜樹子さんにオファーしたのは、どんな狙いがあったのでしょうか?

松浦:スーパー戦隊の歴史とか、特撮の既存知識とか、そういう重い荷物はこちらで引き受けるので、「とにかく良い〝キャラクター〟と良い〝台詞〟を書ける人がいいな」と。『ガッチャード』でご一緒して、非常に力のある方だと思ったので、お願いさせていただきました。そうしたら、亜樹子さんから珍しく「父には内緒で伝えたい」とおっしゃって。

ーー『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』などを書かれた井上敏樹さんですね。

松浦:亜樹子さんと僕と『ガッチャード』で一緒だった湊さん(湊陽祐プロデューサー)、敏樹大先生で「ガッチャードではありがとうございました回」というテイで食事会を開き、サプライズで「新戦隊のメインを亜樹子さんにお願いします」ということをお伝えしました。本来そんな義理はないんですけど、「娘さんを僕にください!」って(笑)。大先生もすごく喜んでくださったので、『ドンブラザーズ』と『ガッチャード』、3年続いた縁が収束した気がして、こちらとしても非常に嬉しかったです。 

ただ、亜樹子さんは放っておいても、そのうち何かのメイン脚本をやっていたと思いますよ。たまたま僕が先に目をつけたというだけで、やっぱり実力がある人は抜擢も早いんだと思います。

「今日からあなたは戦隊レッドです!」という世界観

ーーブライダンだけでなく、歴代レッドの力を持ったライバルたちが登場するという展開にも驚きました。

松浦:他社で恐縮ですけど、『ウルトラマン』の「ゴモラ」が、シリーズとしてはすごく羨ましいなって。昔のキャラクターなのに、今の子供たちでも知っているじゃないですか。自分が好きな怪獣として、当たり前のように「ゴモラ」を挙げる小さい子がいるんです。

東映で例えるなら、今の子どもが昭和戦隊を自分のヒーローだと思っているようなものですよね。サブスク時代ならそれもあり得るかもしれないですが、やっぱりアニバーサリーの現行作は一番の入り口になります。この番組を観ている子どもたちにとって、過去ヒーローを「ゴモラ」のように、ある種「現役ヅラ」させるためにはどうするべきかなと。そのうえで、ゴジュウジャーが一番の主役であることも考えなければいけない訳です。

ーー白倉さんとの対談でも話に上がっていた「過去戦隊の扱い」についてですね。

松浦:「レジェンドという言葉は使わない」という話をしました。では『ゴジュウジャー』における歴代レッドの立ち位置は先輩なのか、兄弟なのか、過去なのか、現在なのか。色々と考えて、「ライバル」という立ち位置にするのはどうだろうと。

『仮面ライダーギーツ』の「仮面ライダーケイロウ」や「仮面ライダーパンクジャック」が「ドンモモタロウ」や「クワガタオージャー」になるイメージでしょうか。特撮ファンの方々に「桃井タロウじゃないの!?」と言われるのは百も承知ですが、この番組を観ている現役の子どもたちは「ドンモモタロウ」や「クワガタオージャー」というヒーローを知ることができる。まずは「ライバル」としてキャラクターたちを見てもらって、それと同時にこの番組の世界観も楽しんでいただけると嬉しいです。

ーー堤なつめ役として、『爆上戦隊ブンブンジャー』でブンレッド/範道大也を演じた井内悠陽さんが出演されたことにも驚きました。堤が変身する歴代レッドはまさかの「クワガタオージャー」で……!

松浦:実を言うと、最初のシナリオで堤くんは変身はしていなかったんです。願いがない吠くんが「テガソード」に選ばれて復活する、ナンバーワンという目標を手に入れて頑張るという、遠野吠の軸だけでした。だけど打ち合わせで「普通だよね」ってなっちゃって。「あ、これは『仮面ライダーディケイド』の時にもあったというやつだ……!」と思い……。

ーー『ディケイド』の時に何があったんです?

松浦:『ディケイド』は、放送にあたる「第2話」の内容を、最初は第1話として作っていたようです。平成ライダーの世界に行く話のフォーマットであるクウガ編を最初に作って、「なんか普通だな」と思い、その後でゼロから急遽、第1話のライダー大戦を作ったと以前聞いたことがあったので、「これはヤバい」と(笑)。『ゴジュウジャー』の打ち合わせでも同じことになっていると感じたので、「何か考えなきゃ」と。

元々の堤くんというのは何でもないキャラクターで、遠野吠というとんでもない人に対する視聴者目線の人でした。『ガッチャード』の加治木や『ドンブラザーズ』の鬼頭はるか、みたいな立ち位置。突拍子もない出来事に対して、視聴者と同じリアクションを取れる人ですね。考えていくうちに、「この人が最初のライバルになるのは面白いんじゃないか?」と思ったんです。

そこからさらに押し進めて、昨年主人公である井内くんをキャスティングし、更にそれを「ブンレッド」以外に変身させる、という仕掛けを思いついたんです。個人的に『ディケイド』第1話の紅渡が「どうやら渡らしいのに別人」みたいなキャラになっていたのが気になっていたので、いっそのこと、しっかり別人にしてしまおうと。「ゴモラ」も番組が変われば外見は一緒だけど中身は別人(別個体)ですから。それなら番組のテーマにも近いことをやれる。「今日からあなたは仮面ライダーです!」ではなく、「今日からあなたは戦隊レッドです!」と言われるようなもので、つまり誰がレッドになってもいい世界観なんです。

📣🐺サプライズ解禁‼️‼️‼️

吠のバイト同僚 #堤なつめ 役👓

そして #クワガタオージャー に変身する
指輪戦士👑💍として#井内悠陽 さんがゴジュウジャーに参戦!

さすがのかっこよさだったワン🛞✨

果たして続きはどうなるのか!?
次週もお見逃しなく!!!#ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー pic.twitter.com/jsE6Yzp6gS— ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー【東映公式】 (@Gozyu_toei) February 16, 2025

ーー撮影時期的に、第1話と第2話は『爆上戦隊ブンブンジャー』と並行して進めていたのでしょうか?

松浦:今回ご一緒して、井内くんは「本当に素晴らしい役者さんだな」と改めて思いました。実は、とても大変な時期に撮影をお願いすることになってしまって……。ちょうどブンドリオさんがやられてしまう回の撮影時期と被っていたんですよ。堤くんを演じた次の日には、大也として「ブンドリオー!」って。気持ちの整理がつかないだろうと、井内くんにも、久慈麗人プロデューサーにも申し訳ない気持ちで……。

でも井内くん自身が、堤をすごく楽しんで演じてくれて。それがとても救いになりました。1年間ずっと範道大也を演じたからこそ、「違うタイプのキャラクターを思い切りできるのが楽しい」って。その姿が吠役の冬野心央くんにもいい影響を与えていたと思います。

ーー今後、歴代レッドに変身するライバルたちがどんな登場をするのかも楽しみにしています。

松浦:『ゴジュウジャー』を観れば、スーパー戦隊シリーズのキャラクターは総ざらいできるはずです。ただ、たとえば『ゴジュウジャー』の「ドンモモタロウ」は総理大臣になっていますから(笑)。「どうせシンケンジャーは侍でしょ?」と思ったら大間違い。まずは、シンプルに『ゴジュウジャー』に出てくる登場人物として、彼らの生き様や人生を楽しんでいただけたらなと。

ただ、やっぱりそれぞれのヒーローには、それぞれの魂がある。それを避けては意味がありません。表層的には別人なんですけど、なんというか、奥底にあるキャラクターたちの「匂い」みたいなものは入れ込みたいんです。クワガタオージャーの「クワガタオージャー性」を、ドンモモタロウの「ドンモモタロウ性」を自由に捉え直すことで、既存のファンの皆さんにも、新規のファンの皆さんにも、どちらも楽しめるものにできたらいいなと思っております。

そこで「シンケンレッド」の「匂い」が気になったのなら、『侍戦隊シンケンジャー』を観て志葉丈瑠さんに出会ってもらえればいい。幸い今はサブスクが充実しておりますから、すぐ『シンケンジャー』は観られるし、その後はまた『ゴジュウジャー』に戻ってきて……という形で、『ゴジュウジャー』が色々な方の「出会い」の入り口になれたらと思っています。

スーパー戦隊の現場は「ナンバーワンの現場」

ーーメインキャスト5人の印象はいかがでしたか?

松浦:ずっと見ていたくなるようなキャストが揃いました。僕はとにかくキャラクターに合致する方を探していたので、ビジュアル的には、イケメンに目がない原島果歩APの選球眼に頼りました(笑)。

🕺✨キャスト発表①✨🕺

ナンバーワン戦隊はこの5人!#ゴジュウジャー よろしくワン☝️

🐺#ゴジュウウルフ /遠野吠#冬野心央
🦁#ゴジュウレオン /百夜陸王#鈴木秀脩
🦖#ゴジュウティラノ /暴神竜儀#神田聖司
🦅#ゴジュウイーグル /猛原禽次郎#松本仁
🦄#ゴジュウユニコーン /一河角乃#今森茉耶 pic.twitter.com/crI1hxkWza— ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー【東映公式】 (@Gozyu_toei) January 26, 2025

ーースーツアクターにも、『ブンブンジャー』とは違った5人が抜擢されています。また、スタッフクレジットには役名も記載されていて。

松浦:クレジットに関しては僕の独断でやっていますが、求める声も沢山あったと思いますし、ことさら特別なことだという意識はないです。当たり前のことかなと。

5人のメンツが『ブンブンジャー』と違うのは、撮影期間の兼ね合いという面もありますね。僕から福沢アクション監督にお願いしたのは「レッドは浅井宏輔さんでお願いできませんか」ということだけです。あとは福沢さんにお任せでしたが、ほぼ理想通りの布陣だったので「大歓迎です!」と。ただ、「下園さん、2年連続ユニコーンでごめんなさい!」という気持ちは少しあります(笑)。

ーー(笑)。浅井さんの参加を希望されたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

松浦:準備期間に丁度、『ガッチャード』に登場する「冥黒王 ジェルマン」というキャラクターをお願いしていて、そのお芝居が素晴らしく、改めて浅井さんに惚れ直したんです。

ただ、「ゴジュウウルフ」のスーツアクトは、キャラクターの在り方をどうするかで悩まれているとか。というのも、浅井さんには「一度も膝をつかないぐらい〝強い〟ヒーローでいてほしい」というお願いをしているんです。ただ、吠のキャラクター性としては、そこまでオラオラ系のキャラでもないですし、アクションざまとして、オオカミっぽい這うような表現も求められるので。その辺りは浅井さんに無理を言ってしまった部分でした。

でも、最近の浅井さんを見ていると、だんだん響き合うものが腑に落ちてきている感覚もあって。「ゴジュウウルフ」のアクションがどんどん良くなっているので、楽しみにしていただきたいです。

🕺✨スーツアクター発表✨🕺

さらに!一挙に大公開〜!!!

🐺 #ゴジュウウルフ / #浅井宏輔
🦁 #ゴジュウレオン / #塚越靖誠
🦖 #ゴジュウティラノ / #榮男樹
🦅 #ゴジュウイーグル / #寺本翔悟
🦄 #ゴジュウユニコーン / #下園愛弓

最高最強アクターの方々が集結だワン☝️✨#ゴジュウジャー pic.twitter.com/YywLTuUCkX— ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー【東映公式】 (@Gozyu_toei) January 26, 2025

ーーリング上で向かい合った状態での名乗りのシーンもカッコよかったです。いきなり応援団も登場して驚きました。

松浦:スーパー戦隊にとっての名乗りは一番大事な部分だと思っていますし、だからこそ適当にはやりたくない。変身したら機械的に名乗るのではなく、目立つ名乗りにしたかったんです。

ナンバーワン対決というところから、格闘ゲーム風な演出も付けているんですけど、両者がぶつかり合う場面で頭のネジがもう一つ外れないかなと思っていて。頑張ってアイデアをひねった結果が応援団です。「何で応援団が出てくるの?」と聞かれたら、「何でかはわからないけど元気になりません?」と答えます(笑)。

ーーヒーローは応援されるものですし、否応なしにテンションが上がりますよね。

松浦:田﨑監督は世代的にも大学の応援団がドストライクの世代らしく、僕がうっかり口を滑らしたところ、めちゃくちゃノッてこられまして(笑)。作品とあの年代特有の応援団スピリッツみたいなところが繋がりました。僕としても、ヒーローが応援されるシーンというのは絶対にやりたかったんです。

ーーブライダン側の応援団も沢山いるのが面白かったです。

松浦:そこはヒーローだけでなく、敵もやりたかったんですよ。『ドンブラザーズ』の天女、『快傑ズバット』のブルドーザーのように、東映特撮は基本的に理屈を超えるものなので。でも、本当にみんながノリノリでやってくれていました。撮影現場はとっても大変なんですけど、それでも楽しくやれているのは本当にありがたいです。スーパー戦隊の現場というのは、それこそ「ナンバーワンの現場」だと胸を張って言えるので、心から恵まれているなと感じる毎日です。

理屈はあるけど、理屈じゃない。その“ぶっ飛び”を楽しんでほしい

ーー音楽周りも豪華なアーティストやクリエイター陣が集結しています。オープニングテーマ・Wienners「WINNER!ゴジュウジャー!」はバンドサウンドで元気が出る楽曲ですよね。

松浦:オープニングにダンスが入ることは決まっていたので、「とにかく馬鹿みたいに楽しく踊れるようなダンスナンバーがいい」という話になりました。そこからコロムビアさんのレーベルのアーティストを何十曲と勉強してWiennersさんの楽曲を知り、僕の方から提案させていただいたんです。中でも「蒼天ディライト」という楽曲がすごく良くて。バンドサウンドもこれまでの歴史にはなかったし、男女混声ボーカルは『秘密戦隊ゴレンジャー』のOPのようにも感じられるんじゃないかなと。

ダンスもかなりいい感じになっています。振り付けの彩木エリ先生が覚醒してしまいまして(笑)。途中経過を見せてください、と言うと「中途半端な状態では見せたくない。一撃ノックアウトしたいです」とおっしゃるんです。監修する側としては困るのですが、「そこまでおっしゃるなら、ぜひ詰めてください」って。結果、しっかり一撃でノックアウトされました。

ーー劇伴は『ドクターX』などで知られる沢田完先生が担当されています。

松浦:亜樹子さんの台本が上がってきた時に、田﨑監督が西部劇チックなニュアンスを感じ取ったらしくて。例えば、レギュラーセットの喫茶店は、西部劇でよく見るオープンドアになっていますし、吠の性格も含めて、「マカロニウエスタンな雰囲気を演出として通底させたい」という提案があったんです。

そういう音楽を作れそうな人を考えた時に、沢田完先生の名前が出ました。それこそ『ドクターX』的な口笛の感じもありつつ、バトル系の曲もすごく華やかで、お願いして大正解だったと思います。

ーー第2話のバトルシーンで流れる挿入歌は、影山ヒロノブさんが歌われていました。往年のスーパー戦隊ファンにも嬉しいポイントですね。

松浦:現場では「勝ち確ソング(勝利確定ソング)」と呼んでいます。『仮面ライダーガッチャード』でほぼ毎週挿入歌を流していたので、湊さんから勝手にバトンを受け取ろうかなと(笑)。僕らは挿入歌が流れる特撮を観ていた世代なんですよね。

作詩は売野雅勇先生という大ベテランの方にお願いしています。コロムビアさんからお名前が上がったときに、これまでに手掛けられた曲が好きなものだらけだったので、「ぜひお願いします!」と二つ返事でした。個人的に思い入れがあるのは、「水の星へ愛をこめて」(『機動戦士Ζガンダム』後期OP)や「風のノー・リプライ」(『重戦機エルガイム』後期OP)……スーパー戦隊では、これまでに「光戦隊マスクマン」の作詩を担当されているので、その繋がりから影山さんにお願いする運びにもなりました。

とても嬉しかったのは、最初に売野先生から「時間がかかるかもしれないです」と言われていたのですが、台本をお送りしてから数日で歌詞が上がってきて、「お話が面白かったので、すぐ書いちゃいました」と。その詩が涙が出るほど素晴らしくて! 作曲には渡部チェルさんを指名させていただき、何の心配もない布陣で最高の楽曲ができました。本編でも配信でも沢山聴いていただきたいです。

ーー最後に、今後の『ゴジュウジャー』の見どころを教えてください。

松浦:作品を観た人から、「分からないけど、何かすごい」と言っていただけるんですよ。こちらとしては全部に理屈をつけているつもりなんですけど……応援団以外は(笑)。でも、「TV番組って理屈で観るものじゃないよね」とも思っています。「ナンバーワン対決」というアホらしいものが続いていくので、まずは観て元気になっていただきたいです。

あとは企画の段階から、「ロボット好きじゃない人も観たくなるロボットものって何だろう?」とずっと考えていて。例えば、「あんなに大きいものが実際にあったら、戦うこと以外でも使うよね」という発想から、第2話ではスコップのように使ったりしています。様々な場面で「スーパー戦隊って、真剣にロボと向き合ってます」とアピールしているので、ロボット番組の仲間として認めてもらえたら嬉しいなと思っています。あわよくば皆さんに「テガソード」を手にしていただいて、他のロボットたちと「テガソード」を並べていただきたいなと。

キャラクターに関しては安心してください。亜樹子さんが作るキャラクターは間違いないです。間違いなくぶっ飛んでいるので、そのぶっ飛びを一緒に楽しみましょう!

[インタビュー/田畑勇樹 撮影・編集/小川いなり]

『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』作品情報

あらすじ

すべてのスーパー戦隊のロボが死力を尽くしたユニバース大戦。
その唯一の勝者、巨神テガソードは深い眠りについた。
テガソードの力をわけた指輪をすべてあつめると、
なんでも願いがかなうという…。

そんな指輪を、5人の“はぐれ者”が手にした!

はぐれアルバイター・遠野吠はゴジュウウルフ

元スーパーアイドル・百夜陸王はゴジュウレオン

テガソード信奉者・暴神竜儀はゴジュウティラノ

パリピ高校生・猛原禽次郎はゴジュウイーグル

ハイクラス名探偵・一河角乃はゴジュウユニコーン

ナンバーワンは1人しかありえない!?
戦士になった5人は、指輪をもとめて戦う!
さらには、悪の軍団・ブライダン、
そして歴代スーパー戦隊とも、 おきて破りの頂上バトル!

新時代のナンバーワンになるのは誰だ!?
“最高最強ヒーロー”
ナンバーワン戦隊ゴジュウジャーの
戦いのゴングが今、鳴りひびく!

キャスト

遠野吠/ゴジュウウルフ:冬野心央
百夜陸王/ゴジュウレオン:鈴木秀脩
暴神竜儀/ゴジュウティラノ:神田聖司
猛原禽次郎/ゴジュウイーグル:松本仁
一河角乃/ゴジュウユニコーン:今森茉耶
ファイヤキャンドル:三本木大輔
ブーケ:まるぴ
クオン:カルマ
飯島佐織:中越典子

【声の出演】
テガソード:梶裕貴
シャイニングナイフ:杉田智和
Mrs.スイートケーク:上田麗奈
(C)テレビ朝日・東映 AG・東映

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【ブールミッシュ×Shinzi Katoh】毎年人気の「シェリ」シリーズが今年もホワイトデー限定ギフトとして登場

    舌肥
  2. ズボラでもマネできる!扱いやすいショートヘア〜2025年初春〜

    4MEEE
  3. 【必見】毎年大人気「ディズニーデザインのランドセル」!細部まで神デザインですごい♪

    ウレぴあ総研
  4. 右手の可動域が広がる!最適な右手グリップが体感できる実験とは!?【グリップを直すだけでゴルフが変わる/松吉信】

    ラブすぽ
  5. もう一品ほしいときにおすすめ。【いなば公式】の「ツナ缶」の食べ方がウマいよ

    4MEEE
  6. 昭和・平成を彩る懐メロコンサート『Nostalgic Cabaret』が開催 加藤和樹、星風まどか、内海啓貴、霧矢大夢に加え、日替わりゲストが出演

    SPICE
  7. 〈奈良〉奈良で食の世界旅行へ!『グルメ万博』8選

    Narakko! 奈良っこ
  8. 22時以降営業も!「エキマルシェ大阪UMEST」に串カツ店や焼肉店が誕生

    PrettyOnline
  9. 直売所で購入した大根に爆笑!「鬼の手かなw」「特級呪物やん」の声

    おたくま経済新聞
  10. 香港ディズニーランド20周年パレードコスチュームを公開「ミラベル」フロートも登場

    あとなびマガジン