「サンペレグリノ・ヤングシェフアカデミー(SPYCA)」の国際料理コンクール~ヒトサラ編集長の編集後記 第79回
「アジアのベスト50レストラン」の表彰式が韓国・ソウルで行われました。それに先立ち、スポンサーであるサンペレグリノが主催する「サンペレグリノ・ヤングシェフアカデミー(SPYCA)」の国際料理コンクール・アジア地域優勝者たちによるランチ会がありました。場所はソウルのミシュラン店【ジョンシク(Jungsik)】。アジアの新しいトレンドを知りたいと思い出かけました。
「サンペレグリノ・ヤングシェフアカデミー(SPYCA)」は、料理界のキーパーソンたちが次世代を担う若いシェフたちを育成するアカデミーで、コンクールに参加するなかで様々な教育を受けることができ、自身のチャンスを広げることができるようになっています。
コンクールを勝ち抜いて、アジアの地域優勝者になればミラノで行われる決勝大会にのぞむことができ、2018年には藤尾康浩さんが日本人で初優勝しています。藤尾さんは、今回の「アジアのベスト50レストラン」で8位になった大阪の【La Cime(ラ・シーム)】のスーシェフを経て、現在は京都の【ミドル(middle)】のオーナーシェフです。
今年の会場になった【ジョンシク(Jungsik)】は、韓国のファインダイニングを牽引するイム・ジョンシクさんの店で、ニューヨークにもお店を展開しています。ビビンバやキンパといった親しみのある韓国のローカルフードを洗練させて、ミシュランの二つ星も獲得しています。
(ちなみに昨年の会場もファインダイニングの雄【Eatanic Garden(イータニック・ガーデン)】でした。)
店に長いテーブルが用意され、ジャーナリストやフーディたちが一堂に会して料理をいただき、新旧さまざまなシェフたちが今回のテーマについて思いを語ります。
アミューズが運ばれてきました。まずは新旧3人のシェフたちによるフィンガーフード。次も同じく3人のシェフたちがつくります。それぞれにアジアのスパイスが国のアイデンティティのように使われ、香りもしっかり主張があって面白い。
そしてコースの最初の皿はシンガポール【ラビリンス(Labyrinth)】のシェフ、ウィリアム・イーさんによる韓国にインスパイヤされたロジャックというもの。ロジャックとは東南アジアで食べられているサラダで、果物と野菜を中心にスパイシーなソースがかかっているものです。キムチのスープのようなやさしい発酵感を醸しています。
壇上にはこの店のシェフ、イム・ジョンシクさんとシンガポール【ロッラ(Lolla)】のシェフ、ジョアンヌ・シーさんが、アジアの視点からみたファインダイニングの進化を語ります。欧米の美食文化がアジアのローカルフードと出会い、料理の世界を1歩も2歩も前進させたことについて、2人の経験を踏まえて語られます。
コースの2皿目はキジ肉のダンプリング。【アンダーズ・ソウル(Andaz Seoul)】のシェフ、ジェホ・キムさんの料理です。ローカルテイストですが、キジの風味がちょっと洋風な感じ。
次に壇上に登場するのは、左からシンガポール【ジャーン(JAAN)】のシェフ、カーク・ウエスタウェイさん、台湾から【ムメ(Mume)】のシェフ、リッチー・リンさん、そしてシンガポール【ラビリンス(Labyrinth)】のシェフ、LG・ハンさん。
アジアで注目されているもはや大御所の3人が、最新のトレンドを語ります。ガストロノミーのハブ都市はどこかといった話から、お酒の消費が減った現状とその対策といったリアルな店の経営まで、話は広がります。
コース3皿目に登場したのが、香港【Belon】のシェフで今回のアジア地区優勝者、アーディー・ファーガソンさん(写真左から2人目)。カナダで工学を学んでから料理の世界に来たという人で、風味豊かな韓牛のステーキにココナッツミルクのリゾット。これがメインです。
最後のステージには若いシェフたちが5人上がり、それぞれの経験談が語られました。写真左から【ベロン(Belon)】アーディ・ファガソンさん、韓国【アンダーズ・ソウル(Andaz Seoul)】のヒョ・ジェさん、キム・ジョホさん、【ラビリンス(Labyrinth)】のウィリアム・イーさん、シュー・ユー“Zee”チャンさん。次世代のシェフたちはそれぞれに思いを語りました。
そしてイム・ジョンシクさんがつくる、ウルルン島のメイプルを使ったデザートで締めとなりました。
これだけのアジアのトップシェフや若手シェフが同時に集うことも珍しく、またそれぞれに考えられた料理がトータルに調和しているのがさすがです。「アジアのベスト50レストラン」の授賞式にのぞむ前に、すでにアジアのいまのトレンドを感じることができたような気がしました。