唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第17回 新聞のシルシの付け方について伝授
今回は俺が馬サブローの紙面でどのようにシルシを付けているかについてお伝えしようと思う。
多くの読者の皆さんが新聞のシルシを参考にして予想しているだろうし、これに関して俺の意図が伝われば幸いだ。
・危険な上位人気馬は無印にする
まず出馬表を見て「気になる馬」や「本命にしたい」という気持ちになる馬がいれば、俺は人気に関係なく本命◎を付ける。
だけど、レースによってはピンと来る馬がいないこともある。そういう時には、成績が安定している上位人気になりそうな馬から印を打つことになる。
ただ、その中でも俺が最も大事にしているのは、たとえ成績が良くて1番人気に推されそうであっても、「この条件はこの馬にとっては合わない」と感じる馬は消すということ。中途半端はシルシは打たない。
特に北海道滞在中は頭数が美浦ほどいるわけじゃないので、角馬場の様子を見ているだけで、初めて見た新馬でも馬のタイプがわかる。もし芝の中長距離向きだと思っているのに、短距離やダートでデビューすることになった時には、1番人気でもいらないなと思ってシルシを抜いたりする。
仮に1番人気が危険な人気馬だと思ったら、2番人気を本命にして1番人気は抜けにするし、2番人気も怪しければ他から本命を探す。
馬サブローで俺がポツンと◎を打っているレースは、だいたいが「1番人気を過信して買ったら危ないよ」というレース。そういう時は人気馬が飛んで、荒れると予想しているから穴馬から狙うのがおすすめ。
もちろんシルシを抜いた上位人気馬が来ることだってあるけど、それはたまたま来ただけと割り切るだけ。
・可能性がある馬すべてにシルシをつけたら赤字になる
シルシをどこまで付けるか考えた時に、馬券に絡む可能性で言ったら10頭いるかもしれないレースもある。けれど、その10頭すべてに印を付けて、BOXで馬券を買って当たったところでほとんど儲けにならないし、下手したらトリガミになって赤字になってしまう。
△は少しでも可能性があると考えれば、何頭でも付けることもできるけど、特に上位人気に本命を打った時は、儲けにならないようなところまでのシルシは打たないようにしている。
俺が重視しているのは、来るか来ないかじゃなくて、あくまで買うか買わないかだからね。
馬券を買う時だって、可能性がある馬すべてに流すのではなく、積極的に買いたいと思う馬だけを買えば点数は少なくて済むし、レースだって積極的に買いたいと思うレースに絞ることで無駄がなくなる。
ちなみに、仮に単勝1.2倍になるような圧倒的な1番人気の馬がいた場合、もちろん紙面上はその馬に本命を打つことが多い。だけど、実際にその馬の単勝を買うことはない。120円を取ったってしょうがないだろ?
じゃあどうするかというと、その120円の馬から相手を絞って馬単、3連単などを買う。相手が絞れないときは、そのレースは買わない。
・買いたい馬を◎ではなく▲にすることも
俺は自分が馬券を買いたいと思う馬に◎ではなく、▲を付けることもある。
平場のレースなら買いたい馬を本命にするけど、メインレースとかで見解を書かなきゃならない時に、例えば人気薄の馬を本命にして、その理由が「体調が良さそう」とか「前走で負けたのは状態が良くなかった」と書いたところで、それは主観的な感覚だから読む側の人には伝わりづらい。それで◎を打つのは読者に失礼なんじゃないかと思っている。
なので、結局上位人気でしっかり結果を出してくれそうな馬を本命にして「刻んだラップが良い」とか「前走の走りから距離が伸びてプラスアルファがある」とか客観的な内容で見解を書くことになる。
なので、重賞レースなんかは本命にした馬はもちろん勝つ可能性が高いと思ってシルシを付けているけど、俺の打った単穴にも注目してもらえたらと思う。
弥永 明郎(やなが・あきお)
唯一無二の馬券師。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。